第18話 新しい地区の探索


 数日後全てのハンターの端末にハンター支部経由で本部からの通達が回ってきた。それによると都市防衛本部の部隊が常駐している前線基地全てで指向性のレーダーの設置が終わり本部と連動して稼働を開始した。これにより今までの4地区の先まで探索できる様になり新たに5地区、6地区が追加されたということだ。


 リンドウらに限って言えば従来のD4地区までだったのがD6地区まで探索可能になったことになる。


 そしてその2日後にハンター支部からリンドウに呼び出しの通知が来た。


 指定された時間にハンター支部にある会議室に入るとそこには既にいつものエリンとルリ、そして大柄な男がいた、エリンとルリはリンドウを見ると手を振り、男はリンドウを見て


「リンドウ、久しぶりだな」


「そっちもな、ランディ」


 ランディと呼ばれた男は金髪で大柄な男だ身長は2メートル近くある。リンドウと同じく狙撃銃をメインに使うAランクハンターだ。彼が持っている狙撃銃はリンドウのより小ぶりのタイプで都市国家ではよく売れている銃だ、性能はもちろん悪くない。部屋に入ってきたリンドウの銃を見て、


「俺もそいつを持ってみたいぜ」


「稼いでるんだろう?」


「酒代に消えちまうんだよ」


 ランディは無類の酒好きだ。女よりも酒が好きで都市にいる時は大抵毎日4層の酒場で飲んでいる。日頃から酒代を稼ぐためにハンターをしてるんだと言っている気さくな男だ。もちろん腕はAランク相応に高く、そして何よりランディは射撃と同じくらいの腕前の車の運転のプロだ。酒代に消えてるというのは冗談で彼も優秀なAランクのハンターであり生きるための投資はケチらない。彼は今使っている狙撃銃が自分に合っていると思っているから使っている、それだけだ。


 しばらく雑談をしていると扉が開いてツバキが部屋に入ってきた。グレーの身体のラインを強調するタイトなスーツを着ている。服を着ていてもいい女だと思うリンドウ。


「ごめんなさい、待たせたわね」


 そう言って着席すると、4人の顔を見て、


「新しいミッションよ」


 そう短く言うとボタンを押す。壁のスクリーンに地図が現れた。地図にはD5とかD6と書いてあり赤い線が引かれている。


「新しく設置した前進基地からのレーダーをもとに作成した地図よ。見ての通りここがD5地区、ここから先がD6地区になるの」


 スクリーン上の地図をじっと見る4人。ツバキが説明を続ける。


「ミッションはこの新しいD5地区とD6地区の探索。もちろん機械獣に遭遇したら可能な限り排除して。そしてその時に機械獣が武器を持ってるかどうかも同時に確認して欲しいの」


「やっぱりあの話しは本当だったのか」


 ツバキは声を出したランディを向いて


「武器を装備している機械獣が現れたのは事実よ」


「それでミッションはD5とD6地区をぐるっと廻る探索だけ?」


 と今度はルリ。


「この新しい2つの地区に機械獣の製造工場があるとは正直思えない。稼働し始めたレーダーでもそれらしき建物や見つかっていないの。おそらくだけどもっと遠くに工場があってそれをトラックか何かで運んできているのか、あるいは地下道の様な通路を通ってきてるのかもしれない。4人には廃墟の中にあるかもしれない地下道の入り口らしきものがあるかどうかも調査してもらいたいのよ。廃墟とは限らない。荒野の真ん中にあるのかもしれない。そして仮にそのいり口を見つけたとしても今回は中に入る必要はない。場所だけ特定してくれればいいわ。最初はもう少し大人数での探索も本部は考えたらしいんだけど、あてにならないのを大勢連れていくよりは精鋭で行った方がいいという結論になったのよ。機動力もあがるしね」


 そうしてツバキが自分の端末のボタンを押すと4人の端末にミッションの内容が書かれた通知が送信されてきた。


「期間に幅があるわね」


 流し読みしたエリンが言う。


「1週間から2週間でしょ?未知のエリアだから確定しない方が良いと思って。なので最長2週間で帰ってきてちょうだい。そこまでの報酬はハンター本部から出すから」


「ちっ、弾代はハンター持ちかよ」


 ランディがぼやく。


「この装甲車ってのは武器は装備しているのか?」


 端末を見ていたリンドウが質問する。


「ごめんね、リンドウ。出せるのは装甲車だけ。屋根の上にマシンガン等の武器は装備していないわ。ただ装甲車にはレーダーが付いているし定員8名のを出すわ。夜は中で休めるわよ」


「車の中で寝られるだけマシか」


 ランディが仕方ないかと言った表情で呟く。リンドウも期待はしていなかったがそれでも武器が装備されていないのにちょっと不満があった。リンドウは最後の報酬の金額を見てから同意ボタンを押す。全員が同意したのを確認したツバキ。


「出発は2日後の10時。D門に装甲車を回しておくわ」


 そうしてツバキが先に部屋を出ると残った4人で打ち合わせをする。


「武器はどうする?」


 エリンが聞いてくる。


「俺はこの狙撃銃だけだ」


 ランディが持っている銃を掲げる。


「私たちもこの銃だけにするわ」


 エリンとルリは最近買った銃だ。


「俺は一応この狙撃銃とロングレンジライフルを持っていく。遠距離砲もあった方がいいだろう?」


「助かるわ」


「そうだな。ライフルがあると戦闘がぐっと楽になる」


 ルリとランディがリンドウを見て言い、そして頼むと言う。


「いずれにしても弾丸は多めに準備した方が良いわね」


 エリンが武器についての議論をそこで終えると今度は食用や水の持ち込み分の打ち合わせをする。大量に持ち込んでも装甲車の中のスペースが限られているからだ。同じ物を持ち込んでも意味がない。飲料水担当、食料担当などを決めていく。


 そうして最後に地図を見ながらD5,D6地区での巡回ルートを大雑把に決めて打ち合わせは終わった。

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