第2話

店内は広々としている。

猫カフェについて早々に走り出す彼女。

「危ないですので店内は走らないようにお願いたします。」

店員さんに注意され、渋々徒歩に変える。

紹介し忘れたが、彼女の名前は「倉橋成実」。

年は一つ下で今年から新社会人。

年下とはいえ一つだと差を感じづらいからほぼ同い年みたいなもんだ。

付き合った当初の敬語からタメ語に段々変わっていく感じが懐かしい。

さっきの流れで勘違いされたら困るが、僕は成実のことはちゃんと好きだ。

好きだからこそ悩むし分からなくなる。

成実の気持ちを。成実の瞳を、手を、感じたすべてを理解出来なくなる。

「ねえねえ、ラグドールっていうんだってこの子」

可愛いな〜と愛でながら顎のあたりを撫でる成実。

人間も猫と同じで、好きなところが分かれば簡単に気持ちをコントロールできるのに。

よく女心が分からない男はダメみたいな風潮を聞くけど、分かるわけないよなって思う。

「女心」ってワードで男女の隔たりを作ってる時点で歩み寄る気がないのだから。

「慧、コーヒー飲まない?」

気づいたら成実が2人分のコーヒーを持って立ってる。

「ブラックだったよね?」

「いや、甘党だよ。」

4年付き合っててもコーヒーの好みすら忘れることもある。

付き合うってなんなのか。恋人の定義とは?

最近はずっとこいつらが頭を支配してる。

きっと僕はそれを知りたくて成実の他に恋人を作った。

ブブ、、

またスマホが鳴る。

《愛菜:ごめん、今日はデートだったね、、》

もちろん愛菜も浮気相手ということを知ってる。

好きな人を1人に絞らなきゃいけない理由が分からないというのを理解してくれる数少ない人間。

そういった意味では成実より心を許してる。

許しすぎないように気をつけながら。

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