影を落とす

どぅーさん

第1話

僕には彼女がいる。

特別美人な訳では無いが一緒に過ごしている時間がとても心地いい。

僕は新しいことに挑戦するのが好きではなく安定を求めてる。

新しい誰かと出会って距離を縮めて、、という過程がとても苦手だ。

合コンやナンパなどもってのほか。

幸い、自分で言うのもなんだがそれなりにイケメンだから女の子には困らなかった。

なぜいきなりこんな自慢話をしてるのか。

これから始まるのは僕の影の部分の話になる。

その前に光の部分の話をさせてもらった。

「ごめんお待たせ!」

そう言って小走りで近づいてきた女性。

彼女だ。

「本当にさー、最悪だったよー。電車が急に止まったと思ったらそのまま10分くらいビクともしないんだもん。」

歩きながら続ける。

普段はそんな喋る子じゃないが今日は数ヶ月ぶりのデートとあってかなりテンションが上がってるように見える。

「じゃあ行こっか!今日は猫カフェだよね?楽しみだなー。」

そう言って繁華街に歩を進める。

何度このやり取りをしただろうか。

4年も付き合ってれば数え切れないだろう。

「慧はなにしてた?この数カ月。」

仕事ばかり、、

そう答えると彼女はふーんと不満そうに前を向き直した。

正直最近彼女がわからない。

というのも、連絡は返ってこないし会いたいとかも言ってこない。

元から連絡はマメではなかったが、1日1回は来てた。

それが今じゃ週1回。

不満そうな顔をしたいのは僕の方だ。

それでいて会えば普通に振る舞う。

理解に苦しむ。

最初は環境が変わったせいかと思ってたが、にしてもあからさますぎる。

申し訳ないとは思わないのか。

「浮気は?してない?」

にこっとしながら聞いてくる。

言っておくがこの子はメンヘラではない。

ふざけてるだけ。

「してないよ。」

このやり取りも何回したか。

今日はこの慣れたやり取りも胸が痛む。

ブブ、、、

スマホがなる。

通知を見てすぐに返す必要は無いと判断してポケットにしまう。

「返さなくていいの?」

「うん。今はいい。」

君のためにもね。

スマホには《愛菜:次いつ会える?》

僕の彼女は1人じゃない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る