進路より悩ましい部門選び

◆きのこたけのこ元気の子えりんぎまいたけぶなしめじ


 ホラーなのかなあ。


 何がかと言えば、「放課後のタルトタタン(仮)」の話です。


 少なくとも、ファンタジーや恋愛系のジャンルではないので「キャラクター文芸」と「ホラー」の二択になります。


 キャラクター文芸か、ホラーか。生きるべきか、死ぬべきか。綾波か、アスカか。きのこか、たけのこか。川平慈英か、ジョン・カビラか。


 今夜のご注文はどっち、というくらいに究極の選択です。


「ホラー」と言い切れないなら、消去法で「キャラクター文芸」になりそうな気もするんですけどね。


 ただ今回、ホラー部門以外に「編集部が求めるもの」みたいなのがないんですよね(去年も新設のどんでん返し部門以外はなかったかと思いますが)。


 単に「キャラクター文芸」というだけなら、なんかもう何でもあり感がすごいじゃないですか。子育て中の母猫くらいなんでも受け入れてくれそうです。


 言い換えると、他のどれでもないものが「キャラクター文芸」という感じがするのですよね。カクヨムのジャンル区分で言う「現代ドラマ」とか、ミステリーのサブジャンルで言う「サスペンス」とか、職業適性診断で言う「芸術家タイプ」とか、そんな感じです。


 他のどれでもない――つまるところのエラリー・クイーンが愛した消去法です。


 わたしもミステリ読みの端くれとして、この灰色の脳細胞を持って華麗な消去法的結論を導き出したいところですが、友よモナミ、あたしって、ほんとバカ、もう俺には何が正しいことなのかわからん、といった具合です(ライナー! やるんだな!? 今! ここで!  なんとでもなるはずだ! ガンダムだと!? 俺が! 俺たちが! ガンダムだ! 止まるんじゃねえぞ……! 俺は進み続ける……敵を駆逐するまで。エレン……俺はもう終わりにしたい。ティロ・フィナーレ!)。


 なんかもう、意識の流れとか作品ごった煮の音MADみたいになってますが――モルダー、あなた疲れてるのよ――話を戻します。


 つまるところ、他のどの部門にも引っかからない作品がキャラクター文芸になるというか。もうそこを目指すしかないという感じです。


 なら、放タルはどうか。



◆ファンダメンタルホラー宣言


 ホラー部門の概要を見ると、


「現実世界をベースにした恐怖体験、極限状況、不条理、怪談、怪異、心霊現象など、読者に恐怖感を与える小説を募集します。」


 とのことで、まあ放タルも当てはまらなくもないです。怖がらせるのが主眼じゃないのが悩みどこですけど。たとえば、角川ホラー文庫から出せるかって言うと絶対そういう話ではない。


 ただ、ホラー部門って意外と参加編集部多いんですよね。というか、キャラクター文芸が少ないんですけど。


 たとえば、メディアワークス文庫なんかも参加するみたいで、まあそれならイメージできなくもないかなと。


 そして、ホラー部門のみに設けられた例の「期待しているテーマ・構成要素」。これが、意外と放タルにマッチしてるんですよね。


 これは前々から薄々、感じていたんですが、放タルに限らず、わたしはホラーを目指した方がいい気がするのですよね。自分がやりたいことを一番わかりやすい形で見せようと思ったらホラーをやるのがいいんじゃないかと。


 というのも、わかりづらくて不条理な話が書きたいので。そういう、もぞっとするような話はホラーとしてパッケージングした方がいいのかなと。


 つまり、朦朧法です。現象の全容や怪異の正体をスッキリと明かさないことで恐怖を与えるという手法と相性がいいのではないかと。


 特に放タルはそうなんですが、いわゆる「行間」というものをどこまで豊かにできるかということを常々考えているんですよね。


 それは何も心理描写だけの話ではなく――言葉による表現で言葉では説明できない何かについて語るというのが小説の本分だと思いますし、その言葉にできない何かの存在/非存在を巡る話が「放課後のタルトタタン(仮)」という話だったりします。


 元々ミステリーのつもりで考えてたので、言葉による説明も多いんですけど、それは言葉にできない何かを浮かび上がらせるためなのですよね。


 言ってしまえば否定神学のようなもので、言葉にできない超存在に対して「~ではない」と否定文を重ねることで近づこうとするアプローチなわけです。


 そして、ホラーとはそうした超存在のもたらす恐怖を描くジャンルだと思うのですよね。理屈があるように見えて、ない。対処不可能な恐怖。それがいわゆるファンダメンタルホラーというやつなのではと。


 つまり放タルはもうちょっと演出をホラーっぽくすればホラーになる気がするのですよ。


 ここで執筆を先延ばしにしてきたのが活きてきます。つまりまだ可塑性があるわけです。いまからでもホラーに寄せようと思えば、できなくもない(スプラッタは無理にしても)。


 これぞ計画通り……! 勝ったな、ガハハ。第三部完!



◆キャラクター文芸とは


 と、何となくホラーに出したい気分なんですが、実際のところはホラー寄せを意識しつつ、あくまで判断は保留という形になると思います。キャラクター文芸もまだ全然可能性があるということです。


 そんなわけでセカンドプラン、キャラクター文芸についてです。


 概要を見ると、


「職場や学園、歴史などを舞台に、人間関係やそこで起きた事件などを描いた小説を募集します。」


 とのことで、なんかもう本当にざっくりというか、「その他部門」感が強いですね。カテゴリーエラー作への救済措置と言い換えてもいいですが。


 けっきょく、この部門って他の部門次第というか、その年、他にどんな部門があるかで変わってくるんですよね。たとえば、どんでん返し部門難民はここが主な受け皿になってくるでしょうし。


 かように融通無碍なんですが、その分、読めないのが読者層で「キャラクター文芸のファンです」って読者はあんまいない気がするので、注目を得づらいというか、スコップされづらいというか、普通にタグとかタイトルの勝負になる気がします。


 個人的に、キャラクター文芸というとやっぱり広い意味でのトラブルシューティングもの、あるいはやっぱり広い意味でのスポ根が王道なのかなあという気はします。


 というか、そういうのを求められてるんだとしたら困るなあという懸念がそう感じさせるのです。


 実際には『熊本くんの本棚』をはじめ文芸っぽい作品でもチャンスがあるわけですが――まあ、でもやっぱりインパクトあるキャラ設定が大事なんですかね。キャラクター文芸ですし。


 そうなるとやっぱり厳しい気がするんですが。


 やっぱり消去法的に考えるならこの部門が無難なんですが、決して積極的に選びたい部門ではないんですよね。



◆まとめ


 という感じで迷ってるところです。


 競争率で言えばキャラクター文芸の方が厳しそうなので、ホラー狙いがいいのかなあとか。


 でも作品ジャンルはたぶんミステリーなので、そうなるとやっぱりキャラ文が無難な気がします。


 だからまとめると、ホラー=挑戦、キャラクター文芸=無難という感じです。

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