【読書記録】2021/7/5

◆はじめに


 驚くなかれ、小説を読んでいます。商業出版です。およそ4か月ぶりの快挙になりますね。


 2月にけっこう読んでたんですが、その後にイベントとKACがあって執筆モードに移行、そこから充電期間という名目のだらだらが続いて、久しぶりの積読消化です。


 そんなわけで今回は最近読んだ小説の感想をまとめておきます。



◆今村夏子『星の子』


 両親がカルト宗教にハマってしまった少女の成長記録。カルトだったり、スクールカースト的な描写が、読んでいてなんともいたたまれない気持ちにさせてくれます。ただ、文章自体は簡潔でユーモラスなので、読みやすかったです。



◆村田沙耶香『 しろいろの街の、その骨の体温の』


『コンビニ人間』の作者さんですね。これも思春期の少女を主人公とした作品なんですが、『星の子』よりはもうちょっと生々しい感じですね。性的な部分にも踏み込んでますし。その分、明暗のコントラストが鮮烈というか。この人の作品は、主人公のヤバさと共感できる部分がちょうどいい塩梅でして(『コンビニ人間』然り)、読んでいて心がざわざわします。



◆村上春樹『国境の南、太陽の西』


 春樹長編ってそこまで読んでるわけではないのですが、通底するのは何かしらの喪失感かなあと。一見、満ち足りて見える主人公が抱える不全感みたいなものが、道ならぬ恋によって表現されているような、そんな話でした。バブル崩壊前のイケイケだった時代設定もあって、いっそうそう感じましたね。



◆桐野夏生『リアルワールド』


 女子高生4人組と、殺人を犯して逃走する少年が奏でるアンサンブル。桐野作品って全体の構成としてみるとちょっと歪で、ノリで書いてるなって部分があるんですけど、こういう一種の逃避行はそういう書き方が合ってるのかなと。


 語り手が5人の間で回っていくのですが、やはり誰もが何かしら秘密を抱えていて、それを互いに知ってたり知らなかったりするという微妙な関係性の描写がおもしろかったです。



◆岬鷺宮『日和ちゃんのお願いは絶対』


 カクヨムで1巻分が無料公開されていたので、読んでみました。この作者さんは現代が舞台の青春、恋愛ものを得意としているのですが、この作品はなんと「セカイ系」です。


 2020年代にもなって「セカイ系」ですか、と言われそうですが、これがどうしてなかなか当世風に洗練されているように思いました。


 なんというかね、根幹にある設定はすごくシンプルなんですよ。そして、その設定だけなら序盤のようにずっとラブコメをやってても違和感がないんです。しかし、それが同時にこの作品を「セカイ系」たらしめてもいる、という。


 また、「セカイ系」の特徴として『「君と僕」と「セカイ」の中間に位置すべき「社会」が抜け落ちている』というのがあるのですが、この作品はけっこうそこに風刺性があるというか、早い話リアルなんですよね。そうしたニュースに対する主人公の距離感も含めて。


 ただ、これ1巻だけだとかなり短くて、「え、ここで」という終わり方をするんですよね。であればこその無料公開だったのかもしれませんが。まあ、2巻も読むと思います。



◆涼暮 皐『今はまだ「幼馴染の妹」ですけど。 せんぱい、ひとつお願いがあります』


 これも話がけっこう転調するんですよね。個人的に「こうすればいいんだろうな」ってことをやられてしまったなあ、という作品でもありました。


 ざっくり言うと、シチュエーションラブコメの文法を踏まえつつ、小説1冊分のストーリーとして完成された構成になっているのですよね。つまるところ、プロットがちゃんとしてる。


 どんでん返しがラブコメとしてもキャラ性を深めている……というか、ジャンルミックス的な多層性が、そのままキャラの多層性になってて、これがね、個人的に「こうすればいいんだろうな」って思ってたところでした。


 同じレーベルの『変態王子と笑わない猫。』を思わせるところがあって、あっちはもう10年くらい前の作品なんですけど、個人的には好きだったシリーズで、「願いを叶える存在」だったり、「嘘と建前」というテーマ性、伏線の周到さなど共通する部分が多かったな、と。主人公とヒロインのキャラクター性はむしろ真逆ですけど。


 これも続きを読もうと思います。



◆余談


 ようやっと心身の調子が上向きになってきた気がします。今週中に書きはじめる、と宣言したおかげでしょうか。


 とはいえ、今日は帰ってからずっと絵を描いていて、あんまり作業できなかったんですけど。


 秋茄子ちゃんというオリキャラがいるんですが、その子のアクリルキーホルダーが作りたいなあと思っていて、執筆の息抜きにそういう作業もしていくことになるかもしれません。


 どうでもいい話でした。

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