Web作家としての歩み 前編

◆はじめに


 前回、原点回帰を目指すという旨のことを書きました。


 ただ、ちょっと内容が抽象的だったかなと思ったので、今回は具体的に自分の原点は何なのかとか、どういう風に試行錯誤していたのかという話をしたいと思います。



◆これまでの戸松秋茄子


 まず、そもそもわたしがどういうタイプの書き手なのかという話です。


 ただ、これは過去エッセイとか創作論で散々語ってきたことでもあるので、ここでは簡単にまとめます。「またか」って人は次の◆まで読み飛ばしてください。


 まず、はじめに。前回も書きましたが、わたしは元々ミステリ小説の愛好家でした。


 読み専の時代が長かったのですが、ずっと小説を書きたいとは思っていて、それを実行に移したのが2013年になります。もう8年やってることになりますね。


 ルーツがミステリなので、最初期はその延長線上にある作風でした。


 これはいまもそうですが、叙述トリックだったり、構成そのものにトリックを仕掛けるのが特技でした。


 そこから徐々に作風が広がっていくのですが、拡散しすぎてここでは説明しきれないので、詳しくは「戸松秋茄子全作品完全ガイド(仮)」とか、コレクションの「クロニクル」シリーズをご覧ください。


「戸松秋茄子全作品完全ガイド(仮)」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891346090


「クロニクル 2013~2016年」

https://kakuyomu.jp/users/Tomatsu_A_Tick/collections/16816452219399243063


 2016年までという区切りになってますが、これは作風的にこのあたりが転換点になったからだったりします。


 自分の中では「1期」とか「初期」と呼んでいる時期です。この頃はかなり自由に書いていて、ジャンルとしてもミステリだったりそうじゃなかったりします。というか、ミステリじゃない作品の方が多いです。


 そして、「1期」があるということは「2期」があるのですが、それが自分の中では2019年までとなっています。


「クロニクル 2017~2019年」

https://kakuyomu.jp/users/Tomatsu_A_Tick/collections/16816452219399321241


 2017年以降ということで、これはちょうどカクヨム登録以後になってきます(それ以前は、ブログとかnoteで発表していました)。


 発表場所が変わった、というか、小説投稿サイトを使うようになったことの影響は少なからずあって、この頃からWeb小説を読むようになってますし、他の書き手の方と徐々に交流するようにもなりました。


 なので、ここから徐々に影響が出てくるわけですが、この時点ではまだ緩やかなもので、どちらかというとまだ1期の作風だとか、それ以前に読んできたものの影響の方が強いですね。


 この頃は1期とくらべると作風が安定しているので、簡単に説明しておこうと思います。


 まず、ミステリはほぼまったくというレベルで書いてなくて、現代ドラマの占める割合が多くなっています。


 また、短い作品が多いのもこの時期の傾向ですね。


 この頃になると自分なりの主題意識というものも出てきていて、広い意味での「アイデンティティ」を巡る話が多くなってきます。


 また、その表現方法として心理描写を極力省略してなるべく即物的な事実によって主題を表現するという意識を持っていました。


 もっとわかりやすいところで言うと、故郷からの旅立ちだとか幼馴染という設定が頻出するようになってきますね。


 で、この2期の終盤、最初のKACあたりからWeb小説の影響が出はじめます。



◆Web小説を書く


 何が一番変わったかなんですが、読者というものを多少は意識するようになったんですよね。


 これも何度か言ってるんですが、1期は小説投稿サイトを使ってなかったので読まれなくて当たり前、感想なくて当たり前の状態で、ほぼほぼ100%自分のために書いてたんですよ。


 なので、その名残でカクヨムを使いはじめてからも読者のことはほとんど意識してなくて、それが変わってきたのがKACのあたりかなと。


 当時はスランプっぽい状態だったので、自分が書きたいものを見失ってたというのもあります。


 なので、読者のためのものを書いてみようと。


 これ以降は、自分が書きたいものと求められてるものに折り合いを付けながら書いていくことになります。


 この2年くらいは、そこの試行錯誤ですね。


 これまでやってこなかったことなので、ゼロから手探りで。


 どういう作品が人気なのかとか、ニッチの需要はどの程度あるのかとか、作品外の部分でもどういう風に読まれる導線を作ってくか、ということを分析してきました。


 つまるところ、マーケティング的な視点を持つようになったわけですね。


 具体的にやってたこととしては、そういうテーマのエッセイ・創作論を探して読んでみたり、各ジャンルのランキング上位作を読んでみたり、という感じですね。

 もちろん、その間、自分でもいろいろと書いてみて、その反応も見ながら「ああでもないこうでもない」と考えてました。


 数字を稼ぐことを第一義とするなら人気ジャンルで観測気球を飛ばしまくるのが近道なのでしょう。


 ただ、わたしは最初から隙間産業狙いで、あくまで自分が書きたい話でより多くの読者を得ようと考えていました。



◆読者を探して


 けっきょく重要なのは「カクヨムのユーザーってどういう人たちなんだろう」ということだと思います。

 どういう読み手がいて、どういうものを読むのかと。


 それがわからないと、手の打ちようがないですよね。暗闇でやみくもに剣を振り回すようなものです。


 ただ、読み専の人ってあんまり自分から発信してくれないじゃないですか。


 こういうの読んだよ、っていうのを報告してくれるのはほとんど書き手の人なんですよね。カクヨムが書き手フレンドリーな仕様なせいもあるかもしれませんが。


 なので、ある時期からは他の書き手を読者として想定して考えるようになったんですよね。


 この頃になってくると、書き手の知り合いも増えてましたし、どういう人なのかっていうのもわかってきてたので。


 その人たちを観察して、参考にしようという方針にしはじめたわけです。


(中編に続く)

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