わたしの『ドグラ・マグラ』
◆…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。
夢野久作の『ドグラ・マグラ』をご存じでしょうか。
「いや、ご存じないわけがない」と反語で続けたくなるくらいには有名な作品ですね。
最近は『文豪ストレイドッグス』や『文豪とアルケミスト』なんかで夢Q本人がキャラクター化されてたりしますしね。読書家でなくともタイトルくらいは聞いたことがあるのではないかなと。
『ドグラ・マグラ』がいわゆる「三大奇書」のひとつに数えられていることや、「読めば一度は精神に異常をきたす」と言われていること、角川文庫版の表紙がそこらのエロラノベよりもエロいことなんかも、けっこう有名なんじゃないでしょうか。
◆これを書くために生きてきた
別に今回は「ドグマグ」レビューとかじゃないので、具体的なあらすじに触れたりはしないんですが、本題に入る前にもうひとつ語っておくべき情報があります。
何かっていうとですね――『ドグラ・マグラ』って構想から完成までにすごく時間がかかってるんですよ。
そもそも、夢野久作って短編を得意とする作家なんですよね。短編の発表数に対して、長編はかなり少ない。それもあってか、『ドグラ・マグラ』も10年くらいかけてようやく完成させていたはずです。
そんな長い話でもないんですけどね。文庫だと上下分冊なので、長いっちゃ長いんですけど、西尾維新とか京極夏彦あたりなら1か月くらいで書いちゃいそうな長さです。ディケンズとかドストエフスキーの大長編ほどでもありませんし、その気になれば1日で読めます。
じゃあなんでそれだけ時間がかかったかって言うと、やっぱり内容ですよね。「奇書」と言われるくらい難解な作品ですから。執筆も一筋縄ではいかなかったのでしょう。
いまや『ドグラ・マグラ』と言ったら夢野久作の代表作となってますが、夢Q自身も「これを書くために生きてきた」なんて言葉を残してます。
もちろん、「ドグマグ」の執筆中にも数多くの作品を手がけてはいるんですけど、夢Q的には「ドグマグ」の執筆がライフワークだったのだろうと察せられるわけですね。
夢Qは「ドグマグ」発表から間もなくして急逝しているのですが、まさに「これを書くために生きてきた」作家だったのだなと。
◆わたしの『ドグラ・マグラ』
長くなりました。やっと本題です。
「わたしの『ドグラ・マグラ』」とは何ぞやという話なんですが、これはおなじみの方にはおなじみ「放課後のタルトタタン(仮)」のことです。
知らない方に説明しておくと、これはわたしが10年以上前からこねくり回している長編の構想です。
小説を書きはじめたのが2013年なので、それより前からこねてるわけですね。まあ、こねすぎてほとんどテセウスの船状態で原型留めてないんですけど。
わたしも夢Qと同じで短編主体の書き手……というか、現状それしか書けてない人だったりします。
作品数としては3桁くらい発表してるんですけど、最長の作品でも5万字ですから。カクヨムの区分だと中編ですね。長編はその倍、10万字以上となってきます。
最初の短編を書くまでに3年くらいかかったわけですけど、長編は10年経っても書けてないわけですね。
それが何でなのかって話はこれまでも別の連載で散々してきたので端折りますが、一言にまとめると、単純に長編そのものがむずかしいということです。
そんなわけでかなり難航しているのがこの構想で、自分の中ではやはりライフワーク的な位置づけになってます。
「これを書くために生きてる」とまでは言い切れませんが、これを書かないと先に進めないし、他の長編も書けないだろうなっていう構想です。
そういう意味で「わたしの『ドグラ・マグラ』」というわけです。
内容が『ドグラ・マグラ』的かって言うと別にそうじゃないですし、「ドグマグ」くらい有名になってやるぜと思ってるわけでもないのですが、名刺代わりの1作、代表作にはしたいと思っています。
◆りんごをみかんのままにしないように
というわけで、この「放課後のタルトタタン(仮)」、なるべく早いうちに完成させたいわけですが、これまで散々足踏みをしてきて自分の中でタスクのハードルが棒高跳びばりに上昇してしまってるんですね。
作品の内容どうこう以前に、いかにモチベーションを喚起するかってとこで頭を悩ませてるんです。
漠然と書いててもたぶん完成しないだろうな、と思うんですよね。何か、きっかけとか、具体的な目標があった方がいいんじゃないかと。
たとえば、カクコンですね。
「カクコンに出す」というのを目標に書こうと、3年くらい前から考えてたりします。
それでも書けてないのはなぜか、っていう話もたぶんおいおいしていくと思うのでここでは端折りますが、たぶん今年も同じ目標設定でこの連載を進めていくことになると思います。
「放課後のタルトタタン(仮)」の完成。その目的達成のために、カクコンを利用する。カクコン期間中の完結を目指す。それがさしあたっての目標というわけです。
いまはとても小説を書ける気がしないのですけど、この連載を通して少しずつ関心を取り戻していければな、と思っています。
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