第4話 初めての仕事

「私が連れてきたんだ。レイくんだよ」

「エレナさんが連れてきたんすか。こんなガキに何が出来るって思って……」

「私の『契約』だよ。ジェイス」

「マジすか!? それって……」


 椅子から立ち上がると思った以上に身長がでかく、がっしりとした巨体に怯みそうになる。そいつは女に向かって何かを語りかけているみたいだが、エレナさんの『契約』はそんなにすごいものなのだろうか。


「エレナちゃん、思い切ったことしちゃったね。まだやったことないんでしょ?」

「これが始めてだけど、今まで大丈夫だから信じたいね」

「そっか……私はシエルよろしくね。レイちゃん」

「あ……はい」


 見たこともない銀髪の彼女。おっぱいバトルをするなれば、エレナさんとほぼ互角だろうなんて考えていると、ジェイスとかいう野郎が、


「今から初めての仕事だからエレナさんとシエルにも着いてきてもらうが、次からは俺とペアを組むことになることを覚えていてくれ」

「え……俺、エレナさんと働くんじゃないんすか?」

「エレナさんは基本的に一人で仕事だ」

「えー……」


 なんで野郎と仕事しなきゃいけないんだ。


「文句言わずに仕事行くぞ。ほら動け」


 重い足を動かし事務所から出て、目的地へ向かうジェイスに着いていく。

 しばらく経つと、


「分かったよ。に終わったらご褒美をあげるよ」

「え? ご褒美?」

「そう。ご褒美」

「なんでも?」

「なんでも」

「やっぱ駄目なんて言うなよ」

「もう一度に終わればね」

「おっしゃ! 頑張るぜ!」


「エレナちゃん、今日はかなり近い場所だけど最近多いね。イスタリア内での死亡確認」

「使役してる子達にも偵察をさせているけど、問題は無いみたいだから私も正直分かっていないんだよ」

「不審者情報も出ていないみたいだし、ならず者もここ最近は異世界人に恐れられて減っているらしいから」


 後ろの二人の話を聞いているが、正直分かっていない。


「治安が良くなるのはいいけど、こういったことが減らないのは不思議すぎるもんね……っとこの先の路地裏みたい」


 なにか嫌な予感がする。見える。見えている。なにもないはずなのに見えている。


「みんな止まってくれ! やばい! 何か知らないけどこの先に行っちゃ駄目だ!」

「レイ、どうした。いきなり慌てて」

「やばいんだって! 見えてんだよ! 何かが!」


 その時、目的地と思われる路地裏へ向かう曲がり角から赤い光が飛んでくる。


「レイくん、もしかして」


 消えた瞬間、白く光り爆発が起き、俺含めたメンバーも爆風に巻き込まれる。


「いっ……」


 破片で腕を切ったみたいだ。


「私が先行きます!」


 迷わず事故が起きた中へ突っ込んでいく。ジェイスの能力があるからだろうか。


「私達も行くよ」


 後に遅れて二人についていく。

 だが、すぐにジェイスに追いついてしまう。足元には異世界人の死体と思われるものが二人転がっていた。肉体は欠損しており、粉塵で血と混ざって辺りはドロドロになった赤い液体が広がっている。


「……やっぱり、心臓だけが無い」


 確かに胸付近もポッカリと穴が出来てしまっている。正直見ていられない。


「能力では索敵出来ないようです。向こうに盗られている可能性があるかと思われます」

「ハイド……異世界人のハイドは厄介だね」

「レイには分からないかもしれないが、うちらの世界と異世界人の持つ能力はステータスが限界突破しているんだ」

「……」

「とりあえず、いつもの袋があるので詰めちゃいましょう。レイちゃんも手伝って」

「……分かった。あれ……」


 袋に手を伸ばすと、俺の

 痛みは感じないが血だけがダラダラと止まらずに流れている。足元や辺りを見回すも失くした部分が見つからない。


「な……んで……」

「レイちゃん!? 大丈夫!? 止血! 止血しないと!」

「大丈夫……痛みは感じないから」


 やばい、意識が。


「私の方で片付けておくので、レイをどうにかしてやってください」

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