第3話 俺の手にあるものは
「……くん」
「……」
「レイくん!」
「は、はい!」
「んっ……」
飛び起きたと思いきや、何かに押し付けられていて起き上がることが出来なかった。
何だこの柔らかい感触は。始めてだ。
「なんだこれ……」
「そんなに私のおっぱいが触りたいのかな」
「いや、そんなわけじゃ……」
手首を捕まれ今の姿勢を保つしかなくなってしまった。俺は一瞬振り払おうと思ったが、せっかくだからこのどさくさに紛れて揉んでしまえばいいと俺の悪い部分が囁いてくる。
初めて触るおっぱいは思ったよりも硬い。なんだろうか。布の下に分厚い何かが挟まった弾力がある物体を触っているような感じだ。
それ以上に興奮が勝ち、それどころではなくなってしまった。
「はい。おしまい」
「あ……あぁ……」
「そんなにも私のが良かった?」
「……別に、そんなわけじゃ……」
なんだろうか。うまく言葉に出来ない。口から声が出なくなってしまう。
「お遊びはここまで。目的地に付いたよ。イスタリアに」
気を取り直し、馬車から降りる。
地面を踏みしめると、土ではなく硬いレンガの感触がビシビシと伝わってくる。上を見上げれば空が晴れ渡っているというのにも関わらず、地面が硬いのがすごい違和感だ。
さらに言えば山がなく、建物もたくさん立ち、今まで拠点としていた場所と比べると、栄えているの一言でしか澄ませることしか出来ない。
「ほら、こっちだよ」
「あっ、はい」
手を引っ張られ、人混みを掻き分けていく。通る人が横切るたびに意識せずとも目線を感じてしまう。それだけ俺が不清潔だってことだろう。
こんな野良犬のような俺をどうしてそこまで構って必要としてくれているのかが分からない。
進めば進むほど、人が増えてきているが、道が広くなってきているのか人との距離が空いてきた。それにつれて、変わった乗り物に乗っている人もちらほらいる。
「よそ見してないで、着いたよ。うちの拠点に」
もう少し薄暗い路地裏にあると勝手に想像をしていたが、出入り口は大通りに面して、いかにもなんでもない顔をしている。
「もっと仰々しいものを想像していた? 残念。金があってもそんなところにお金を使っていたら、いつまで立っても進めないよ」
特に看板もなく、何も知らない人が通りがかっても一般の住宅と勘違いしてしまうだろう。
「とりあえず、身体をキレイにしようか」
***
「水があったけぇ。煙も出てる」
絵で見たものが目の前にあるってのが変な感じだ。風呂といえば、冷たいものとだけしか考えていなかった。
「それ煙じゃなくて、湯気って言うんだよ。出たところに制服があるから置いておくからね」
「分かった」
白い塊が何個か置いてあるから、少しかじってみたが、あまりにも苦すぎてすぐに吐き出してしまう。
「食べ物じゃねぇのかよ」
出るとそこにはエレナさんが着ていたものと同じものが確かに置いてあった。
袖を通すがしっくりこない。この上からもう一枚着るなんて考えることが出来ない。着ることを諦め、黒いズボンに白いシャツを腕まくり、平べったい紐の使い方は分からない。
「エレナさんに聞けばいいか」
しかし、中にはいってから思ったが、外から見たときと中に入ったときの空間の広さが見合わなさすぎる。頭が狂ってしまったのかと思うが、これも能力の一つだろう。
入る前に聞かされていた部屋の前まで来た。一呼吸置いて扉を開ける。
そこには知らない男と知らない女が一人ずついた。そしてエレナさん。
「誰だ、お前ら」
「なんでこんなところにガキがいるんだ?」
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