大杉の誓い~外交官 安達峰一郎 青春譜~

清十郎

はじめに~安達峰一郎の青春~(改)

 幕末維新の激動最中の明治2年、出羽国にひとりの男の子が誕生しました。少年は賊軍の地に生を受けながらも、教育熱心な家族の愛情の中ですくすくと成長していきます。


 彼こそ、後にポーツマス日露講話条約の随行員として堪能なフランス語を駆使して講話締結に尽力し、第一次世界大戦後に成立した国際連盟の日本全権として活躍、その人格的高潔さは世界的にも称賛されて、アジア人として初の国際司法裁判所所長に満場一致で選出された法学博士・安達峰一郎(あだち・みねいちろう)です。


 当時の日本は、明治維新による政権交代を終えたばかりで、世界列強に伍するために急激な殖産興業政策を実施していました。そのような中、彼の郷土は産業振興と国土防衛を目的とした東日本広域交通網整備計画という国策事業の一端に組み込まれていきます。維新の元勲である大久保利通卿の遺志を継いで、国策事業遂行に燃える山形県令三島通庸が、峰一郎たち住人の前に立ちはだかります。権力に対抗する住民運動の推移の中、少年・安達峰一郎は法律家としての精神を少しづつ育んでいきます。


 力による秩序破壊と現状変更がいまだに続く混沌とした21世紀、世界平和を目指した法律家としての彼の信念を育くんだ少年時代を振り返り、彼の原点に学ぶことが今こそ必要かもしれません。


 彼が生まれたその時代、その土地で、一体、何が起きたのか。そして、それは彼にどのような影響を与えたのか。日本初の実践的国際平和主義者とも言える彼を形造ったものとは、一体、なんであったのか。明治13年、突如として山形県の片田舎に沸き起こったこの騒動を通して、彼の少年時代を推察してみます。


 これは史実に題材をとったフィクションです。

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