会敵29 南部連合傭兵団にて その1
「団長に取り次いでくれ」
俺は傭兵団司令部で、例の、ミカドの部隊の件の報告をするためにクロエを街の近くに捨てた後、その足でやって来た。まあ、アジトに戻るついででもあるが。
受付の肩までの金髪ウエーブに唇ポッチャリが魅力的な嬢に決め顔で切り出したとこだが、それよりも、隣にいる浮かない金髪ゆるふわの表情から察しがついたのか、別室にすぐに通された。何のことは無い隣の金髪ゆるふわは腹が減っているだけなのだろと思うが、まあいいや。こいつら仲がいいからな。おこぼれにあずかろう。
「ねぇ、レオ?」
団長室のソファに座り金髪ウエーブ嬢が支給したオレンジジュースを美味しくいただきながら、隣に座る俺に、潤んだ瞳で何か訴えようとしている。
なんだ?こいつ……俺がミアに何が言いたいのか聞こうとした矢先、奥のドアが開いて団長が大声と共に、
「お~! レオン。今日はどうした? わざわざ俺なんか呼び出して? おまけに姫まで」
右手を差し出し、握手をせがんでいる。ミアにも……ミア……手を……出さない。
相変わらずの色黒、ガタイの良さに
「キャンセル案件だ。オーダーの内容が実態とかけ離れていた。最初から予定内であったにもかかわらず、それを告知しなかった。告知義務違反にもあたる。必要な処理に当たって欲しい。現場指揮官は了解済みだ」
「うむ、なるほど承知した。すまなかったな、何があった? 詳しく聞かせてくれ」
団長は俺達に頭を下げると、そう継いできた。
「国境付近の村を包囲して、非武装の民間人への無差別発砲を強要した。どうだ、団長、これだけでもキャンセルするには十分だろ? さらに、どういう経緯で知ったか知らないが、そこに隠れている者を誘拐しようとした。対象者は……いなかったようだが………」
「………………」
「どうした? 団長」
俺は、腕を組んで遠く視線を外し、考え込む団長を訝しげに見てあるべき会話の続きを求めていた。
「いや、………………レオン、これは、………………」
「どうした、団長!」
団長が、普段から胡散臭い団長の表情が、陰り、明らかに、何かを知っている様な気配を見せている団長に、俺は続きを急かすと、
「お前達、ここから先の話はこの部屋を出たら忘れろ。いいな?」
俺達に同意を求める顔は、うさん臭さなどはどこかに消え去り、戦場に立つ歴戦の猛者を思わせる鋭い視線と低く唸る声色に装飾され、午後の温かい木製のクラシックな造りで統一された団長室の空気を一変させた。
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