会敵30 南部連合傭兵団にて その2

「それは、おそらく繋がった話だ」


団長は、俺達の目を交互に見ながらゆっくりと話し始めた。


「レオン、覚えているか? しばらく前だが荷物運びの話を振った事を」


「ああ、あの濡れ手に粟のいかにもなやつな」


俺は、覚えていた。


荷物の搬送だけで150万ゴールドを超える報酬額を提示して、俺にどうするか聞いて来た話だ。150万ゴールドと言えば、俺とミアぐらいなら4年とは言わないが、それに近い年数を食べるだけなら生活できる金額だ。それをただ、荷物を運ぶだけで手に入れられるはずがそもそも無いと俺は考えていた。


だから、俺は、仕事の内容と報酬のバランスに違和感を覚えて検討する以前に、反射的に断った。


「そうだ、お前はそう言った。でも、飛びつく奴もいた。そいつは、そいつらは、お前も知っているリッツだ」


「リッツか、それがどうした」


リッツは傭兵歴は去年からだが、軍歴は10年以上、軍時代に一緒に戦っていた連中を5人ばかり集めてチームを組んでいた。決して、迂闊な奴では無いはずなのだが……


「荷物はあるところ………………まあ、いい。チューリッヒに受け取りに行って、リヒテンシュタイン領内を突っ切ってここに戻る予定だった。その途中、ボーデン湖のほとりで奴らは浮かんでいた。そして、荷物は消えていた」


この南部傭兵団の司令部があるハイデンハイムからチューリッヒは凡そ300kmある。リッツ達がどのルートを辿ったかは知らないが……


「随分、無茶な話だな」


俺はまず、正直に思った。

国境のボーデン湖を対岸に渡り、そこから凡そ敵国領内を70km往復移動して戻る。なかなかのハードな内容だ。俺は敵国領内の潜伏、破壊活動に専念していたので、俺だけなら難なくこなせるだろうが……条件次第だな……荷物のでかさだ。それによって難易度は変わる。


「なぁ、団長。荷物。荷物、って大きさはどのくらいだった?」


俺の隣のミアが、出されたオレンジジュースを飲み干しそうだ。手にグラスを持って中の氷をストローで突っついていじめている。


「そうだな………………」


団長は俺を見ていた視線を隣に座るミアに移すと、


「………………姫ぐらいだ」


そう言って、ミアを見ていたが、おそらく、腹が減って話など聞かずに“早く終われ早く終われ”と心で唱えているであろうミアが、自分の事が話題になったので団長を見て“何?”っていう表情をしたのを俺が確認したところで、


「団長、ミアぐらいって……もう少し、具体的に頼む」


「ああ、荷物は、姫と同じくらいの体格の女性だ」


どうやら、荷物とは人間らしいことが解った。


……って、まさか。クロエ……か。

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