会敵13 ミカド
「久しぶりだな、戦友」
俺は目の前の男、190cmを優に超える大男を見て声を掛けた。
「レオ! 頼もしい相棒。待っていたぞ」
そう言うと俺に握手をせがんでくる。
俺もこの士官学校以来の旧友ミカドとの仕事にいつも以上にテンションが上がっているのを認めるしかない。隣のミアが俺を見てそんな顔できるのかと言った表情で見上げているから、やはり、主観的にも客観的にも俺はいつもと違う表情をしているのだと思うのだ。
今日、ミカドと会う事は偶然でもなんでもなく、傭兵団のオーダー一覧で正規軍エスコートの明細書の中に作戦責任者欄でミカドの名を見つけ俺が懐かしく思いミアを説き伏せて受諾したからなのだ。
ミカドは士官学校で同室、軍歴、特殊部隊訓練所、そして、その後の作戦行動と同じ経歴を歩んできた。途中で俺がドロップアウトするまで、とても気の合うやつで俺の全て、それこそいつ、どの女とイタシタかからいつ振られたかまで知っている。幸いお互いの身体だけは味わった事は無い。余談だが、付け加えておく……
そんなミカドが作戦責任者のオーダーを俺がスルー出来るはずもなく、さっそく俺はその作戦に参加すべく合流ポイントへと馳せ参じたまでだ。
「おい、ミカド、お前、今、中佐なんだってな、えらい出世じゃないか!」
おれが、握手したまま自分の事のようにうれしく思いながら、ミカドをみれば、
「ああ、その事か。それは、戦時昇進だからな簡単なもんだろ。お前だってあのまま居たら将軍だろうよ」
ミカドは伏せる目の中に含みを持たせている。そう、これがこいつのいつもの感じだ。
「どうした? 俺たち見たいなグレーゾーンに仕事を依頼するなんて」
俺が卑下した言い方で聞けば、
「特殊部隊と言ってもな、レオ。お前がいたころとは大分違うんだ。お前だから言うんだが強い護衛が必要なんだよ。まったく嘆かわしいところだが、それが我が国の現実なんだ」
遠くを見て答えていたミカドは、整列する1個中隊に目を移し、ため息をついた。
「ねぇ。ミカドって変わった名前ね」
ミアが手持無沙汰を通り越して俺達が相手しない事にしびれを切らし、会話に入って来た。
ミカドは今までミアがうろうろと言ってはミアに失礼か。ミアが荷物の積み下ろしで、いたり、いなかったりでそれほどミアを気にも留めていなかったのだと思う。声を掛けられたことで初めてミアの顔を間近で見たのだろう。ミカドの顔色が見る見る間に悪くなり驚愕の表情を浮かべ俺の方へと視線を向け口を空けたまま黙って俺に救いをもとめている。
ああ、そうだよ。ミカド。お前がそれほど驚く理由はわかっている。
「リ、リナか?」
ミカドがミアを見て低く呟いた。
「悪いミカド、人違いだ。それ以上はやめてくれ」
俺の俯き加減の視線とこわばった表情でミカドは我に戻ったのだと思う。
「あ、ああ、済まない。僕の知り合いに似ていたものでね。つい……」
ミアに謝罪していた。済まないのはこちらの方だ。前もって話しておけばよかったな。
「ねぇ? 私の話聞いてた? 名前! ミカド変わった名前ね!!」
ミアが音量を上げて来た。
「あぁ、ミカド。話していいか?」
OKと肩をすぼめて俺に合図するミカドをみて俺はミアに、
「ミカドのママはヤーパンの人なんだよ。確かカイザーって意味だよな?」
俺がミカドに話を振ると、
「まぁ、細かく言えば少し違うんだけど、だいたいあってるよ」
と、ミアを観察するように見ながら答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます