会敵14 ヤーパン

 ヤーパンはユーラシアの東の端にあった島国だ。この大戦のきかっけを作った極東の大国が最初に攻め込んだのがヤーパンだった。ヤーパンはなぜか知らんが、軍隊を持たない事で平和国家という理想を実現したつもりになっていた。それは、泥棒の気持ちに自分の財産をゆだねる危険な行為とは思わなかったらしい。


軍隊を持たないヤーパンは今の新大陸統一連邦の元になった当時の覇権国家に軍隊を依存していた。しかし、いざ極東の大国が牙をむき襲い掛かると、その覇権国家の軍隊は戦うことなく一斉に引き揚げていった。


残るは極東の大国によるヤーパンへの蹂躙だ。


ヤーパンの人たちは強制収容所行きになったか、おもちゃのようにいたぶられて殺されたか、ミカドのママの先祖のように難民として他国へ逃げ延びたか……


覇権国家はヤーパンの島国という地形に注目していた。そこに侵略してきた極東の大国の軍隊を海上封鎖で一気に締め上げてせん滅したのだ。ヤーパンを使った焦土作戦だった。


しかし、戦争はそれだけで終わらなかった極東の大国の息のかかったアフリカや中央アジア、南米大陸の国家が次々に宣戦布告し、あっという間に大戦の様相を見せてきたところでユーラシアに跨る大国が極東の大国側に参戦し、ついにはヨーロッパへと戦火は広がり世界大戦へと姿を変えた。


覇権国家は南米の宣戦布告した国家をあっという間に自国領に併合し、終いには南北大陸にまたがる巨大国家を作り上げた。これで、この大戦も終わると思われたが、極東の大国は核のボタンを押した。最後の大どんでん返しでも狙ったのだろう。そして、それはすべてを破壊する終わりの始まりだった。


破壊は破壊を呼び復讐は復讐を呼んだ。全ての手段を使って、すべては無に帰った。


広く世界から寄せ集めて具現化したテクノロジーは一か所でも抜ければすぐに立ち行かなくなった。まず、高度なテクノロジーから失われた。


空を飛び敵地を攻撃するプラットホーム。ロケット、ミサイル、飛行機、艦船、近代兵器というものは順次、使えなくなっていった。そして、戦争の兵種の主役は数百年さかのぼり人間のみが担う様になって既に半世紀だ。今は、出来るテクノロジーで何とか往時の戦争前の状態を取り戻すべく動いているようだが、どこも戦いを継続することで精いっぱいであり、なんら目に見えた成果は見られていない。


これが、俺の知る俺の国が描いた歴史だ。歴史なんて為政者が都合よく描くものだ、真実などは俺のようなレベルの人間が知りようもない。

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