最終章  5話  ドラゴン狩り

 ドラゴンは鋭い前足を繰り出す。オーウェンはそれを左手のシールドで受け止める。


「ぐっ!」


 凄まじい衝撃が全身に伝わるが、トゥールが製作したクィーン装備はドラゴン型の攻撃にも十二分に耐える性能が備わっているようだった。


「くらえ!」


 オーウェンがドラゴンの攻撃を引きとめた瞬間、ドラゴンの動きが止まった隙にサラはレーザー銃のトリガーを引く。こちらもクィーンを使用した高出力レーザーは、タイプ・ドラゴンの厚い装甲を貫く。


「ガアアアアアアア!」


 ドラゴンは咆哮を上げると仰け反る。その直後、凄まじい勢いで半回転すると、長く鋭い尻尾を振り回す。


「うわぁ!」


 突然の攻撃でオーウェンは尻尾の直撃を受けて弾き飛ばされた。クィーン装備の防御力を持ってしても、相当なダメージを受ける。


「がはっ!」


 オーウェンは強かに地面に叩きつけられたが、すぐに立ち上がる。

 そのオーウェン目掛けてドラゴンが突進を開始する。迫り来るドラゴンを右に跳躍して回避する。

 彼はそのまま地面を回転して、その勢いで立ち上がる。


「サラ! 今だ撃て!」


「了解!」


 オーウェンに突撃を慣行したドラゴンは、さすがにその巨体をすぐに止める事も出来ない様子で、その背後が無防備となった。 そこに再びサラの銃口が煌く。連射されるレーザーの光線は全てドラゴンに吸い込まれる。

 サラが攻撃を行っている間に、オーウェン素早く簡易治癒セットで傷の治療を行う。そして再び身構えると、ドラゴンは両翼を羽ばたかせ空中に非難すると、ゆっくりと二人に向き直る。


「来るぞ! サラ俺の後ろに!」


 オーウェンの警告とドラゴンの空中突進が重なった。サラはオーウェンの言葉に従い彼の背後に隠れる。

 ドラゴンは僅かに首を持ち上げると、次の瞬間に口を大きく開くとそこからブレスを吐き出した。 


「シールド全開!」


 空中を飛びながらも飛来してくる火炎を、オーウェンは再び盾を構えるとそのが輝き出す。

 盾の表面をエネルギーシールドでさらに強化する。ドラゴンの炎は盾から左右に割れると、オーウェン達の左右を業炎となり通り過ぎる。


「うおおおおおおおー!」


 オーウェンは全身の力を込めて盾を持ち続ける。ドラゴンは二人の上空を通り過ぎると、着地して彼らに向き直る。その顔面をサラのレーザー光線が直撃する。

 その隙を突いてオーウェンはドラゴンに走り出す。ドラゴンは再び首を持ち上げると、口から炎弾を吐き出す。

 最初の炎弾を回避すると、次の炎弾の軌道を確認しつつ背後のサラを確認する。ドラゴンとの距離が十分にある彼女は、その炎弾を余裕を持って回避している。


「よし!」


 オーウェンは彼女の安全を確認すると、最後の炎弾に向かって突っ込む。

 炎弾と接触する直前に彼は背中のブースターを点火する。オーウェンは炎弾を軽々と飛び越えると、そのままドラゴンに飛び乗り、右手のレーザーサーベルを背中に突き刺した。

 そのまま背中を駆け下りると、ドラゴンの背中に大きな傷を負わせる。

 オーウェンはドラゴンの背後に着地する。


「オーウェン! 危ない!」


 サラの悲鳴が聞こえると、オーウェンはすぐに跳躍し前方に転がる。彼の立っていた場所を凄まじい勢いでドラゴンの尾が吹きぬけた。

 サラの警告に咄嗟に行動した彼は無傷だったが、あのままだとオーウェンは即死していたはずだ。


「ありがとう! サラ!」


 サラに謝礼を述べながら彼はすぐに体勢立て直す。その間もサラはレーザー銃のよる援護射撃を行っていた。ドラゴンは再びオーウェン目掛けて尾を繰り出す。

 オーウェンは静に両手で剣を構える。迫り来る尾を凝視すると攻撃の軌道をイメージし、直前で僅かに身を反らして回避する。ドラゴンの尾は轟音と共に地面に突き刺さる。


「はっ!」


 短い気合の声を発してオーウェンは光剣を振り下ろした。

 「ズバッ」と音が鳴ると同時にドラゴンは苦痛の咆哮を上げると、仰け反りバランスを崩して倒れ込む。

 オーウェンによって尾が切断されたため、突然バランス感覚が狂ったのだ。


「サラ!」


「オーウェン見えた! 頭の中心!」


 サラの声を聞くとオーウェンは走り出す。倒れ込むドラゴンの翼に飛び乗り、そのまま跳躍すると光剣を高々とかざす。


「くらえぇ!」


 レーザーソードは狙い違わずドラゴンの頭上に深々と突き刺さった。


「出力全開!」


 オーウェンは背中のスラスターを起動し、その突進力と利用してさらに光の剣先をドラゴンの身体に突き刺していく。

 彼の背中にはスラスターのブースト炎により、赤く光り輝く翼が生まれる。剣が突き刺さった部分は凄まじい音と火花を散らす。


「届けぇええええー」


 オーウェンの叫び声が届いたのか「パキィイイイイン」と硝子の砕けるような乾いた音が響き渡ると、ドラゴンは大きな断末魔の咆哮を上げ、ゆっくりと巨大体躯は崩れ落ちた。


「オーウェン!」


 ドラゴン型のコアに止めの一撃を与えた彼は、その場に座り込み荒い息を吐いていた。そんな彼に駆け寄るサラに軽く片手を上げて無事を知らせる。


「もう、無茶して!」


「はぁ……はぁ……相手はドラゴン型だぜ? 無茶もするさ」


「そうだね。よくやったよ! オーウェン」


「サラがコアの場所を特定してくれたからさ」


 サラの手を借りてオーウェンは立ち上がると、すぐにジャック達へと視線を向ける。そこでは既に戦いが始まっていた。

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