第四章 3話 真実の行方
《最初から人類……。いや、世界の破壊が目的なのか?そもそも、人類とのファーストコンタクトで戦いを仕掛けて来たのは本当に奴らなのか?》
それはトゥールがオーウェンに投げかけた言葉だ。己の目で真実を探して来いと。その答となる真実がこの先、この場所で明らかになるかもしれない。
「それで人類をこの宇宙から消し去ると?」
『そうだ……。お前らのような下等生命体が宇宙から消えてとして、悠久の時間の流れの中では些細なことでしかない』
キングは言葉を終えると、ジャック。セフィリア。オーウェン。サラ。とそれぞれの顔を見つめて、最後にもう一度ジャックへと視線を向ける。
『そうだな……。我をこの地に呼び出した褒美として、ここにいる4人の名は人類の代表として記してやってのよいぞ?』
「そいつは光栄だな」
『光栄に思えジャック』
「だが、断る!」
ジャックは不敵な笑みを崩さぬまま続ける。
「で、人類を滅ぼして、その後はどうするんだ?」
『な……に?』
ジャックの言葉に初めてキングが動揺する。
『確かにあの日、私は娘を伴って銀河連邦の代表者との会談へ向かい。その会談へ向かう途中で娘は何者かに誘拐され……そして解体された』
オーウェンはゆっくりと膝をついた。求めていた真実は簡単に疑惑から真実へと変化した。
いや、心では真実であると思う気持ちと、それを否定する気持ちだった。
だが、今この時点でシバルバーが現実として銀河連邦が先に機械生命体を――。
「しっかりしなさいよ! オーウェン!」
目の前に現れたサラに頬をぶたれて彼は現実に引き戻される。
「サ……サラ?」
「あんた! ここまで来て何バカな事を考えてんのよ!」
涙を浮かべオーウェンを怒鳴るサラはしっかりと彼の瞳を見つめる。
「あんた。クィーンに襲われてから今日まで、ジャックさんやセフィリアさん、そしてシバルバーさんの何を見てきたのよ!」
溢れる涙を拭いもせずに、サラは叫び続ける。
「もし、キングが言うように人類に非があるとしたら、あの人達が命を懸けてあたし達を助けると思う?」
「…………」
「あの人達は人類を救う為だけに生きているのよ?時にふざけて人生の楽しみを、時には正しく導くための道しるべを、時には怒りや憎しみも……」
サラは穏やかに微笑むとオーウェンを胸に抱く。
「そして、誰かを愛する喜びも……」
オーウェンにはサラの心臓の音が聞こえた。その心音を聞いていると自然に心が落ちついてくる。
自分は真実を探求すると決めたのだ、その途中で勝手に思い込んで結論を出すわけにはいかない。
「バカはひどいよな?」
「仕方ないじゃない。バカなんだもん……」
「そうだな……」
オーウェンもサラに微笑み返すと、再び立ち上がる。サラは彼の傍らにそっと立つ。
「すみません、見苦しいところを見せました」
「いやいや、驚いたぜぇ~オーウェンお前、間違いなく尻に引かれるな」
「同感だわ~」
『間違いない……』
オーウェンに三者三様に声をかけるが、その言葉は暖かかった。
『それで、茶番は終わりか?』
キングは何事もなかったかのようにみえたが、オーウェンには違和感を覚える。
(これは……動揺?)
そんなオーウェンの内心の疑問を他所にシバルバーは会話を再開する。
『そうだな……では、話を再開しようか。お前の言う通り、娘の解体された姿に私は半狂乱になり、銀河連邦代表団を襲った……』
『再開したところで、人類が下等で残虐だと再認識した……』
「おかしいですよね?」
キングの言葉が終わるより先にオーウェンは疑問を口に出す。
「当時、銀河連邦には機械生命体に対抗する技術は無かったはずです」
オーウェンの何気ない言葉に反応を示したのは意外にもキングだった。
『お前の着ている鎧は、我が同胞を元に製作しているのであろう?何を根拠にそのような世迷言を……』
「あなたの言ってる事は間違ってます。この装備を製作出来る技術は十年にも満たない時間しか経過してない、まだ歴史の浅い技術な……はず」
オーウェンは再びトゥールの言葉を思い出す。彼は語っていた。この技術の歴史はせいぜいここ十年しかなく浅い歴史だが、その根底は遥か昔から人類が培ってきた歴史だと。
「その当時、銀河連邦には機械生命体に対する知識もない……。仮にシバルバーさんの娘さんを誘拐した所で、すぐに解体などするはずがない」
オーウェンはゆっくりと視線をキングに向ける。
『オーウェンの言う通り、冷静さを取り戻した私は自らの過ちにきがついた』
オーウェンの言葉の続きをシバルバーが続ける。
『だが、時すでに遅く……私が事態を収拾しようとした矢先に会談が行われていた船団が襲われた……機械生命体によってな……』
シバルバーが告げた言葉に意味をオーウェンはすぐに理解できた。
「シバルバーさんと娘さんは
「そうだオーウェン」
ジャックは力強く頷く。
「ここで簡単な謎解きだよ。シバルバーと娘の存在が無くなって誰が得をする?」
ジャックの質問にオーウェンは目に前に立つ機械生命体を見るめる。
「どこの世界でも、どこの惑星や銀河でも変わらない……。前国王とも呼べる存在が消えて得をするのは、その後に王に即位した者……つまり」
『こ奴だ』
オーウェンの先でキングは突然甲高い声で笑い出す。
『ははははっ、いやはや、見事というしかないなジャック、シバルバー。それにお主はオーウェンと言ったか?』
「やだねぇ~開き直りやがったぜぇチキングの野郎」
ジャックはやれやれと両腕を上げるジェスチャーをする。
『人類など下等な存在が崇高な我等と同等に肩を並べるだと?』
『人類は愚かではない……』
『だから、あなたは甘いのだよ父上』
キングはシバルバーの言葉を遮る
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