第三章 6話 真実への鍵
「最初から人類……。いや、世界の破壊が目的なのか? そもそも、人類とのファーストコンタクトで戦いを仕掛けて来たのは本当に奴らなのか?」
トゥールの言葉にオーウェンは衝撃を受ける。
彼ら機械生命体とのファーストコンタクトから人類に対して攻撃を仕掛けてきたのは機械生命体だと教わってきた。
機械生命体の破壊の目的も理由も判明していない。だが、彼らは最初から問答無用で襲いかかって来たとオーウェンは教わった。
「機械生命体が……。攻撃してきたのでは……ない……と?」
口の中が乾きうまく言葉を発する事が出来ないオーウェンに、トゥールは苦笑を浮かべると静かに首を振る。
「それはわしにも分からん……。じゃが、わしが初めて機械生命体に出会ったのは。それこそ残骸だったが、その残骸にですら機械生命体に対する興味は尽きんかった……」
記憶の糸を辿るように彼は話を続ける。
「探究心や好奇心……。言い方はそれぞれじゃろうが、知りたいと思う心は人類の文明を大きくし、育ててきた……」
「それはわかる気がします……」
「お前、どう思う?いや、お前ならどうする?目の前に自らの意思で動き、考え、活動する「機械」が現れたら……。その構造を覗きたくならんかの?」
トゥールはある言葉だけあえて強調する。
「あくまで初期認識は「生命」ではなく「機械」だとしたら?」
オーウェンは全身の血の気が引くという感覚を始めて理解できた。
「子供のころ大事なおもちゃや人形を、その構造を知り、自分でも元に戻せるとバラバラに解体した結果。元に戻せず親に泣きついた経験はないかの?」
オーウェンとサラはその言葉に顔を見合わせる。彼等の思い出の中でもトゥールの話の内容に心当たりのあるエピソードはたくさんある。
「人間が……。人間だけが何かを創造することが可能で「機械」は人間によって産み出された産物だと思い込み……いや、思い上がったとして……」
オーウェンとサラはトゥールが言い換えた言葉に意味に驚愕する。
「機械と人間……どちらが上で、どちらが下だと思うかの?」
彼の言葉に痛いほどの静寂がその場を支配する。自らの早まる心臓の音さえも聞こえてくるような錯覚に陥る。
「セフィリアはラフィニア星人だ。だが、外見もDNAもほぼ人類と似ておる。両者の間には子供さえ産まれる。奇跡に近い種族同士じゃが。そうでなくても銀河連邦所属の地球外生命……異星人と呼ばれる存在は皆、その外見で始めてみても「生命」の宿る「生物」と認識できるじゃろう……」
静かに穏やかに彼は続ける。
「じゃが「機械」はどうじゃ? 本当に「生命」なのか? 「心」と呼べる物はあるのか?独立した考えを持つのか? それ自体が命令やプログラムによって動いているだけの存在ではないのか? そもそも、人類に造られた存在であるはずの「機械」に人類と対話し人類と同等に並ぶ権利はあるのか?」
サラはオーウェンの腕に自らの手をかけた、サラの震える手をそっと握り返したオーウェンだが、震えているのはサラの手か自分の手なのか分からない。
「機械ごときが、機械の分際で……」
トゥールの視線はここではない別の遠い記憶の先を見つめる。
「おごり……じゃな」
そして静かに、だが、ハッキリとした口調で彼は言葉を終え、視線をオーウェン達に戻す。その視線を受けてもしばらくオーウェンは口を開けない。
「もちろん、これはわしの憶測じゃ」
深く息を吐き出し、トゥールは穏やかな表情になる。それでオーウェン達二人も徐々に落ち着きを取り戻していく。
「本当に憶測なんですか……?」
オーウェンの質問にトゥールは深いシワの刻まれた顔に笑みを浮かべる。
「その答えは自分で探し出せオーウェン。お前は仮面のハンター。ファントム・ジャックと出会い、その答えを求める鍵を手に入れたも同然なのじゃからな」
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