第二章  6話  作戦会議

 宇宙港から軍基地の作戦室に移動したオーウェンは、ジャックを中心にした作戦会議に参加していた。先日と同じ様に作戦室と各軍事施設。ハンター連合の代表者達とは通信装置で繋がっていた。


「さて、俺が今回の作戦統括を任されたジャックだ。みんなよろしく!」


「うわぁー、ジャックが真面目に話してるよ!」


「なんか悪い物でも拾い食いしたんじゃね?」


「いや、セフィリア姉さんに振られてまともになったに違いない」


 ジャックが第一声を上げた瞬間に、ハンター連合からは言いたい放題の声があがる。

 ジャックはそこ声に「お前ら黙れ!」と怒鳴り返していたが、しばらくはその言い合いが続いた。


「まったく、話が進められねぇーじゃないか!」


「それそれ、そのしゃべりでいいんじゃね?」


「わーたぁわーた! いつも通りでいくぜ? それで文句ないだろ?」


「ああ! よろしく頼む」


「ったく……」


 オーウェン初め軍関係者は、ジャック達の一連のやり取りを見ていて唖然としていたが、次第に緊張が取れて自然体でいる自分に気がつく。


(さっきのセフィリアさんと言い……叶わないなこの人達には)


 オーウェンは自身の緊張が嘘のように無くなっている事に気が付き、今更ながらに彼等ハンターの度量の深さに感心する。


(まぁ、セフィリアさんは本気で楽しんでそうだけど)


 オーウェン達の緊張の取れた表情を確認すると、ジャックは老提督に軽く会釈をするとホログラフのメインスイッチを起動する。


「さて、問題のキングの戦闘集団は間違いなくこの星へと進路を取っている」


 ジャックの言葉と同時にホログラムの星図に光点が無数に浮かび、その光点から光の矢印が一筋伸びると今いる星へと到達する。


「残念ながら、これ以上の援軍は間に合わない。こちらの提督の艦隊と俺たちハンター連合の艦艇で船団を構成。まずは奴等との艦隊戦になる」


 ジャックの言葉に、オーウェンは驚き思わず声を上げる。


「機械生命体は、戦艦に乗っているんですか……?」


「いや、オーウェン。あいつらの戦闘タイプには形体変形タイプがいてな。宇宙空間移動なんかでは、そのまま戦艦同様の能力を持つ奴がいるのさ」


「そうなんですか……」


「お前達が知らないのも無理はない。その戦闘タイプもクィーン同様の戦闘力を持つ個体だからな。ハンターくらいじゃないと、まずお目にかかることもない」


「クィーンクラス……」


「ああ、だが、相手が宇宙空間を移動しているなら、こっちにもチャンスがある」


 ジャックの言葉に、オーウェンはすぐに答える。


「そうか! こちらも戦艦で戦える!」


「お前、うちのチームに入らねぇか?」


 ジャックは嬉しそうに正解を答えたオーウェンに言葉をかける。


「ジャック!勧誘は後にしろよ! だいたい、これ以上お前のチームを強くしてどうするきなんだよ? そこの青年! 俺のチームに入れよな?」


「何、どさくさに紛れて勧誘してんだ!」


 そこから再びオーウェン争奪戦の口撃合戦が始まった。オーウェンは気恥ずかしさとお供に苦笑いを続けるしかなかった。


「まぁ、いい。オーウェンの件は後で話すとして……。話を戻すぞ?」


 その場をジャックが仕切り直すと、先程の喧騒が嘘のように静まり返る。


「オーウェンの言った通り、こっちも戦艦クラスで応戦出来る数少ない機会だ。ただ、避難する市民の護衛用に軍艦を派遣するから、数は五分五分ってとこだ」


「市民には護衛をつけてくれるんですか?」


「当たり前だろオーウェン。そのための軍隊だろ?」


「ええ、そうですけど、この前の……」


「あいつらは避難じゃねぇ。逃亡だ。俺は逃亡した事を攻めるつもりもないが、逃亡した奴の安全を守ってやるほど、人間できてないからな」


 オーウェンの言葉をジャックが遮る。その表情はどことなく怒りを感じる。だが、すぐに普段の彼の声色で話を続けた。


「で、開戦宙域はこの太陽系の第三惑星周辺で行う予定だ……」


 ジャックが指で星図を指差すと、その場所が光の輪を放つ。


「もちろん、激戦が予想されるが、恐らくキングはこの艦隊戦には参加しないと俺は思う」


「理由は?」


「勘……だ」


 ハンター連合代表の一人の問いにジャックは真顔で短く答えた。オーウェンを初め軍関係者は(提督を除く)驚きの表情を浮かべる。


「お前の勘なら、そうかもしれないな……」


 ジャックの返答に対するハンター連合の答にも再び彼等は驚かされた。


(それだけ、ジャックさんは信頼されているのか……)


 彼等の短くも確信に満ちた会話を聞いてオーウェンも覚悟を決める。その表情を確認したジャックは、短く提督と頷きあう。


「オーウェン。何か質問があるか?」


「いえ! 自分は……。僕はジャックさんと提督に命を預けました。そう心に決めた以上はジャックさんや、ハンターさん達の言葉を信じます」


「いい答えだ!」


 ジャックは笑顔を返すと、再び作戦地図へ視線を向ける。


「この太陽系には、氷に覆われた惑星がある。この惑星に降り立ち、キングの出迎えをしようと思っている。初戦の艦隊戦でこっち優勢が条件だがな」


 ジャックの言葉に提督が質問を口にする。


「だが、果たしてキングはその星に誘い込まれてくれるじゃろうか?」


「大丈夫です提督。とびっきりのエサを用意してますから」

「エサ?それはどんな?」


 提督の質問にその場に居合わせた人々の視線がジャックに集中する。その視線を真正面から受け止めると彼は不敵に笑い応えた。


「俺です」

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