第二章 2話 伝説の存在
廊下から建物の中庭へと歩む。そこにあったベンチにジャックが腰かける。
その座るジャックの目の前に立つとオーウェンは直立不動の姿勢をとる。そして深々と頭を垂れた。
「先日は、命を救って頂きありがとうございます!」
「あぁ~いいよいいよ。そんな
「いえ!あのとき、お礼を言い忘れていましたので、これだけは……」
「サラ……。いい子じゃないか。大事にしてやれよ?」
「はい」
顔を上げたオーウェンはジャックに苦笑交じりに答えた。
「で、本題に入ろうか?お前が遅れた理由ってのは、軍は感知したんじゃないのか?」
ジャックの言葉はあくまでも軽い。しかし、その一言に含まれる意味の重さは、この場にしかいないオーウェンには、ヒシヒシと感じられる。
「本来なら、軍の機密なんですが……」
「俺は宇宙連邦広域ハンターランク……クラスSSSだからな。問題ない」
「です……ね」
ジャックの所属するハンターには、ランクと言うべきライセンスがあり、そのライセンスによって様々な特権が与えられる。
惑星、国家、都市をも救える彼等の実力に対する宇宙連邦の恩恵だが、その恩恵や特権を与えられるハンターは銀河にも数人しかいない。
「数日前、広域センサーに無数の飛行船団らしい影が捉えられました」
「それで……軍の……。いや、オーウェンの見識は?」
「恐らく……クィーンの死に対して派遣される機械生命体の軍団かと……思います」
「ほう……」
ジャックの質問に対するオーウェンの答えに、彼の眼光が鋭く光る。
「なかなか、いい洞察力だが……80点だな」
不適に笑みを浮かべるジャックにオーウェンは質問を返す。
「ジャックさんは、どう思われます?」
「キングが来る……。恐らく十日以内に……な」
オーウェンがその場に膝を付いているのに気がついたのは、ジャックの言葉を聞いてから数秒。或いは数分後だったかもしれない。
眼の焦点が合ってくると静にオーウェンを見つめるジャックの穏やかな顔が視界を埋めた。
「二十秒だな……。まぁ、初めてキングと聞いてそのくらいで意識を回復出来るなら上出来だ」
あくまでも不適にジャックはオーウェンに言い放つ。
――機械生命体タイプ・キング――
初めて機械生命体と人類が接触した瞬間から彼等との戦いは始まった。その歴史でも数例しか目撃情報もなく、その存在自体が伝説と呼べるクラスの機械生命体だった。
「それでジャックさんは、この星に?」
「まっ、俺みたいな酔狂な奴は他にいないだろうからなぁ」
愉快そうに笑うジャックだが、もし彼の情報が真実だとして、キング襲来する星に残りキングと戦う為に彼はこの場所に留まっていると言っているのだ。
「でも、それ……その情報は本当なんで……いや、ジャックさんが嘘をついても意味ないし、出来れば嘘であった欲しいくらい……か」
ジャックに質問しようと口に出した疑問だったが、オーウェンは自己解決に至ったのか、独り言のようにつぶやく。
「残念ながら事実だ」
ジャックの力強い言葉にオーウェンは静に目を閉じると空へ向き、深く息を吐き出すと再びジャックへと視線を向ける。
「まずは事実として受け入れたって事でも、お前、たいしたもんだよ」
「ありがとうございます」
笑顔を浮かべるジャックに、オーウェンも笑顔を浮かべる。
「開き直ってみましたよ」
「ふっ、人間、開き直りが感じだ」
ジャックは勢いよく立ち上がると、建物の一角に片手をあげて挨拶を送る。オーウェンもそこに視線を送ると、サラとセフィリアが窓から彼等を見つめていた。
「さぁて、忙しくなるがサラに会ってくか?」
「いいえ、このままで……」
「そうか……」
ジャックとオーウェンは二人に挨拶を送ると、踵を返して歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます