リサ

 戦闘開始1秒、弟神カーズが爆裂魔法を展開。眷属ユウマの機転により、全員ほぼ無傷。眷属ユウマは広背筋、胸椎、頸椎、肩甲骨、坐骨などに損傷を負うも、1分で再生。人間種ノーマンは人間種ナディア、人間種デルテを抱えて一時避難。人間種リサ、眷属ユウマを押しのけて特攻。


「無謀。何がしたいのか分からない。カーズの爆裂魔法は大気中の分子を急激に暴走させることで発生。回避不可。」


ルーネリアは審判という立場を持つ。その為絶対防壁という魔法を展開させることができる。ただ、そのことさえも今はよく分からない。長兄ヴェルドーの謎の言葉、『全ての神がそう信じ込んでいる』という言葉を何度も噛み締めていた。


「今までの戦いも全てが嘘?」


ルーネリアの思考は目の前で起きている爆破、剣戟を無視してずっと行われた。自分に与えられている知識では答えは見つけることが出来ない。本当にそうなのかを検証している。


「ユウマは何かに気づいているの?」


戦いの最中、眷属に送られた言葉は当然返ってこない。彼も無謀な戦いを演じている役者の一人なのだから。自分の両親の行方。姉アルテナスは知っているのだろうか。あの時どうだったのか。クリスの記憶のさらに奥の自分の記憶を遡る。始まりの日に何が起きたのかを。


「だめ、思い出せない。記憶はある筈なのにどうして記憶がぼやけているの?」


今度は誰に問うでもなく、自分自身に向けて言った。ユウマの焦りが逆流する。眷属はいったいヴェルドーの言葉に何を見たのか分からない。自分がもどかしくなるだけだ。だったら自分もあっち側にいたかった。ユウマと一緒に戦いたかった。


     □


『大いなる風の神シルフィードよ。我が名はエリザベス。我に祝福を与えたまえ神速シルフスピード


『癒しと水の神アクエリス、我が名はエリザベス。我に祝福を水の鎧ウォータープロテクト血液加速グレーターブラッド


『氷の女神サファリーン、我が名はエリザベス。貴女の美貌を讃えます。我が剣に貴女の御加護を氷刃剣エンチャントアイスブレード


『崇高なる強き光、轟く音の美しき神レイザームよ。我エリザベスの声に応え、偉大なる稲妻を轟かせ給え雷速神威ライトニングスピード


次々にリサは魔法を詠唱していく。その度にリサは加速し、そして氷の刃を顔のあたりまで持ってきて、そのまま太陽神カーズへと突っ込んでいく。神の目さえも欺くほどの速度で、爆破魔法を躱していく。風の加護での速度強化、それにブラックアウト防止のためか筋力向上のためか体液の循環を加速、そして神経伝達を強引に加速させ、超人的な反射速度を体現したリサの姿は光の神そのものだった。


周りがゆっくりに見える。それほどの加速。時が止まったかのような反射速度。リサは空中で破裂するカーズの魔法を見切り、その全てを最小限の被害に止めながら突き進んだ。


「私にできることはこれくらい。」


その言葉を口にしても空気の伝達速度を超えてしまえば、声になることはない。その代わりに爆音を上げるソニックブーム。地面を震わせ、遠くでガラスの割れる音がする。人間にあってはならない速度でカーズの喉元にアイスエンチャントされた細身の剣を突き立てる。


「ぬるいな・・・」


リサの突き立てた筈の剣はカーズの喉に届くことはなかった。目の前で融解されていく剣を見て、リサはその剣の柄の先を蹴り、カーズと距離を置いた。


『この大地を包む壮大な神リバルーズよ。我エリザベスは魔王と戦う者なり。魔王カーズを濁流の渦に巻き込んで大渦潮グレートスオール


『大いなる風の精霊シルフィードよ。我が名はエリザベス。彼奴に荒れ狂う竜巻を示し給え大暴風グレートハリケーン


『崇高なる強き光、轟く音の美しき神レイザームよ。我エリザベスの声に応え、偉大なる稲妻を轟かせ給え大雷電撃サンダーストーム


ユウマには聞き取れないほどの高速詠唱。リサがカーズから離れた瞬間、カーズの周りには荒れ狂う海と台風、そして雷が轟いた。CGのような光景にユウマは唖然とするしかなかった。


『優しく雄大な大地の神フォーセリアよ。我が名はエリザベス。優しき神よ、今は猛き姿を見せよ金剛石棘連弾ダイヤモンドスパイクショット


そしてこんな上級魔法もあったのかという、大地の神フォーセリアの魔法により、極細のダイヤモンドの針の雨を叩きつけた。


「女、ぬるいと言っておるだろう!!」


リサの放った全ての天災レベルの事象を爆発一つで全て粉々にして、カーズは激昂を上げた。そしてそのままリサの体内を中心にした爆破魔法を展開した。


爆音を上げ、地面が抉れる。そして遥か彼方まで爆風が広がった。その爆風に乗ってユウマはリサを抱き抱えて跳躍していた。


「リサ、バカかお前は。死ぬ気か?」


「うるさい! うるさい! だって・・・だって私にはこれくらいしか出来ないもん!」


ユウマの胸の中で駄々をこねるリサを見ながら、ユウマは絶望に暮れるしかなかった。どれもこれもユウマなら即死レベルだ。それを鼻息一つで払い除けるのか。


「リサ、俺が・・・」


「ダメ!! 私よりユウマの方がずっと強いもん!! 私が・・・私が囮になった方がいいじゃん!!ユウマこそ、なんで私を助けるの? 私がやられてる隙に攻撃したらいいじゃん!!」


ユウマはリサをそっと地面に立たせた。


     □


リサの戦いは全力全開。まさに『死ぬ気で』戦っている。リサの気持ちは目一杯ユウマに届いている。だからユウマは自分の額をリサの額にくっつけた。


「リサ・・・。自分のせいって思ってるだろ・・・。」


反抗的な目、子供っぽい目、そして泣き出しそうな瞳。


「俺もだよ・・・俺はたくさん失敗した。っていうか何も考えてなかった。」


ユウマは顔を離し、少し恥ずかしそうにしながら言った。


「だから俺がお前を守る。リサにばかり考えさせて、ごめん・・・」


「ごめん」の時にはユウマは走り出していた。カーズは絶対に太陽なんかじゃあない。何か弱点がある筈だ。そうじゃなきゃ、こんな戦い意味がなさすぎる。


「お前、天下のリサ様に何してくれてんだぁぁぁ!!」


二本だけじゃあ体が耐えられない。だからユウマは四足獣が如く、全ての筋肉をブチギレさせながら、リサにあんな顔をさせたカーズにブチギレて特攻した。


馬力換算するなら15万馬力以上は出ているだろう。リサが光ならユウマは暗闇。真っ黒な一直線の闇がカーズへと突き進む。体を猫科動物のようにしならせながら、地面を掻いて掻いて掻きまくる。猪突猛進。爆発など気にしない。死ぬ気で?守るために?そんなことは一切考えていない。ぶん殴るために決まっている。


カーズはそれでも余裕綽々に迎え撃とうとしている。どれほど神がすごいのか、人間どもよひれ伏せと言わんばかりに仁王立ちで待ち構える。


ユウマはまずはバスタードソード、言わずと知れた鉄の塊をカーズに向けて振り回した。音速を超えたそれは鈍い音がしてヒビが入った。カーズの魔法の圧に負けたのだろう。そしてそのままカーズは白けた顔で鉄塊を受けとめた。


「痒い程度だなー。」


「だろうなー!!」


ユウマは鉄塊を投げただけだ。ユウマ自身はカーズの目の前で両手、両足を地面にくっつけて構えている。そして右の拳をカーズに叩きつけた。


だが叩きつけた筈の拳はすでに爆破で粉々になり、煙と共に失くなっていた。


「今度は痒くも・・・」


「ちくっとはするだろうがよ。」


ユウマは右手も捨てていた。カーズは右頬に確かに痛みを感じた。そしてその正体に気がつくまでしばらく時間がかかった。雑に千切られたユウマの右腕の橈骨と尺骨が今度こそ自分の頬に届いていたのだ。頭を疑うような戦い方だ。そしてそのしつこさにイラついたのか、カーズはユウマの体ごと爆発させようと念じた。だがユウマはそれを死の匂いを感じて体を翻して交わしていた。さらに爆風を活かしてユウマは後方へ逃れる。その瞬間、カーズは右頬と右耳に痛みが走った。してやられたと感じたカーズはその時、自身の後ろから気味の悪い音を聞いた。ぐちゃぐちゃという耳障りな咀嚼音、その音にカーズは振り返って、今日初めて汗を一粒だけ垂らした。


「なんだよ。食えるじゃねぇか。どこが太陽だ。なぁリサ!!」


「本当ね。でも耳なんて私は食べたくないけどね。」


すでに詠唱を済ませていたのか、リサはカーズの握っていた鉄塊に向けて落雷を起こしていた。小蝿にしてやられた。カーズをブチギレさせるには十分な条件だっただろう。巨大な爆発を起こすために全身から蒸気が噴出する。


     □


「たかが人間如きが、うざったい!!」


それにしても、どれだけ鍛えれば人間がああも身軽に動けるのか。あれはもはや眷属の域を超えている。後ろにいた筈の男がもう目の前の女性を庇って、吹き飛んでいる。なるほど、出来損ない状態だったとはいえ、神が二体もやられるわけだ。


「ふん。どうせ汚い手を使ったのだろうとは思うが、お前は悪魔に魂でも売ったのか?」


勿論ルーネリアの眷属というのは見ただけで分かる。別にそのことを聞いてるわけではない。戦い方が人間のものではない。あいつこそモンスターと呼んでも良いだろう。


「はぁ、お前の方が売ってんじゃん。馬鹿だろ。」


「えぇ。バカね。」


先ほどまでと別人のように二人が動き始める。なるほど、バルトロがあの二人を高く買っているわけだ。特に少年の方だが。魔法をほぼ無制限に使えるだろう少女とほぼ不死身の肉弾少年。真逆の二人の動きはまさに芸術だ。


「なるほど、確かに。俺じゃなきゃお前らが勝ってたかもなぁ。」


カーズはあくまで人間の形に拘っていた。そもそも戦う相手が人間だと思っていたからだ。今もチクチクと攻撃をしてくるが、どれも内部には刺さらない。至らない。全く足りない。神というのを見誤っていることはないだろう。それほど称賛できる戦いだ。だったら失礼をしているのは自分の方だ。


「お前たちを人間だと思うのはもうやめだ。」


     □


 カーズはそう言って少しだけ詫びるように姿勢を正した。ユウマからすれば今までの二人の神のように本気を出させる前に勝ちたかったのだが、どうもそうは言っていられないらしい。カーズの体が最初に見た時よりも大きい気がする。いや五倍以上大きく感じるのだから、それは大きくなっているのだ。人間だと思うのをやめたってことは、神とのバトルモードに移行するという意味だろう。


失敗したとか誤算とかそういうレベルではない。そもそも戦いとして成立していないのだ。神の中で最強なのだから、リサが神の力を借りて放つ魔法なんて、効果がないに決まっている。それに人間の体じゃなくなっているなら、自分が唯一できる肉弾戦さえ効果があるか分からない。


「ノーマン、二人を連れととにかく逃げろぉぉぉ!! 」


思考よりも声が先に出た。死の匂いレベルではない。『死』そのものが目の前に存在する。だからユウマは向かうべきではない方向に拳を突き出した。


「ユウマ!!」


「リサ、ごめん・・・」


なるべく攻撃の影になるように、自分が地面を抉った穴にそっとリサを寝かせた。これくらいの時間はサービスしてくれよと思いながら堂々と行動したが、どうやら許されたらしい。


「さて、カーズ。男と男の勝負だ。俺も本気で行くぞ。」


全くもって出鱈目だ。相手を満足させてお帰り願おう。そしてできれば自分も死んだフリでもしておこう。そう思った。本気で卑怯な男になる予定だ。だけれどどうやらそうではないらしい。


なぜだろうか。これはルーネリアの思考? それが逆流してくる。今から起きること、それがなんとなく分かってしまう。ダメだ。このままじゃリサまでも・・・。


「神の本気を見せてやろう・・・」


何を言っているんだ、こいつは。それはこれから良い戦いになる時にいうセリフだろう。その攻撃はこの辺りを全て吹き飛ばすものだ。ルーネリアの思考のせいだろうか、ユウマの脳裏に電子顕微鏡?いやそれともCG再現映像のような形で水素と水素が結合する瞬間が映し出される。


「こいつは本当に太陽・・・」


かっこよくリサを守るつもりだった。守るんじゃない。助けたい。どうか神様、リサの前に一枚だけ肉壁を置きますから、彼女だけは助けてください・・・


その瞬間、ユウマの視界は真っ白になった。


     □


小さな小さな粒を合体させたらどうなるか。そんな話をしたことがある。カーズは嬉しそうに自分の魔法でそれをやってみせた。すると驚くことに巨大な花火に変わったのだ。ルーネリアはそれを見て、満足そうに拍手したのを覚えている。


けれど、けれど今はダメ。それをすればユウマは・・・。けれど決まりは決まりだ身を挺してはいけない。この絶対防壁を利用してはならない。こんなことなら器に体を移さなければよかった。こんな思いをしなくても済むのだから。クリスの気持ちが心が自分を狂わせる。


違う。私も姉と同じ気持ちなのだ。姉と同じ男性を愛してしまった。理由なんて分からない。そんなことどんなルールブックにも載っていない。だから彼を守りたい。彼を守る方法、それは眷属ではなく、本当の縁で結ばれること。そうすれば眷属ではなく彼は神になれる。ただあの男のようになってしまわないだろうか。それにユウマは自分を受け入れてくれるだろうか。


ルーネリアはユウマだった肉塊の側に歩いていった。彼を救いたいからではない。彼を愛してしまったから。一方的な愛だとは知っている。そして今から自分がやろうとしていることは、彼への裏切り、姉への裏切りだ。それでも今伝えなければ、もう二度と自分の気持ちは伝えられなくなる。


「ユウマ、私と結ばれれば、縁が出来れば貴方は死なない。理屈なんかない。神のすることに理屈はいらない。」


聞こえているのかは、分からない。だから耳元でルーネリアは囁いた。


「君を愛している。」


     □


微かに耳元で囁かれる少女の声。死ぬ直前まで聴覚が残っているというのはどうやら本当らしい。視界は真っ暗で・・・、いや目玉も弾け飛んでしまっているのかもしれない。


最後に視界に映ったのは、自分の両腕と鳩尾から下が全部弾け飛んだ瞬間だった。


ユウマの意識が薄れゆく中、ユウマの大脳皮質には死の間際の状況だけが駆け巡っていた。もっとたくさん楽しい走馬灯を見させてくれれば良いのに。なぜ、そんな死の間際の映像をダイジェストした、惨たらしい走馬灯なのだろうか。もっと気持ちよく死なせてくれれば良いのに。


そういえばリサはどうなったのだろう。かっこよく助ける予定だった。カーズを追っ払って目覚めた時に、いいとこ取りしてって殴られるまでを想定していたってのに。身を挺して庇ったのはかっこよかった? そんなことはない。ただの肉壁、いやただの紙切れか。まさか目の前で核融合を起こされるとは思ってもみなかった。本当に太陽かよ、あいつは。それにあんなに衝撃波ってのがやばいとは聞いていない。


それでもせめてリサの美しい顔、体だけは無事であって欲しい。たとえ命は刈り取られていたとしても、その神々しい体を無事に家まで送り届けて欲しい。もちろんこの戦いが・・・カーズが戦いに飽きて、そしてバルトロの実験も不発?いや成功に終わってくれればの話だが。そうでなければ本国さえ、いやこの世界さえ怪しいものだ。人類滅亡シナリオ真っ只中ではないか。


なにが勇者だ。なにが英雄だ。何が絶対に仲間を見捨てない隊長だ。結局ただの犬死。結局ただの何のとりえもない人間。所詮人間が本当の神に敵う筈もなかった。


「ねぇ・・・」


肩を揺さぶられる。


せっかくいい感じに麻痺して気持ちよくなっていたのに、肩に刺激をうけたせいで失ったはずの腕や、下半身までもが感覚を取り戻す。当然戻ってきたのは強烈な痛みなのだが。


『なんとかエンドルフィンってのは出ないのか? もっと気持ちよく眠らせてくれないのか』


せいいっぱいの愚痴という名の魔法詠唱を心の中で吐き出す。横隔膜も吹っ飛んでいるのか、声を出すどころか、呼吸をすることもできない。この状態で即死していないのを誰か褒めて欲しい。


そして肩を揺さぶられた刺激のせいなのか、おかげなのか、戻ってきた痛みに反応してギリギリ失わずに済んだ心臓が一度だけ脈を打つ。その最後の心臓の悪あがきによって、血中に残った最後の酸素が脳に送られる。


「お願い・・・。聞いて・・・。嘘でもいい。」


少女の声、この声の主は知っている。見えなくともわかる。クリスティーナ、ルーネリア、どちらでもいいか。


「嘘でもいいから・・・私を・・・」


そういえば、この子は生き残ることができたのか。それはそうだ。審判役なのだ。彼女はそもそも死ぬことはない。勿論、彼女の魔法『絶対防壁』が破られ、彼女の死ぬ間際の言葉を聞かされているだけかもしれない。できることならちゃんと話を聞きたいところだが、どうやら聴覚までも機能しなくなりかけている。


「お願い、私を愛してると言って」


確かにそう聞こえた。ほとんど機能しなくなった聴覚が最後に拾った言葉。『言って』と言われても、肺に空気はほとんど残っていない。それに肝心の横隔膜は弾け飛んでいて、喉に空気を送り出すこともできない。


少女はそのことを分かって言っているのか、それとも・・・


ユウマは暗闇と寒さの中で、口だけを動かした。声にならない声。ただ口の形だけで紡いだ言葉。


「俺はやっぱり・・・リサを愛している・・・」


ルーネリアのことも好きだ。それでもどうしてもリサを放っておけないんだ。だってあの子は・・・そう・・・あの子こそ・・・。


     □


 ユウマは結局そのまま動かなくなった。結局私では無理だった。こんなに好きなのに、こんなに愛しているのに。どうして・・・。こんな卑怯な手を使ったのに彼は分かってくれなかったのか。そうではないとは分かっている。結局・・・こうなることは予想できた。


器のみでは判断できない。器の形を知らないから。でもそれだけじゃない。そもそもこんな条件を用意していたなんて・・・。


「お姉ちゃんのバカ・・・」


ルーネリアは眩く光る少女を睨め付けながらそう言った。


「やっと、やっと、やっと聞けた!!ルーネリア、聞いた?今の言葉聞いた?」


金色の少女、いや金色の神は立ち上がった。そしてルーネリアのいじけた顔を指でぷにぷにと触り、頭を撫でた。


「私とアダム・・・いや、ユウマは今、縁で結ばれた。そして私たちは姉妹だもん。だからー」


そこから先はどうしてもルーネリア自身の口から言いたかった。だから姉であるアルテナスの口を塞いだ。


「神なんてなんでもあり。だから間接的にユウマも神になる。ってか最初から大体気づいてたんだからね。それにユウマは私の眷属なんだから、お姉ちゃんだけのものじゃないから!!」


「はぁ? 私のものに決まってるでしょ?ね、ユウマ!!」


そのアルテナスの蹴りでユウマはこれが走馬灯ではないことを悟った。いや、神ってやばい・・・。

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