第3話 プロローグ3


※ この話数から、主人公の名前を「カイル」から「ライル」に変更させてください。てきとうに名付けたせいで非常に呼びづらくなってしまいました……。

すみません_(._.)_ あらすじ等々も後から直します。


本編↓



勇者も魔王もいない世界。

しかし、冒険者は存在するらしい。


曲がりなりにも異世界に夢をはせていた俺にとって、

それはこれ以上ない吉報だった。



それからの俺の行動は早かった。

本来、10歳くらいで発現する予定だった能力表示が見えるようになったこと。

これは、俺と同世代に生まれた奴らとの差をつける上でも、とても大きな武器になる。


たとえば、自分が定めたひとつの能力を、優先的に伸ばすことができる。


他の子どもたちが、手探りで自分の長所や得意なことを模索していくなかで、俺だけは、自分に見合った長所を、この2歳という取り分け若い時期から伸ばすことができるというわけだ。


……よくよく考えてみればヤバいな。

だって2歳って、まだ幼児期だろ? 

なんか、聞いた話によると『イヤイヤ期』? とかで、元来の2歳って言ったら、自我が芽生え始める時期らしくて、魔の2歳児とかとも呼ばれるらしい。


そんなヤバい頃から、自分のやりたいことを見つけて、伸ばしていけるんだ。


アドバンテージにならない、わけがない。


「さあて、何を伸ばそうかな」


俺は窓から外を眺めながら、今後自分が伸ばすべき長所について考えていた。


――お母さんのように、魔法適正マジックポテンシャルを高めようか。


魔法を使えるようになれば、この世界では、さまざまな道が開けてくるそうだ。

神官、回復術士ヒーラー、魔法使い、魔導士、魔術師……等々。


特に魔法使いや魔術師は、使える魔法の種類によって階位が決まっているらしく、階位が上に行くにつれて、もらえる報酬や仕事が格段に違うそうだ。

ちなみにお母さんの回復術士には、そういうしがらみはない。

……でも、たとえ冒険者になることができて、回復術士としてパーティの補佐役をしたとしても――俺の柄じゃないんだよなあ。もっと前線で、バリバリ戦いたい。


バレーをしているときは、セッターだった。


確かに自分で切り込む役柄じゃない。

でも、ここでは違うことがしてみたいんだ。

自分で点が取れるようになってみたいんだ。

魔法を扱うのもカッコいいが、とりあえずは保留だな。


――剣を、扱えるようになるのも悪くない。


実際お父さんは剣技を使えて、それを利用して木こりをしている。


冒険者といったら、やはり近接で戦う武器がそれっぽいんじゃないだろうか。

絵本やお母さんから仕入れた情報によると、やはり、魔獣までとは行かずとも――冒険の道中に、パーティの行く手を阻むモンスターは存在するらしく、冒険者は、それらを迎撃する程度の力を備えていなければいけないらしい。


……しかし、それには、剣を握るだけの握力がいる。

いかに中身が高校生の2歳児といっても、体力に付随する筋力がないと、剣は振るえないだろう。


じゃあ、剣を振れるまでの筋力が付くまで待つか? 

いや、めんどくさいな。俺はこう見えても……というか、普通にせっかちなのだ。

転生して赤ちゃん化を通しても、自分の性格は変わらないらしい。


しかし、そうなると八方ふさがりだ。


けっきょく筋力がないと始まらないことを、今から始めることはできない。


俺は3日三晩考え続けた。


トイレに入りながら、飯を食べながら、絵本を読んでもらいながら、運動をしながら――大半の2歳児が一人ではできないようなことをこなしながら、考えていた。


そして、ついに閃いた!


足りないものは、補えばいい。

能力表示の伸びしろを使って。



能力表示スキルランクとは、その名の通り、自分や他人の能力の良し悪しを示すパラメーターのようなものだ。レベル、適正の高さ、残りの体力――等々。

適正ポテンシャルが低いと、見えるゲージは寒色になり。逆に適正が高いと、暖色になっていくらしい。


お母さんのゲージの色は、明るい緑だった。

本人曰く、まだまだ半人前なのだそうだ。


そして、ここが肝となるのだが――能力表示の優秀さは、己の持った『スキル』に比例する、ということだ。


たとえば、もし俺が一定の筋力のある、高校生のままの体を持っていたとして。


剣技のスキルを限界まで特化させると、『スキルレベル』がアップする。

そのレベルに応じて、さまざまな剣技が使えるようになるという仕組みだ。

それが適正ポテンシャルになっていく。


スキルレベルの限界値は、それぞれの段階で決まっていて、一定の区切りを限界突破して、初めてレベルが上がるらしい。

だから、たった『レベル1』を上げるためにも、相応の練習が必要ということになる。


剣技で言えば、『レベル20』にも達すれば、軍に入隊できるレベルらしい。


それに対し、俺の今の剣技のレベルは、もちろんゼロだ。

前提となる筋力もないため、レベルを伸ばすのは難しい。


ならば、俺が今すべきことは……そう。


――成長の適正ポテンシャルを上げて、スキルとして習得してしまおう。


つまり、俺の『成長』を『適正』としてカテゴライズすることによって、早めに成長し、剣を握るだけの握力を手に入れることができる――ということである。

そこには多くの利点がある。

剣を握れる握力さえあれば、剣技を習得するための練習ができるし。

なにより、2歳児の今より圧倒的に多くのことができるようになる。

たとえば、そう。

学校に行くことができる――とかだな。


お父さんの話によると、冒険者になるためにはまず、冒険者の養成所のような場所で学ぶ必要があるらしく……。そこでの履修を終えないと、冒険者として認められないとか。


どれだけ個々で戦力を高めたところで、認められなければ、冒険者にはなれない。


一定の年齢を超えなければ、剣を持つことも、学校に通うこともできない。


ならばやるべきことは一つ。

早めに成長して、もとの高校生のような体躯を手に入れること!

そして養成所に通い、冒険者としての資質を認めてもらうこと!


やることは決まった。


俺は能力表示で自分の成長レベルを見て、

ニヤリと頬を歪ませる。


さあ、赤子から始める異世界生活のスタートだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る