第544話 王と側近

「おい!モーゼンじゃないか!心配した…」


村を囲んでいた柵のような物の前で門番をしていたであろう魔人が先頭のモーゼンを見つけて走ってきた。だが、俺達を見つけて言葉はしりすぼみになって行った。


「悪魔王様!?」


その男はモーゼンと俺達を交互に見ていたが、途中から俺の方をガン見してそう言った。


「そういうわけでお客様だ。王、もしくは側近以上を呼んでくれないか?」


「あ、ああ!」


話しかけた男は足早に村へと戻っていった。普通はそういうわけとはどんなわけかが気になると思うのだが、混乱してそれどころではなかったのか?


「少しこの場で待っててくれ」


「わかった」


俺は待ちながら村を観察した。村は2m程度の柵で囲んでいて、その内側にさらに柵がある感じだ。柵は木と石っぽいのでできているので、一見脆そうに見えるが、魔法がかけられている。内側は雷魔法っぽいので、外側のには俺がパッと見ただけで火、風、土、雷と様々な魔法がかけられている。触れたらどうなるんだろうか?


また、門番や騒ぎを聞き付けたのか門番付近に来ている者達の装備はモーゼンらと同じく皮装備のようだった。稀にフルプレートの装備の者もいる感じだ。基本的に逃げることも考えて軽装にでもしているのか?


「おっ」


なんてことを考えていたら、人混みが割れて、5人が姿を現し、村から出て俺達の前まで歩いてきた。それを見てモーゼン達は頭を軽く下げた。、


「本当に悪魔王様と契約してるようじゃな」


5人の中で真ん中に立っている者がそう言った。その女性は165cmはあるであろう女性にしては長身で、スタイルもそれに見合ってボンキュッボンといった感じの豊満な身体をしている。背には身長程あるであろう太刀を携えている。しかし、特徴的なのは頭の上にちょこんと生えている2本の角だろう。


「余はここで王のブリジアじゃ。横にいるものは側近で右からドレリア、アダマー。左はアディとウィロンじゃ」


この真ん中に居る王の名はブリジアというそうだ。また、王の左右に居るものは女で、そのまた隣の1番外側に居るものは男だ。その4人も普通の魔人には無いであろう特徴があるが、それはまたおいおいだ。


「よくここまで来たのじゃ!歓迎するから村の中に入るのじゃ!」


王はそう言うと、側近を引連れて村の方へと歩いていった。


「シャナ」


「歓迎してくれるみたいだね」


シャナに声をかけてさっきの言葉の本心を聞いた。言葉に嘘は無いようなので俺達は村へと歩いていった。

ちなみに、そう確認したには理由がある。まず、側近1人1人が俺と同じくらいの魔力を所持していたからだ。また、ウィロンはソフィ並みの魔力だった。さらに、王に至ってはソフィよりも断然多かった。下手に罠に嵌められたら逃げることすら敵わない気がしたので、失礼ではあると思うが、シャナに確認したのだ。


「おっと、下手に柵に触れぬようにじゃよ」


俺達が村に入ろうとした時に王はそう忠告した。その忠告を守って柵には誰も触れなかった。触れたらどうなるか少し気になったけど。


「ここが余達の村じゃ!案内したいのはやまやまなんじゃが、まずは余の住まいに来てくれんか?」


「わかったよ」


俺達は最初に王の家に案内されることになった。人間を見るのが珍しいのか、村で畑作業をしていた者達は俺達の方をガン見してくる。ただ、そこに悪意などはなく、単に気になるっぽいな。


「遠慮なく上がるのじゃ」


王の家は村で見た木造の家の3倍くらい大きかった。ただ、村の家と同じく2階は無さそうだ。村の家も木造とはいえ、頑丈そうだったが、この家は他の家よりも頑丈そうに見える。使っている木が違うのだろうか?


「さて、座るのじゃ」


そう言われ、俺達は円卓に用意されていた椅子に座った。


「さて、まずはモーゼンよ。説明してくれるか?」


「はっ!」


モーゼンは俺達に会った時の過程やここまでやってくるまでにあったことなどを説明した。


「はあ…あの娘は強いのは確かなんじゃがな…」


シャーニが俺と戦った経緯を話した時は王と側近達はみんなで呆れたような顔をしていた。


「シャーニの教育はしっかりと行います」


「早死しないようにしてほしいのじゃ」


「はっ!」


確かに猪突猛進気味な性格だとどころかで取り返しのミスをして死ぬかもしれない。特に深林の奥の方のここではな。


「それで、魔物の素材を戦うことと対価にくれるというのは本当じゃな?」


「そうだよ」


俺がそう答えると、王はニヤッと笑って勢いよく立ち上がった。


「なら今からやるのじゃ!ちょうど側近と余で5人で人数は同じじゃ。5対5にしてそれぞれで戦うのは王である余を安売りしてちとダメじゃな…」


そう言って王は少し悩んだが、すぐに答えを出したようで意気揚々と話し始めた。


「そうじゃ!勝ち抜きにしよう!側近達を全て倒せたら余が直々に相手をしてやるのじゃ!」


こうして、来てそうそうに側近と王との勝ち抜きで戦うことになった。いや、話し終わるの早くないか?もっと何で来たのかとか、これからどうするかとか聞かれると思ったんだけどな…。


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