第488話 今後
「ふぅ…」
俺はグラデンを部屋に寝かせると、再びみんなのいる試作場へと戻ってきた。
「新しい武器良かったですね」
「ああ」
試作場で剣をぼーっと眺めていると、ソフィから話しかけられた。
「武器は完成しましたが、次の予定はどうしましょうか?」
「あ、そうだな…」
ここには武器と防具を作りにやってきた。それが完成したので、もう目的は達成された。そうなると、次の予定を決めなければならない。
「まあ、とりあえず王都に帰った方がいいよね?」
「予定期間はかなり過ぎてますからね」
元々なかったドワーフ国に訪れる予定を入れたので、本来王都に帰る予定の日からだいぶズレている。何をするにしても1度帰った方がいいだろう。
「なら俺達も王都に行こうか」
俺とソフィが話しているところに、シャナ、ベクア、エリーラ、キャリナがやってきて、ベクアがそう言った。
「え?大丈夫なの?」
「俺とキャリナは問題ないぞ。ゼロス達に着いていくことで強くなれるのならいくらでも着いて行けって言われたぜ。まあ、何か有事の際には戻らねぇといけないがな」
ベクアとキャリナはドワーフ国に行くことへの許可を取る時にそう言われたそうだ。
「私はいつも通り着いていくわよ」
そして、エリーラは前から聞いていた通り、俺が行く所について行く分には問題ないらしい。
「……」
「まあ、シャナは問題ないよな」
じーっと俺の方を見てくるシャナの方を向いて俺はそう言った。シャナがリンガリア王国の王都に帰るのに問題があるはずがない。
「帰るのはグラデンが起きてからになるけどな」
眠ったままのグラデンを無視して帰るのはさすがに薄情だ。起きてからちゃんと礼は言った方がいいだろう。それに、もしかすると、グラデンも着いていきたいと言うかもしれない。まあ、鍛冶場が無い環境に自ら行くとは思わないけど。もし、着いて行きたいと言えば俺は喜んで賛成するつもりだ。
「王都に帰った次はどうしますか?」
「……魔人に会いに行くか」
魔人については後回しにしてきたが、それもそろそろ限界だ。レベル上げのついでに1度くらいは行った方がいいだろう。
「それなら先に決めなければならないことがあります。もし、魔人が私達に敵対するような行動を取ってきたらどうしますか?」
ソフィはオブラートに包んでいるが、言いたいことは魔人が問答無用で殺しに来たらどうしますか?ということだろう。
全員が俺の意見を求めているのか、俺の方をじっと見つめてくる。俺は少し悩んでから答えを出した。
「できるだけ穏便に済ませたいから、そうなったとしても大きな怪我はさせないようにして欲しい。
ただ、そうした結果、俺達の誰かが危なくなりそうなら遠慮はしなくていい。全力で相手をしていい。最悪の場合は逃げることも考えておこう」
俺が言ったことをオブラートに包まずに簡潔にまとめると、魔人が攻撃してきても模擬戦のように相手して欲しい。だけど、もし魔人が殺す気で来ていて、手加減している余裕が無い場合は殺してもいいということだ。
「わかりました」
ソフィが俺の考えに同調すると、他のみんなも頷いていた。俺の考えに反対はないようだ。
「みんなは魔人が敵対してくると思う?」
これからの話がまとまったところでシャナがみんなにそう質問した。
「俺もみんなの意見が聞きたいな」
シャナが質問した後はみんなが俺の方を向いてきた。だから俺は先にみんなの意見を求めた。一応このグループのリーダーなので、1番に意見が求められることが多い。だけど、たまにはみんなの意見から聞きたい。今回の話は緊急性も無いし、別にいいだろう。
「私は敵対してくると思います」
「私もそう思うわ」
まず、ソフィとエリーナがそう答えた。2人は敵対すると思ってるそうだ。
「俺は敵対してこないと思うな」
「私も」
「あ、私もです」
そして、ベクア、シャナ、キャリナは敵対してこないと思ってるそうだ。
ここでまた全員の視線が俺の方に向いた。
「俺は敵対…まではされないと思うけど、歓迎はされないと思うな」
俺がそう言っても、まだみんなは俺を見つめたままだ。続きを話せということだろう。
「まず、魔人の存在はイムから聞いたことだから面倒事なのは確実だと思う。だけど、イムが自分の都合を重視して俺達に害意だけを持って教えたとも思えない。だからそんな感じで思ってる」
魔人に会いにいくということ自体がイムの提案だから、まず面倒事で間違いない。ただ、常にイムの行動は理解不明だったが、俺達を殺すための行動では無いと思う。イムが本気で俺達を殺す気なら他人任せの間接的ではなく、直接自ら潰しに来るだろう。
「つまり、今のうちに少しでも鍛えて強くなっとけってことだな」
「違うけど、あながち間違えじゃないか」
魔人達がどうなるか分からないが、強くなっておいて損は無い。
「よし、ゼロス!戦うぞ」
「はいはい」
そして、その後はベクアやみんなと戦って少しでも強くなるために特訓を始めた。
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