第481話 次のメニュー
「いてて……」
俺はすぐにエンチャントと精霊化を全て解除して横になった。精霊界で精霊化してたとしても、神雷トリプルエンチャントは少しきつかったようで、体の節々が鈍く痛い。
「アーの力を囮に使って別の力で仕留めたのは少し気に食わないけど、作戦的にはナイスだったよ。初めてでアーをこんなに使いこなせるとは思わなかった」
「普段からユグとジールのおかげで精霊降臨には慣れてる方だし、アーテルが使いやすいように協力的だったからだよ」
アーテルが嫌と思ったらいつでも精霊降臨は解除できただろうし、精霊降臨中だろうと影を操らせないようにもできたはずだ。それなのに、アーテルは俺のやりたいようにできるように全面的に協力してくれた。
「やりたいことはちゃんと伝わったからね。ティヤには劣るけど、アーとゼーも相性はいいみたいだね」
「それは良かったよ」
相性が良かったと言われるのは普通に嬉しい。相性が悪いと拒絶されたら普通に悲しいからな。
ちなみに、俺の呼び名は君からゼーに変わった。少しは認めてもらえたのかな?
「ゼロくん、おめでとう」
「よくやったな」
「2人もありがとう」
2人の協力がなかったら絶対にディーネを退かすことは無理だった。結局、精霊化状態で精霊魔法を使うことはできなかったけど。
「まさかこんなに早く退かされるとは思ってなかったよ〜」
「これでエリーラに煽られなくて済むかな」
ディーネに手も足も出ないで2泊3日が終わったら、帰った時に絶対にエリーラに煽られていた。その心配がほとんど無くなったから良かった。
「寝なくても大丈夫だとは思うけど、疲れは溜まってるし、切りもいいから今のうちに寝といたら?明日からも大変だよ?」
「そうだな。お言葉に甘えて寝させてもらうよ」
ユグの言う通り、不眠不休は寝ずにも行動できるようになるだけで、疲れが溜まらない訳ではない。疲れを早く癒すためには睡眠が1番だ。俺はこのまま地面に横になったまま寝た。
「……よしっ!やるか!」
俺が飛び起きて、すぐに精霊化の特訓を始めることにした。ここに居られる時間は限られているしな。
ちなみに、精霊界は魔力が豊富にあることで食事などは必要ないようだ。昨日あれだけ動き回ったのに、もうすっかり回復しているのも魔力が豊富にあるからだろうだ。
「次は私にノーガードで一撃食らわせたらクリアだよ〜。今度は私も動くからね〜」
「お、おう…」
前とは比較にならないほど難易度はかなり上がっている。
「まあ、この課題は今回の訪問だけでクリアできるとは思ってないよ〜。何日も挑戦して成功すればいいよ〜」
「わかった」
どうやら、これは3日程度で達成することが不可能な課題のようだ。だが、無理だと言われると、何とか達成してやろうとやる気になる。
「ゼーも起きたことだし、アーはティヤのところに帰るよ」
「そっか。ありがとうね。助かったよ」
「アーも楽しかったからいいよ。また夜に来れたらくるよ。またね」
「またね」
こうして、アーテルは居なくなった。正直、居てくれた方が助かりはしたが、優先順位が高いのは契約者の方だ。そっちを優先するべきだ。
「目標は精霊化でも精霊魔法を使うことだな」
自分の中の目標を再確認してから、俺はユグとジールを精霊化した。
「準備はいいですね〜」
「ああ」
精霊化に加えて、神雷ダブルエンチャントと雷電ダブルハーフエンチャントと神雷纏を行うと、ディーネはそう確認してきた。
「行きますよ〜」
ディーネはそう言うと、俺の方へとゆっくりと歩き出した。歩くとは余裕だなっと一瞬思ったが、実際に余裕なのだろう。
「っ!?」
なんて考えていると、危機高速感知が反応した。俺は慌てて仰け反った。すると、地面から前から首を狙って斜めに水の槍が飛び出してきた。魔力高速感知には何も反応してなかったぞ!
「やっ…」
ここで俺は失敗に気がついた。槍を回避するのに集中したせいで、ディーネのことを見逃した。俯瞰の目で見てもどこにも居ない。
「雷縮!」
再び危機高速感知が反応したので、急いで水の槍から距離をとると、俺のいた場所には地面から生えていた槍を手に持ったディーネが居た。
「ディーネも転移できるのかよ…」
ディーネは突如として現れたので、転移以外に有り得ないと思ってしまう。こんな2手目に使ってきたので、転移に時間制限などは無いだろう。
「昨日ディーネを退かしたのは間違いだったかもな…」
明らかに今の俺のレベルにあっていない気がする。これは油断すると致命傷になりかねないぞ…。
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