第436話 教会へ

「じゃあ、出発するぞ!」


ベクアのその声と共に竜車は進み出した。

リヴァイアサン討伐から2日経ち、俺達は教会がある町を目指して竜車を走らせている。ちなみに、昨日の俺はソフィの見張りの中、ほぼ一日中横になっていただけだ。少しくらい運動したかった…。



「出発してすぐですまんが、少し寝させてくれ」


「いいぞ。お疲れだもんな」


ベクアは竜車が進み出して、すぐにそう一言断って眠った。ベクアは今日までにリヴァイアサン達の素材の処理と分配や、応援部隊の首都への帰還をウカクと協力して終わらせていた。

本当はもっとゆっくりやれる仕事だったのだが、どうしても俺達に一緒に教会に行くために昨日徹夜で終わらせていた。




「着きましたよ」


竜車は3時間ほどで教会のある町に到着した。

ベクアを起こし、俺達は早速教会に向かった。



「でも、ゼロスがそんな信者のように教会に訪れるのは意外だな」


「そうか?」


そういえば、俺はデュラとの試合の後にも教会を訪れていたな。傍から見ると、俺は熱心に教会に通っている信者になるのか。

俺があいつの信者だと考えると、少し悪寒がしてくる。あれを信仰するなんて俺にはありえない。



「広いだろ?土地が余ってるから首都よりも大きく作れるんだよ」


「なるほどな」


俺がやってきた教会は今までの最大のリンガリア王国の王都にある教会よりも大きいかもしれないと思うほどに大きかった。

俺達は献金をしてから教会の中に入って行った。



(俺を呼んでくれ)


そして、俺は神の像の前で手を組んで心の中で神にそう願った。




「いらっしゃい!運良くギリギリでリヴァイアサンに勝ててよかったね!そろそろ来る頃だろうと思ったよ!」


その声が聞こえて目を開けると、俺は白いだけで何も無い場所にいた。そして、目の前にはあの神がいた。

俺がリヴァイアサンに1人で勝てたのは確かに運が良かったからというのを自覚しているが、面と向かってこいつに言われると腹が立ってくる。



「早速本題だが、称号のセット数を増やして欲しい」


「緊急じゃないんだから、そんないきなり本題に入らなくてもいいんじゃない?」


俺は神に返答をせずにじっと見つめ続けた。数秒目を合わせていると、根負けしたのか神が話し始めた。


「用を済ませるまで話を聞かないのはどうかと思うよ?そこは直した方がいいと思うよ?次にした時は私から話すからね?

とりあえず、称号のセット数は増やしておいたよ。それなりに増やしたせいもあるけど、次に増やせるのは進化した時になるからね。セット数が足りなくなってくる前に早めのレベル上げをして進化することをおすすめするよ」


「ありがとう」


神はやれやれといった感じでそう言った。どれくらい増えたのかはまだ分からないが、早く進化できるようにちょくちょくレベル上げはしていかないとな。



「それで、もう1つ聞きたいことがあるんだよね?」


「え?いいのか?」


「今回は先に君の用事を済ませてあげるよ」


この神にしては気前が良く、もう1つの用事も先に済ませてくれるようだ。



「俺がソフィや他の人と比べてレベルが上がらないのは種族を混ぜたからなのか?」


「そう解釈してもらっても構わないけど、正確に言うなら強力な種族だからかな。強い種族になればなるほどレベルは上がりにくくなるんだ。

その点、君の雷獣魔精人王は僕特製のおすすめセットで唯一無二の種族なんだから他とは比べ物にならないくらい強い種族の部類に入るよ。流石に混ぜた7つの種族分もレベルが上がりにくくなることは無いけど、他と比べるとかなり上がりにくいかな?」


「なるほど…」


そう言われると、レベルがなかなか上がらないのに文句が言えなくなる。雷獣魔精人王は雷だけでなく、獣、悪魔、精霊にも補正がかかっているからかなり助かっている。だから今となってはあのスキルレベルが強制的に1になったのと当分の間レベルが上がらなくなっていたのを考慮しても満足している。だからこの程度で雷獣魔精人王にならなければ…とは思わない。



「私がおすすめした種族が気に入ってくれてるようで嬉しいよ」


実際に気に入ってはいるが、それをおすすめされたこの神に言われると納得したくなくなってくる。



「君の話は聞き終えたし、次は私の話を聞いてもらうからね」


俺が神に所へやってきた用事が終わったので、今度は神からの話の番になった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る