第432話 別視点
〜~~ゼロスがリヴァイアサンを倒す少し前~~~
◆◇◆◇◆◇◆
ソフィア視点
「魔法解除!」
「わっ!」
イムの足元にあった魔法を解除すると、イムは海に一直線に落ちて行った。私はその隙にお兄ちゃんの元へ行こうとした。
「なんちゃって」
しかし、イムが背中から巨大な翼を出して飛んで向かってきた。
「何かあったら僕が守るから、頑張ってるダーリンの邪魔はするなよ」
「ちっ…」
イムは私にそう言いながら、殴りかかってきた。私はそれをメイスで防いだ。
「私がダーリンを殺そうとしてないってことくらいわかるでしょ?だって殺す気なら私が転移してリヴァイアサンと挟み撃ちすればいいだけだもん」
「そんなのは知りません」
イムは自分の考えを全く言わない。そんな奴がどんな思考で動いているかなんて予測しようとするだけ無駄だ。
「君が僕を引き付けて、そっちの2人に行ってもらおうとしても無駄だからね?」
「ちっ」
最悪私がすぐに行けなくても、シャイナとエリーラにお兄ちゃんの元へ行ってもらおうとしたが、それは見破られていた。
「忠告しておくけど、強引にでも行こうって言うなら、僕も手加減できないからね?」
「っ!」
イムはその言葉と共に凄みをきかせてきた。だけど、そんなのは私には関係無い。お兄ちゃんの元に行かなければならない。
「だから落ち着きなって。そもそも今のダーリンの居場所分かるの?」
「そんなの…え?」
あれ?お兄ちゃんの魔力がどこにもない。ついでにリヴァイアサンの魔力もどこにもない。
イムが転移で遠くに飛ばしたのか?いや、急に無くなったらさすがに気付く。つまり、徐々に私の感知範囲から出てしまったのか?
「もうすぐ終わるから待っててね」
ニコニコと笑顔でイムがそう言った。その言葉がなんの事か分からなかったが、それはすぐに分かった。
「っ!?お兄ちゃん!」
かなり海の深い場所でお兄ちゃんの巨大な魔力が感知できた。距離がかなり離れていてもこの魔力量なら嫌でも気付くことができる。こんな魔力が込められているということは、お兄ちゃんは霹靂神を放ったのだろう。
「さすが私のダーリン」
イムがうっとりした顔で何かほざいているが、そんなのは今はどうでも良い。お兄ちゃんを速く探さないと!あの魔力量のおかげで大体の場所は分かったが、詳しい位置までは分からない。だから転移で連れて来れない。
「全く…ダーリンはしょうがないな〜。僕が助けてあげ…」
「…見つけた。転移」
もう私はイムの存在を無視して、お兄ちゃんを探していた。すると、あの魔法が放たれた場所付近に微かにお兄ちゃんの魔力が一瞬だけ感知できた。多分、お兄ちゃんも転移をしようとしたのだろう。
私はすぐにお兄ちゃんを私の前に転移させた。
「かほっ!ごほっ!」
「お兄ちゃんっ!!」
転移させてすぐにお兄ちゃんは咳き込んで水を吐き出した。
私は気を失っているお兄ちゃんを抱き抱え、呼吸ができているかと、心臓が動いているかを確認した。
「良かった…」
お兄ちゃんはそのどちらも正常に作動していた。私はそれでやっと一安心することができた。
そんなお兄ちゃんの周りをイムの魔力が覆い始めた。
「…させるわけない」
私は瞬時にその魔力の上から自分の魔力を覆って、転移させないようにした。
絶対にお兄ちゃんは渡さない。
「…僕が君の転移を防げるってことは、君も僕の転移を防げるってことになるんだね。
今の君と戦っても得は無さそうだし、僕はもう帰るよ」
イムはお兄ちゃんを転移させることができないと判断したのか、そんなことを言い始めた。
「あ、ダーリンが起きたら伝えて欲しいことがあるんだけどいいかな?」
「内容によりますね」
お兄ちゃんにマイナスに働くような伝言だったら伝える気はない。
「自分より強いかもしれない相手でももっと冷静に戦えるようになろうね。それと、せっかく魔力も無造作にあるんだから持久戦もできるようになろうね。
特に今回は全部のスキルと称号を封じてからなら海中で戦うのもそんなに苦にならなかったと思うよ。海中での口内を刺したやつでたまたま魔法系が全て封じ終えたから最後は魔法も使われずに済んだけど、あの時に違うスキルを封じてたらきっと負けてたよ。もっと強くなれるように頑張ってね。
ダーリンにそう伝えといてね」
「……分かりました」
この助言はお兄ちゃんの戦闘を見れたから分かる助言だった。これはプラスに働きそうなので、お兄ちゃんに伝えようと思う。
「じゃあ、ばいばーい。またね、ダーリン」
イムはそう言い残して転移で姿を消した。
◆◇◆◇◆◇◆
イム視点
「あーあ。ダーリンを魔人の所に転移させられなかったな」
まさかソフィアちゃんに妨害されるとは思ってなかった。まあ、邪魔をされてもそれぐらいどうとでもできると思っていた。
ただ、ソフィアちゃんがダーリンを抱き抱えた瞬間にそんな考えは消えた。あの時は僕でも進んで敵になりたくないとすら思ったほどだ。
あの恐ろしさの原因が感情なのか、スキルなのか、称号なのかはわからないけど、もし本気で戦うならダーリンとは離れさせないと大変だな。
「まあ、今回の1番の目的は果たせたから良かったよ。やっぱり親の死体に寄ってきたね」
「シィヤ…!」
僕の目の前には頭の無いリヴァイアサンと一体の小さい体に焦げが数箇所付いているリヴァイアサンが居た。
このリヴァイアサンはクラーケンを倒した時にダーリンがあの魔法で傷付けて海底で大人しくしていたやつだ。
「抵抗しなければ痛い目みなくて済むから。タダでされボロボロなのに、これ以上傷付きたくないでしょ?」
「シィヤ…」
僕が威圧しながらそう言うと、その子は抵抗するし気がなくなったようで、大人しくした。
「いい子だね」
そして、僕はその子と一緒に転移をした。
これで僕はやっとSSSランクの生きた魔物を手に入れることができた。
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