第430話 耐え凌ぐ
「………」
(………)
俺が霹靂神の準備を始めても依然として睨み合いが続いていた。俺の中で準備しているので、リヴァイアサンは霹靂神が準備中だと気付いていないのだ。
俺はステータスが高いことにより、肺活量もそれなりに高くなっている。海の漢の称号の効果で肺活量がさらにプラスされている。だから、ただ、海中にいるだけなら1時間は大丈夫な気がする。
「シャア!!」
(まあ、動き出すよな…)
魔法の準備を始めて5分ほどでリヴァイアサンは動き出した。ただ、海中にいるだけをリヴァイアサンが許してくれるはずもない。多分、俺の呼吸が水中でも続くとでも思ったのだろうか。
「シャアッッ!!!」
(うっ…)
魔法と多重思考無しで水中のリヴァイアサンの突進を受け流すのはかなり至難の技だ。俺はこれを魔法が完成するまで繰り返さなければならない。
「シャアッッ!」
(何だそれ!?)
数回の突進を受け流すと、リヴァイアサンは口を大きく開いて渦のように回転している水を放ってきた。一応魔法っぽいので俺はそれを斬り消した。
(やっば…)
斬り消した瞬間にその渦の中からリヴァイアサンが現れた。渦巻いていたのでその中にいるのは見えなかった。
「ごぼっ!!」
俺は反射神経のみでそのリヴァイアサンの突進に反応した。何とか剣で防いだが、受け流す余裕はなかった。俺は海中で吹っ飛ばされた。
(くそ…息が漏れた…)
前回海に落ちた時はかなり空気を吐き出していたので、あまり息に余裕がなかった。だから今回はできるだけ無駄な息は漏らさないようにしていたが、今の攻撃の衝撃で少し漏れてしまった。
「シャアァァ!!!!」
(今度はなんだよ…)
今度は俺を取り囲むように縦に伸びる水の竜巻のようなものを6個生み出した。これの中に入れば、自動的に海から出れて呼吸ができるかと思ったが、そう甘くはなかった。
(危ねっ!)
その渦から大量の水の刃が放たれてきたのだ。俺は魔法に集中しながら、危機高速感知の反応に合わせてそれらを全て斬っていった。
(ん!?)
だんだん斬るのに余裕がなくなってきたと思ったら、その竜巻が少しずつ俺の元へ近寄って来ていた。
(まずい!)
俺は急いで竜巻の1つを斬り消して、囲まれている中から出た。
「ごっ…!」
しかし、出待ちしていたリヴァイアサンの尻尾に俺はさらに海深くまで叩き落とされた。
(くそ…)
ステータスが高いので多少の水圧ならダメージにはならないが、確実に動きづらくはなっている。
(ん?)
よく観察すると、周りにほんの少しだけ色の濃い球体のようなものがある。魔力高速感知を使ってもよく観察しないと感知できない。それらは自然に流れてくるようにゆっくりと俺の方に近寄ってくる。
嫌な予感がしたので、俺はそれらの球から距離を取ろうとした。
「シャア!!!」
(アイスウォール!)
そんな俺に向かってリヴァイアサンは上から水の砲弾を放ってきた。すると、俺の周りから危機高速感知が反応した。
その砲弾が1つの球体に当たると、それは激しく爆発した。その衝撃で周りの球も連鎖するように爆発した。囲まれている俺は逃げ場がなく、その爆発に巻き込まれた。
(……意地で空気だけは吐き出さなかったぞ)
咄嗟に氷魔法で俺を取り囲む壁を作って少しはガードできた。剣で戦っている間でないなら霹靂神の準備をしていても魔法は使えるのだ。
とはいえ、俺の全身はかなりボロボロになっている。神雷纏のおかげもあって致命傷にはなっていないが、ところどころ骨にヒビが入っているだろう。
(もうすぐだ…)
しかし、あと10分もかからずに霹靂神が完成する。さっきの爆発もあってかなり海深くまで来てしまったが、霹靂神を放ってすぐにユグの転移で海から出れば息は問題ないだろう。
「シャ…!」
「ぶっ!?」
リヴァイアサンの突進の速さが倍近くになった。何とか剣で突進を防げたが、何でこんな急に速くなったんだ!?変わったのは深さぐらいしか…。
(あっ…)
もしかして、深くなればなるほど速くなるのか!?
今ここはどの層だ?多分まだ下層には行ってないと思うが、これ以上速くなられたらさすがに俺の反射神経でもどうにもできないぞ!
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