第427話 ベクア視点
「第三隊突っ込み過ぎだ!一旦下がれ!」
「「「はっ!」」」
俺は転移してきたリヴァイアサンを軍の指揮を取りながら戦っている。
「それにしても、ゼロスの新魔法の威力はどうなってるんだ…。これは1回直に見てみたいもんだな」
ここにやって来たリヴァイアサンのうち、1匹はほぼ無傷で、ここに転移してすぐに暴れ始めたが、他の1匹は痺れていてすぐには動けなかった。さらに、もう1匹に関しては全身に模様のように焦げ後が付いていた。そいつは来た時点でもう瀕死だった。
「ウカク、指揮をは任せていいな?」
「はい。もう私1人でも問題ないでしょう」
王都からやって来た部隊には5人の1グループになっている。そのグループがリヴァイアサンを取り囲むように七隊ある。それぞれのグループがヒットアンドアウェイでリヴァイアサンを攻撃している。
最初は慣れるために俺とウカクの2人で細かな指示を出していたが、もうだいぶ隊の皆も慣れたようなので、2人も指示はいらないだろう。それに、そろそろ最初から瀕死の1匹くらいは片付けたい。
「獣化、氷雪鎧」
今回は相手もでかいので、敢えて俺も獣化時のサイズは3mにした。これならリヴァイアサンの攻撃もちょこまか避けられるし、攻撃も当てやすい。
「まず1匹目!」
「シィヤ…」
助けが来ないように他の2匹に隊が攻撃したタイミングに合わせて瀕死のリヴァイアサンに攻撃した。力を振り絞ってか口を開けて水を放とうとしてきたが、顎を下から殴ってそれは阻止した。そして、数回追撃をすると、リヴァイアサンの瞳から輝きが消えた。
「回収隊!」
「「はっ!」」
そして、倒したものについては急いでマジックポーチで回収隊の2人に回収してもらう。それは死体をぐちゃぐちゃにしないためと、この場の広さを取り戻すためだ
「ベクア様、もう1匹倒すとは流石です!」
「何言ってんだ。あれは放置してもそのうち死んでいた。邪魔だったから俺が早く倒しただけだ。この1匹は俺の手柄じゃなくて完全にゼロスの手柄だ」
回収隊の1人に俺は強く言い返した。俺はゼロスの良いとこ取りをするためにあれを倒した訳では無い。
「回収完了しました」
「分かった。次に呼ぶまでさっきの場所まで下がっていろ。俺は次を仕留めに行く」
子供とはいえ、1匹を瀕死に追い込んだゼロスもまだ水上で大人と戦っているのだ。子供と陸で戦ってる俺も負けてられない。
「作戦Cに移行する!」
「「「はっ!」」」
俺かそう言うと、少し陣営が動き出した。さっきよりも明らかにリヴァイアサンに近付いた。そのため、リヴァイアサンも隊に攻撃しようとした。
「どこ見てんだ!」
「シィヤッ!!」
「お前もだ!」
「ジィヤッ!!」
しかし、その攻撃がされることは無かった。理由は2匹の間に入った俺が攻撃したからだ。
「「シィヤァァ!!」」
「来いやっ!」
俺は2匹に同時に相手取った。そうすることで、隊も今まで以上にリヴァイアサンへ攻撃できるようになった。
「はっ!」
「ふ!」
さらに、攻撃にキャリナとウカクも加わった。その事により、一気に与えられるダメージ量も増えた。
「「シィィィヤッ!!!」」
先に俺を倒そうとしたのか、2匹が俺の方を向いて口から水の光線を放ってきた。
「ふっ…はっ!」
だが、俺は軽く宙を飛んで回転してその2つを殴り消した。陸で口から水を出したら、それは確実に魔法だ。なら俺は殴り消せる。
「そんな大口開けてていいのか!」
「キシィヤッッ!!!」
消されることに驚いて口を開けたままだった1匹の喉に、腕に巨大な氷の針を付けてぶっ刺した。
「口の中は弱いみたいだな!」
咄嗟に口を閉じようとしたが、氷の柱を作って簡単には閉じれないようにした。そして、棘を付けた拳と足で口の中を攻撃し続けた。口の中には硬い鱗も、身体に纏っている薄い水も無い。だからすぐに傷だらけになった。
「お土産だ!」
「シィ……」
そろそろ氷の柱が限界に達する頃に最後の一撃として全力で拳を下に叩き付けた。
「あ?」
すると、氷の柱と共に俺は下に滑り落ちた。どうしたのかと思えば、今までよりも口が大きく開いたままだった。なるほど、顎の骨でも折れたか。
2匹のうち1匹は口を開いたままの瀕死に近い状態で、もう1匹もまだまだ瀕死とはいかないが、かなりダメージを受けている。
それからは特に危なげなく進んだ。
「はっ!」
「ヤ…ヤア……」
「らあっ!!」
「シィヤ……」
キャリナと俺の攻撃で同時に残り2匹のリヴァイアサンも倒した。口を開いたままのリヴァイアサンはキャリナに任せたが、無事に倒せたようだな。
「か、勝っ…」
「まだだ!まだ勝ってない」
隊の1人が「勝った」とでも言おうとしていたのを止めた。俺達は子供を倒したに過ぎない。まだ大人がどうなったか分からない。ゼロス達も勝った時に初めて勝ったと言えるのだ。
「全隊はここで鎧を脱いで休んでいいぞ。一応ここは街の外だから魔物には注意しろよ。こんだけ暴れてやってくるのはいないと思うがな。もしあれだったら宿に戻っても構わないぞ」
こちらは死人は出なかったが、負傷者が出なかった訳では無い。皆少なからず傷はあるだろう。
「キャリナ、ウカク。俺達は行くぞ」
「分かりました」
「畏まりました」
俺達3人は海岸へと急いだ。まだ戦いが続いているとしたら何か手伝えることがあるかもしれない。
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