第375話 リュウの力
「…また無傷かよ…」
ジール精霊化でリュウをすり抜けたので、リュウにはすり抜けている間はジールの雷を食らっていたはずだ。それなのに、無傷のように見える。
「ん?何してるんだ?」
リュウは最初にすり抜けた手を見ながら固まっていた。一見痺れているようにも見えるのだが、何だかそうには見えない。
「え…?」
リュウは手を見ながら少しづつ赤黒いオーラを出し始めた。
『あれはなんだ?』
『…ゼロくんのエンチャントを魔力を纏うことで無理やりやっている感じ』
つまり、リュウは俺のエンチャントを見ただけで模倣したということなのか?
俺の普通のエンチャントくらいの効果しかないらしいが、それでもこれ以上さらにステータスが上がるのか。
『…さらに厄介なのは纏っているのはただの魔力ってことだから、今のゼロくんでも物理攻撃が当たるようになっちゃった』
「は!?」
思わず声を出すほど驚いた。どんなにリュウのステータスが上がろうと精霊化で通り抜けれるから大丈夫という気持ちがあった。
しかし、ただの魔力を纏っている状態の今のリュウをすり抜けることはできない。
『このくらいの芸当はリュウレベルになってくるとみんなやれるから注意しててね』
『そういうのはもっと早く言えよ…』
正直言うと、精霊化で攻撃をすり抜けながらイムが来るまでの時間稼ぎをするつもりだった。しかし、それができなくなってしまった。
「悪魔化、ジール精霊降臨、ユグ精霊エンチャント、……回復ダブルハーフエンチャント」
『ピコーン!』
『クアドラプルエンチャントを取得しました』
ここまで強化をすると、普通の回復エンチャントでは体の負担が大き過ぎてまともに戦えなかった。だから俺は新たにもう1つエンチャントを追加した。そろそろ1つくらい増やせるかなと思っていたが、できてよかった。試しにもう1つ増やそうともしたが、それは無理だった。
ちなみに、攻撃の度に自動発動でスキルを封じれる悪魔憑きは行わなかった。なぜなら、またスキルを奪って、さらに暴れたれたら困るからだ。だから純粋にステータスが上がる悪魔化を行った。
あ、それとエンチャントの出力が落ちているなんてことは無かった。あの俺を実験台にした魔導具は使っていないのか?
そして、リュウは魔力を纏うのをまだ調整中だったので、俺はソフィとベクアの2人が俺の顔を見れる位置に少し移動した。
(手 を 出 す な)
それでこの口パクを2人に分かりやすく行った。大声を出して周りに意識を向けられたら困るから念には念を入れて口パクにしておいた。
ソフィとベクアならもう魔法が使われたことも、俺が魔力を使っていることもわかるだろう。だからといって、手を出されたらまずいからな。
俺の口パクを見て、ソフィは他の警備の人の元へ、ベクアは本部の方へすぐに動き出した。
「称号を戦闘特化に変更」
俺は小声でそう呟いた。確か、魔法系の称号は外していたはずだ。だからそれを入れるために称号を変更した。
「来るか…」
称号を変更してすぐリュウがこちらを向き直した。口頭での変更が不可能だったら、称号を変えるのは間に合わなかった。
神はこの展開を分かっていたのだろうな…。
「…!」
「はあっ!!」
リュウが俺に走って向かってきた。だから俺も迎え撃つために走ってリュウに向かった。
そして、リュウの振り抜いた拳を俺は2本の剣で全力で斬りつけた。
「くっ……!ぬん!」
結果、俺だけが勢いよく吹っ飛ばされた。俺は壁に激突する前にサイコキネシスで止まった。
そして、多分ここはもう場外だと思う。ただ、リュウが舞台を見る影もないほどに壊しているせいでどこからが場外かは分からない。
「まだこれでも力負けかよ…」
俺は今できる全力で強化したつもりだ。それなのに、まだ追い付いていない。リュウの拳に傷がついた様子も無い。
「…!雷縮!」
力の差を実感していると、リュウが再び俺に向かってきた。俺は慌てて雷縮で逃げた。
「かはっ……!」
なのに、気が付いたら俺はリュウに脇を蹴られていた。
俺は反射的にサイコキネシスを使ったおかげで壁に激突せずには済んだ。
「雷縮よりも早いのかよ…」
リュウは雷縮よりも早く動けるので、雷縮中の俺に攻撃をできたのだろう。ただ、タイミングを合わせていたのか、全力では蹴られていなかったのだろうというのが救いだ。さっきのパンチを見た感じ、全力なら今の攻撃でもう倒れていただろう。
「攻めるしかないか…」
逃げているだけでは、いつか今のように攻撃されて負けてしまうだろう。また、逃げてて他の人にターゲットを変更されても困る。
中途半端に攻めたり逃げたりするのは余計に危険だろう。だったら、もう危険を承知で攻めていくしかないよな。
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