第366話 vsデュラ 2

「来い!」


「っ!?」


俺は走りながら警戒してか、じっと構えているデュラをサイコキネシスで引き寄せた。尻尾が9本の時のサイコキネシスは今までとレベルが違い、今までの何倍以上の強さになった。だからデュラを引き寄せることすらできるようになった。



「らあっ!おらぁっ!!」


「ぅ…!うぅ…!」


今までよりも急激にステータスが上がったことで、今度は俺が責め続けて、さっきと逆にデュラが防戦一方になった。



「ぬおぉぉぉ!!!」


急にデュラが雄叫びを上げだした。今までほとんど無言だったデュラがいきなりそんな行動に出たのには驚いた。雄叫びによって何が変わるのかを俺は攻め続けながらもデュラを注意して観察した。


「そのモヤか」


変わったのはデュラに纏わり付いていたモヤだ。そのモヤはデュラの2本の剣だけに集まった。その分モヤは大きくなった。



「っ!!!」


「まじかっ!」


デュラは剣にモヤを集中させることで、剣を振る度に黒い斬撃を放つようになった。これにより、下手に剣を避けることができなくなった。さらに、剣を受け流す時も剣の衝撃と斬撃の衝撃の2つの衝撃が来るようになった。これのせいで、受け流すのがかなり大変になった。


「らあぁぁ!!!」


「ぬおぉぉ!!!」


だが、今の俺に対して防御を捨てる行為は自滅行為だ。今は体にモヤが無くなったことで、剣に掠るだけでも鎧に傷が付くようになった。とはいえ、攻撃特化になったせいで、力が拮抗して中々攻撃が当たらなくなった。だから、結果として鎧を突破して生身に傷を入れる事ができない。



バキンッ!!!



「はあっ!!」


「ぐほ…」


全力での打ち合いで限界が来たのはデュラの剣だった。デュラの剣の1本は砕けるように折れた。俺はその隙を逃さずにデュラの腹に闇翠を打ち込んだ。



「やっと一撃入った」


俺の攻撃によってデュラは舞台を転がりながら吹っ飛んだ。今の攻撃でデュラの鎧の腹の部分が砕け散った。そこから本来見えるはずの胴体が見えない。遠目だが、中は青白くなっているだけで中にはも何も無いように見える。そういえば、サイコキネシスで引き寄せた時も今吹っ飛ばした時も全身鎧にしては軽かった気がする。



「………」


デュラは居合切りのように1本になった直剣を構えた。その剣には場外まで溢れ出すほどのモヤが纏わり付いている。

本当は今のうちに攻撃した方がいいのだが、危機高速感知が反応している。



『今は破裂寸前に膨らせている風船みたいな状態だから下手に攻撃しない方がいいよ。今攻撃したらあれが制御を失って全方向に無差別で放たれるよ』


『了解』


危機高速感知の反応の通り、今攻撃してしまうと、あのモヤが暴走してしまうそうだ。魔法を使えれば攻撃しても大丈夫な方法はあるかもしれないが、それができない今、ただ待っているしかない。




「……待たせたな」


5分くらいでそのモヤは縮んで、剣にピッタリくっ付いた。そのため、剣は黒く塗装されたようにテカテカしている。あの量のモヤがあんな薄く凝縮されたと考えたらかなり恐ろしい。



「ふっ!!」


デュラがその剣を振ると、凝縮されたモヤが斬撃として放たれた。舞台を削りながら進んできたその斬撃の横幅は舞台を埋め尽くす程に長かった。さらに、高さも俺の身長をゆうに越して2m近くある。また、これを放った瞬間に飛び上がったデュラの姿も俯瞰の目に映った。さらに、そのデュラの剣はまだテカテカしていた。

デュラは俺がこれを飛んで避けたら一撃入れるつもりなのだろう。その時にまだモヤが残っていると考えたらそれを食らう訳にはいかない。



「よし!」


俺は全身の力を抜きながら軽くジャンプした。そして、その斬撃を下に向けた2本の剣で軽く当てた。俺は斬撃を剣で滑るようにして避けた。

巨大な斬撃が放たれることは、モヤを溜め始めた時から想像できた。だから、ユグとジールとで対策を考える時間を取れた。そのため、落ち着いて避けることができた。


「雷縮!」


俺は避けてすぐに空中にいるデュラをサイコキネシスで地面に勢いよく叩き落とした。叩き落としている最中に、俺は雷縮で叩き落とす地点へ移動した。

ちなみに俺が避けた斬撃は場外の壁に当たる寸前で霧散した。これはデュラがそうなるように調整していたのだろう。


「はあっ!」


俺は雷電纏を2本の剣に集中して全力で、舞台に埋まる程勢いよく落ちてきたデュラの顔を打った。


「…え!?」


デュラの頭は俺の攻撃によって舞台の上を転がっていった。

殺してしまったかと頭が真っ白になってしまった。



「ぐぼっ……かあぁぁぁ…」


そんな俺の腹にデュラの剣が突き刺さった。さらに、そこからはモヤが紛失して、俺の腹を突き抜けた。



「デュラ…ハンかよ……!!」


俺が腹を押さえて膝を着いている隙にデュラはよろよろと起き上がって、ふらふらと顔を取りに行った。

こんな隙だらけの俺を無視して、わざわざ顔を取りに行くってことは前が見えてないのか?



「……雷縮!!!」


俺は力を振り絞ってふらふら歩いているデュラへ雷縮で移動した。


「らあぁぁ!!」


俺はデュラの背中を思いっきり剣でぶっ叩いた。デュラは転がりながら吹っ飛んだ。そして、頭をも巻き込んで場外まで出ていった。



『試合終了!勝者ゼロス!』


「はぁ…はぁ…ぐほっ!」


俺は膝を着いて血を吐きながらそのアナウンスを聞いた。何とか勝つことはできた。本当にギリギリだった。そして、最後はすごくしまらない結果となってしまった。今回はリュウの要望通りの圧倒的に勝つとはいかなかったな…。

そういえば、俺の攻撃で最低でも3回はデュラに傷を入れられた。その時にブロスのスキルを封じる能力は使っていた。それで何のスキルが封じられたんだ?

あっ!もしかして、最後に前が見えないようになっていたのは、周りを見るスキルが封じられたからか?冷静に考えると、デュラハンの魔族が切り離し可能な頭に付いている目だけで周りを見ているとは思えない。

封じるスキルは使用頻度が高いスキルからランダムに選ばれるから可能性はある…な……。


「お兄ちゃん!?!」


ソフィの叫びを微かに聞きながら俺の意識は失われた。


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