第365話 vsデュラ 1
『これより、本戦8日目の1試合目を開始します!選手は入場してください』
そのアナウンスで俺は舞台へと上がった。
「…剣を使うのか」
俺は舞台でデュラを見た時にボソッとそう呟いた。デュラは黒い直剣を2本持っていた。今までは武器なんて持っていなかったはずだ。
「獣化、雷電纏」
今回は最初から尻尾は8本だ。
『試合開始!』
そのアナウンスがかかっても、様子を伺ってかお互いに動かなかった。観客にもその舞台上での緊張感が伝わっているのか、静かな時間が過ぎていった。
「…参る!」
そう言ってデュラから俺に向かってきた。デュラの両手には黒い直剣を2本持っている。そういえば、俺は同じ二刀流使いの強者と戦うのは初めての気がする。
「……!」
「はあ!」
キンッ!という良い音と共にお互いの剣がぶつかり合った。そこからは剣の打ち合いになった。
「…!…!…!…!…!……!」
「っ!はっ!ふっ!く…!やっ!はあっ!」
打ち合って分かったことは、ステータスでは俺が負けているということだ。それも、この大会で重要になってくる【攻撃】【防御】【敏捷】どれをとってもだ。だが、剣の腕や体術では俺の方が上だということも分かった。だからこの打ち合いではお互い1歩も引かない接戦になっている。
お互いにかすり傷すら無いまま打ち合いが続いたが、その均衡を先に破ったのはデュラだった。
「ぉぉぉぉぉぉ!」
そう小さく呻き声をあげたデュラは鎧の隙間から黒いモヤが溢れてきた。そのモヤはデュラの鎧と剣を包み込むように纒わり付いた。魔力高速感知であれは魔力を使ったやつではないとわかる。
「お……!」
「ふぐっ…!」
そのモヤが纒わり付いてからのデュラは攻撃が上がっていた。敏捷はまだ分からないが、見た目的に防御も上がっているだろう。
「がはっ…!」
剣での攻撃に集中していたせいで、蹴りを顎に食らってしまった。その蹴りの勢いを活かして、バク転をしてすぐに体勢を直して、向かってきているデュラを迎え撃った。
「かはっ…ぐふっ……!」
剣での攻撃は一撃でやられる可能性があるから絶対に受けないようにはしているが、パンチやキックは食らってしまう。
その理由として、モヤが纏わり付いてからデュラのステータスが上がったのもあるが、黒いモヤのせいで剣が見えないというのが大きい。剣が見えないせいで、受け流す事がかなり難しくなった。
「やべっ…」
このままだと、押し切られて負けてしまう。俺は一旦仕切り直すために距離を取った。
「ぬっ…!」
「はあ!?」
デュラが剣を振ると、纏わり付いているモヤが斬撃のように飛んできた。完全に想定外の攻撃だったが、神速反射を活かして仰け反りながらも2本の剣で斬撃を何とか少し上に方向を変えて避けることができた。
「…っ!」
「しまっ!?」
斬撃を逸らすのに気を取られて、デュラがやってきているのに気が付かなかった。仰け反っている俺に上から2本の剣を振り下ろしてきた。
「ぐふはっ!!」
何とか咄嗟に剣を受け止めることができたが、勢いを殺す余裕はなかった。俺は舞台に勢いよく叩き付けられた。
「………」
「ぐっ…ぐぐ…」
以前としてデュラは俺を斬ろうと上から剣で俺が受け止めている剣を押し続けている。
『ゼロくん!』
『ゼロ!』
「分かってる!!」
俺は2人に心の中で返事をする余裕すら無かった。ユグとジールは力負けしそうなこの状況を打破するために尻尾を増やせと言いたいのだろう。だが、押し負けないように剣に全力で力を入れているこの状況ではそれは無理だ。
「だあっ!!」
俺は力任せに何とかデュラの剣を受け流すことができた。デュラの剣は舞台に突き刺さった。この隙にデュラの真下から逃げようとした。
「っ!」
「ぶっ……!」
しかし、デュラは刺さった剣を放棄して、俺の顔面に蹴りを放ってきた。俺は無理に受け流そうとせずに、雷電纏を顔に集中して蹴りを真正面から受けた。蹴りの勢いで吹っ飛ばされることによって、デュラから距離を取ることに成功した。とはいえ、真正面から受けた蹴りはかなり効いた。
「はあ…ふぅ…」
俺は舞台の上に転がりながらも、すぐに体勢を立て直した。
『隠してる余裕はないな』
『うん』
『そうだな』
いらないと思うけど、一応ユグとジールに確認を取った。そして、尻尾を1本増やした。
「ぬっ…!」
デュラが遠距離から再び黒いモヤの斬撃を放ってきた。
カキンッ!
「!」
俺はその斬撃を闇翠1本のみで横に弾き飛ばした。
それを見てさっきのように斬撃を放ってすぐ走り出していたデュラは一旦立ち止まった。
「よし…。行くぞ!」
リュウのためにと力を隠す余裕はこの試合には無いようだ。俺は尻尾を最大値である9本にして、全力でデュラに向かっていった。
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