第362話 vsベクア 2
「作戦会議は終わったか?」
「ああ…」
俺が試合中にユグと話しているをただ待ってくれるほどベクアは甘くない。もしかすると、今のベクアはその場から動くことができないのではないか?動けるにしても、前のようにベクアの動きに合わせて自動的に氷の範囲も動くことは無いのかもしれない。
「雷縮」
俺は氷を踏まないようにサイコキネシスで足場を作りながら、ベクアの後ろに回り込んで一気に近付いた。
「そう来るよな!」
ベクアも俺が雷縮でやってくるのは読んでいたのか、すぐに振り返った。そして、振り返ると同時に下から氷の棘が現れた。
「はあっ!」
「ぐっ…!」
俺はその氷の棘を致命傷にならないようにだけ回避して、ベクアへと攻撃を仕掛けた。
「ぐっく……!」
「はあっ!はあ!」
俺が何度もベクアへ斬りかかると、ベクアは棘を出す余裕が少しずつ無くなってきたのか、やってくる棘の本数が減ってきた。このまま押せば勝てると思ってきたときだった。
「ちっ…邪魔だっ!」
地面から巨大な氷塊が現れた。それを斬り壊すと、ベクアは俺から距離を取って仕切り直していた。
『ゼロ』
『ああ…』
今の攻撃でベクアには切り傷が少しできたくらいだ。それに対して、俺は全身に刺し傷がある。特に氷に近かかった足はそれが酷い。貫通するほど深い傷は無いが、その傷は無視できるほど浅くもない。同じことを繰り返しても先に限界が来るのは俺だろう。
「雷縮」
俺は再びベクアへと一気に近付いた。
「なっ…!」
「はあっ!」
俺は雷縮を行う瞬間に尻尾を8本に増やした。それの効果で強化されたサイコキネシスで棘の発生を数瞬遅らせた。その隙にベクアの左脇を抜けながら、光翠を振って左腕を斬り落とした。
「はあっ!」
「ぐふっ…らあっ!」
「い゛っ…!」
俺はすぐにベクアの左脇を右足で回し蹴りをして吹っ飛ばした。しかし、ベクアは吹っ飛びながらも、下の氷から棘を数本出した。その棘はサイコキネシスを突破して、回し蹴りをするための軸足としていた左足を貫通するほど深く刺さった。
勝負を急ぎ過ぎたな…。腕を斬り落とせたんだから一旦距離を取っても良かった。回し蹴りのために踏ん張っていたせいで避けることもできなかった。
その刺さった棘と下の氷はベクアから離れたからか、すぐに消えた。
「雷…縮!」
雷縮をしようとすると踏ん張った時に穴が空いている左足が痛んだが、歯を食いしばってその痛みを無視した。そして、吹っ飛んでいるのに無理やり棘を出したせいで受身を取れずに地面に激突して転がっているベクアへと向かった。
「はあっ!!」
「うらあっ!」
俺が近寄る頃にはベクアは氷雪を纏いながら立ち上がった。そんなベクアに雷電纏を刃に集中した闇翠で腹を目掛けて振った。しかし、ベクアも俺の攻撃に合わせて顔面目掛けて右拳を振ってきた。
「がはっ…!」
「ぐぶっ…!」
お互いの攻撃が当たって、2人とも吹っ飛んだ。
「いってぇな……」
『…試合終了!勝者ゼロス!』
最後の攻撃の後に舞台の上に立っている者は俺だけだった。ベクアは場外の壁にのめり込んで気絶している。
最後の攻撃の時にサイコキネシスでベクアの動き少し止めた。その止まった時間の差で俺の攻撃が先にベクアに当たった。だからベクアの攻撃は雷電纏無しで当たったけど、そこまでダメージは食らわなかった。
ちなみに、刃に雷電纏を集中させると攻撃の威力が増すが、刃がどこにも触れないから斬れ無くなった。そのおかげで刃を向けてベクアに振ったが、胴体が真っ二つになるようなことは無かった。俺の方が先にベクアに攻撃を当てれたのは、刃から振れたからという理由もあるかもしれない。
「あっ…」
担架で運ばれるベクアの元に斬った腕を持って行こうとした。綺麗に斬ったので、くっ付けながら聖女が聖魔法を使えば治るからな。
しかし、思ったよりも足の傷が酷かったらしく、左足を踏み出すと力が入らずに転んでしまった。もしかすると、最後のあの雷縮で傷が広がったのかもしれない。
「お兄ちゃんっ!!」
どこかからそんな声が聞こえてきた。ソフィに心配かけないために、とりあえず躓いた感を出すためにすぐにしゃがんだ。
無理して歩いたらこれ以上傷が広がりそうなので、俺は大人しく担架が来るのを待った。そして、やってきた担架で医療室まで運ばれた。
勝ったのに担架で医療室に運ばれるという何とも締まらない結果になってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます