第329話 衣装

「未だにこういう堅苦しい衣装は好きじゃないな」


今はパーティでの衣装合わせをしている。どうせ今回しか着ないのだから、俺は兄様達のお下がりでいいと思ったんだが、貴族的にそれはダメだそうだ。とは言っても、さすがに今からパーティまでに俺専用のオーダーメイドを作ることは時間的に無理らしいから、俺のサイズに近い完成している衣装を俺用サイズ修正するそうだ。


「これじゃあ襲われた時に動きにくいよな…」


「なんでお前は襲われる事を想定しているんだ」


何時でも戦えるようにしておくのは野営をよくする冒険者にとって必須のスキルだ。まあ…最近はまともに冒険者なんてやっていないけど。そろそろした方がいいかもな…。

ちなみに父上が用意した警備以外はパーティ会場内で武器などの持ち込みは当然ながら許可されていない。マジックリングなどの装飾品は許可されているから、その中に武器を入れることについては黙認してはいるけど。その規則があるから翠闇と翠光は腕輪の状態にして両手に付けるつもりだ。もっとも、アドルフォ領に帰ってきた時から腕輪の状態にしているから、この腕輪が剣であることすら父様達は知らないだろうけど。



「これはサイズ的に今までで1番ちょうどいいし、デザインもかなりいい。これが第1候補かな」


「そうか」


その後も何度か試着をしたが、結局第1候補は変わらなかった。だから第1候補が俺の衣装に決まった。

その衣装は全体の色は黒っぽく、そんなに目立つような装飾品がジャラジャラ着いてもいない。装飾品があまり着いていない分、他の衣装よりも少しだけ動きやすい。



「少し地味だが、主役がゼロではないから問題は無いだろう」


目立たなければならない主役という立場ならこの衣装ではダメだと言われていたらしい。まあ、今回はアンドレイ兄様が主役だからな。俺は隅っこにでも居ればいいだろう。


「後はソフィの衣装合わせが終わるのを待つだけか」


ソフィも俺と一緒に来て、別々の部屋で衣装合わせをやっている。ちなみにソフィには母様が付き添って、俺には父様が付き添っている。




「ゼロ兄様、おまたせしました」


「ああ…うん。おつかれ」


俺の衣装合わせは1時間ぐらいで終わった。ソフィの衣装合わせはそれから2時間以上待った。女性の服選びとかは長いと聞いたことがあるけど、ここまで長いとは思わなかった。俺は待ち時間は1時間以内だろうと甘い考えをしていた。


それと、ソフィの俺の呼び方は昔のようにゼロ兄様に戻している。別に家の中でもお兄ちゃん呼びをしててもいいんだろうけど、変に詮索されても面倒だから元に戻している。



「これから帰って昼食の後はパーティの流れを説明するわ」


「…はい」


「分かりました」


俺はこうやって貴族っぽく暮らすよりも冒険者のように魔物を倒して生活しているほうが性に合ってるな。まあ、転生先は辺境伯でと神にお願いしたのは俺だ。貴族であるおかげで、パーティの時にシャナと、学園にも通ってクラウディア、エリーラ、ベクアとキャリナ、グラデンと出会えた。だから辺境伯にしてくれとお願いしたことには全く後悔はない。





「でも体は動かしたくなるんだよな」


「ゼロ兄様?」


「いや、何でもない」


今は0時前の深夜だ。そんな時間に俺とソフィは家を出て森に入ってきた。


「じゃあ、ソフィは悪魔と魔法無し、俺は精霊、獣、悪魔とエンチャントと魔法無しで軽く模擬戦をするか」


「はい。そうですね」


本当は1人で森に入って魔物でも倒そうかと思ったけど、それをやると絶対ソフィに怒られる。だから素直にソフィも誘った。ソフィが居るなら弱い魔物を倒すよりも一緒に模擬戦をしていた方がいい運動になる。あんまり深夜に街近くでうるさくしたらダメなので、激しい先頭になる原因は全て取り除いての模擬戦だ。


「雷ダブルエンチャント。では、いきます!」


「よし!来い!」


こうして昼間は家でのんびりとして、夜中は森でソフィと模擬戦をやっている生活を送った。

そして、パーティ開催日を迎えた。




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