第323話 契約
「まだ時間あるけど、もう進化する!?」
「…狩りが終わったらにします!」
「了解!」
キャリナは21時というまだ早い時間にレベルがMAXになった。
キャリナもシャナと同様に狩りが終わってから進化するようだ。
『ちょっとごめん』
「え?わっ」
俺に一言謝って、突然光翠の中から人型状態でダーキが出てきた。
「あなたは少しは待つことを覚えたほうがいいと思うわよ」
「にゃん百年探し続けてやっと見つけた種がやっと芽吹くのだからほんの少しのフライングは許してほしいにゃ」
ダーキが突然誰もいない方向を話しかけた。すると、返答と共に人影が現れた。悠々と結界に入ってきた人影はキャリナと同じ猫の獣人のような少女だった。
その少女の肩にかかるくらいの長さの髪は透明感のある美しい桜色で、くりっとした目も相まってとても可愛らしく見れる。遠目で見ると、ただの可愛らしい猫の獣人にしか見えなかったが、近くに来てはっきり顔が見えるとその印象は変わった。
その少女のチャームポイントであろう目のハイライトは少し消えていて、右眼は濃い赤紫色、左眼は濃い青紫色のオッドアイだった。さらに、獣耳と同じく獣人たらしめるであろう尻尾は3本生えている。
今はこの美少女がどこか不気味に感じてしまう。
「だからって手を付けるのが早すぎるのよ。まだレベルがMAXにもなってない時からちょっかいかけてたでしょう」
「でもそれはにゃーの優しさにゃ。もしにゃーより先に契約したらその獣を殺してでも枠を奪うことになるにゃ」
「はぁ…」
もしかしてキャリナが聞こえたという空耳はこの少女のせいだったのだろうか。
また、ダーキは少女の枠を殺して奪うと言ったのに何も口を出さなかったところを見ると、それが可能なほどこの少女は強いのだろう。
「そろそろにゃーのことをその子に紹介してほしいにゃ」
少女は俺のことを見ながらダーキにそういった。
「これは前に言っていた幻想種の中でとある珍しい娘に夢中になってる
「あの子を進化できるように育ててくれてありがとにゃ」
ダーキとの会話と見た目から予想していたが、やはり獣人ではなく獣だったようだ。人型に慣れている時点で幻想種なのは分かったが、前にダーキから話された中の幻想種だとは思わなかった。
そして、この猫魈が言ったあの子とは十中八九キャリナのことだろう。
「あの子が居なかったら君で妥協して契約してあげても良かったって思うくらい君も特別だからこれからも頑張ってね」
「あ、うん。ありがとう?」
これは褒められたと考えていいのか?というか、何を頑張ればいいんだ?
「あの子が進化する前に契約しておきたいから、呼んできてくれにゃい?」
猫魈は俺にそう言ってきた。猫魈言う通りキャリナを呼んでいいかをダーキに視線を移してた確認した。すると、ダーキは頷いたのでキャリナを呼びに行こうとした。
「話に全く入れないから私がキャリナを連れてくる。それで、キャリナと交代して私は魔物を狩ってくる」
「ありがとう」
俺達の会話を無言で聞いていたシャナが俺の代わりにキャリナを呼びに行ってくれた。気を使ってくれたのだろうな。
「えっと…どちら様ですか?」
キャリナは結界に入ってきて1番に猫魈を見てそう言った。確かに呼ばれたから戻ったら知らない猫の獣人のような奴がいるのだからびっくりするよな。
「にゃーはキャリナと契約をするために来た獣にゃ」
「契約!?」
キャリナは突然の事でさらに驚いた。
「でも…人型?ってことは幻想種……」
「本来はまだ契約前の他人に簡単に見せていいものではにゃいけど、にゃーがどれほど本気で契約してもらいに来たかを分かってもらうために人型で来たにゃ」
獣人の中では人型になれる獣がいて、その獣は幻想種と呼ばれる高位の獣だと知られているそうだ。
「で、でも…何で私に貴方様のような方が…」
「それはキャリナがにゃーと同じオッドアイだから、にゃーの力を100%以上引き出せるからにゃ。にゃーはこの眼を持つ獣人が現れるのを待ち続けたにゃ。最悪、にゃーと同じ猫でも構わないと思ってたところにキャリナが現れたにゃ」
猫魈は自分の眼の近くを手で触りながらそう言った。
「キャリナは良くも悪くも珍しいからにゃーとの契約を断っても他にも契約しに来る獣は少なからずいると思うにゃ。でも、その中に幻想種ほど強いのは100%いにゃいにゃ。にゃーはそこの狐には負けるけど、幻想種の中では上位の強さはあるにゃ。もう現れるかも分からない同じ眼を持つ仲間をにゃん百年と待ち続けるのは疲れたにゃ。お願いにゃ。にゃーと契約してほしいにゃ」
猫魈はそう言って深く頭を下げた。
「獣王の私よりも強い獣がいたら大問題になるわよ…。私からもお願いするわ。猫魈は性格には難があるけど、実力は確かだわ。同じ猫ということもあるからあなたとも相性はかなりいいはずだから契約してあげてほしいわ」
そして、猫魈の後にダーキもそう言って頭を軽く下げた。
そんな2人を見てキャリナは慌てていた。急展開過ぎて着いてこれていないのかな?俺に助けを求めるような目を向けている。
「ゆっくり考えていいからキャリナが自分で答えを出してあげな」
これでもし俺が契約したら?とか言ったら多分キャリナは契約してしまう。俺はキャリナには自分でどうするかを考えて欲しい。
「…あなたと契約したら私はゼロスさんを守れるほど強くなりますか?」
「…正直、この規格外を守れるほど強くにゃれるかと聞かれたら難しいにゃ。ただ、一緒に戦えるくらいには強くにゃれるのは保証するにゃ」
これは俺をバカにしているのか?判断に困る微妙なラインだ。だから怒るに怒れない…
「わかりました。これからよろしくニャオナ」
「っ!!よろしくにゃっ!!!」
こうしてキャリナと猫魈改め、ニャオナは契約した。
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