第308話 兄妹対決 後編
「はっ!」
俺は剣を上に振ってソフィの重力魔法を斬った。そんな短い時間でもソフィは魔法の準備を完了しそうだ。
「ファイアボール!」
目くらましも兼ねて少し大きめに作ったファイアボールを放った。もちろん魔力感知で俺の大体の場所はバレているだろうが、一瞬だけ視界から消えることはできた。
「ダークインフェルノ」
隠れたことなんかを無意味にするほど広範囲の火と闇の複合魔法がソフィから放たれた。その複合魔法はファイアボールをも飲み込んだ。この複合魔法は広範囲過ぎて俺の剣でも斬ることは難しいだろう。
だから俺は足の裏にサンダーボムを発動した。その魔法の爆発の威力で俺は数メートル上空に浮いてソフィの魔法を避けることができた。さらに、もう一度サンダーボムを足の裏で発動して、空中で方向転換してソフィに向かって行った。
これもダーキに教わったことだ。俺は雷が効かないという利点を自爆技のようなものでしか使っていなかった。だからもっと有効活用しなさいと言っていた。
「っ!」
ソフィは咄嗟に魔法の準備をしながら片手でメイスを掴んだ。恐らくメイスで俺の剣の攻撃を防いでから魔法で攻撃でもするつもりなのだろう。
「アイスブロック!」
俺はソフィに辿り着くよりも早く、目の前に1mくらいの氷塊を出した。そして、それを思いっきり殴り砕いた。ソフィは反射的に顔を腕で隠して氷塊の破片をガードした。俺は氷を殴ったことでさっきまでの勢いが消えて、空中で落下し始めた。
「サンダースパーク!」
俺は地面に着地する瞬間に詠唱省略でサンダースパークを放った。これは広範囲に雷を撒き散らす魔法だ。
「魔法解除!」
「雷縮」
これを放てばソフィは魔法解除をするしか無くなると読んでいた。だから俺は臆せずにソフィの目の前まで近付いた。
「っ!?」
ソフィは焦りながらメイスを抜こうとした。
そんなソフィに俺は光翠の剣先を向けた。
「サンダーショック!」
「あっ!」
剣先から雷を痺れさせるように出して浴びせた。これで魔防が高いソフィでも少しは動けなくなる。本当ならここで剣を使って一気に攻めたかったのだが、それは今回はできない。俺はさらに時間を稼ぐためにサンダーアローを四方八方に放った。それを俺は称号の避雷針で呼び寄せてた。これで近くにいるソフィにもかなりの数のサンダーアローが当たることになる。だからソフィは魔法解除を使うだろう。だから俺はその隙にソフィでも一撃で倒せる魔法の準備を始めてた。
「アブソリュートゼロ!」
ソフィは俺が知らない氷魔法を使った。いや…そもそもこれは氷魔法なのか?俺の全身は氷に包まれた。氷の奥に少し透けているソフィを見ると、石の壁を四方八方に置いて雷を防いでいた。ソフィは2つ同時に魔法を使ったのを見ると、並列思考取得していたのか…。そこで俺の意識は途絶えた。
「さて、どこが悪かったかわかるかしら?」
俺の意識が戻ると、ソフィ達が俺に声をかける前にダーキが現れて話し始めた。
「最後にサンダーアローを放ったところかな…」
「あら、分かってるじゃない。ゼロちゃんはあそこで欲張ってもっとゆとりを欲しがったわ。そのせいで与える必要のない隙を与えることになったのよ」
冷静に考えるとあれは悪手だ。別にソフィは魔法解除以外にも防ぐ手段は数多く持っていたのだ。今までの予想が当たったからって今回もその予想が当たると思い込んでいた。
「理想としては、あそこは確実にダメージを与えてから距離をとるか、最悪相打ちする覚悟ででっかい魔法を使ったりすることかしらね。逃げ腰だと勝てる相手にも勝てないわよ」
「はい…」
昨日教わって知識だけ付けても上手くできるわけはなかった。
「ただ、今までと全く違った動きができていたわよ。これからの努力次第でもっと強くなれるわよ」
「ありがとう」
それだけ言うと、ダーキは光翠の中に戻った。
「お兄ちゃん!大丈夫ですか!?ごめんなさい、つい氷晶魔法を使ってしまいました」
「別に大丈夫だし全く問題ないよ」
氷晶魔法とは俺の雷魔法が雷電魔法に進化したように、氷魔法が進化した魔法だそうだ。
ソフィの言っていることを逆に捉えると、ソフィはまだ未公開の魔法を使わざるを得ない状況まで追い込まれたということだ。俺は剣などの物理攻撃を使わずにソフィをそこまで追い込むことができたのだ。
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