第283話 2人の苦労

「お兄ちゃん、起きてください」


「……おはよう、どいて?」


俺は体を揺すられて起きた。目を開けると、寝袋の上に座っているソフィが居た。このままだと俺は寝袋から出れない。


「わかりました」


そう言うと、ソフィは素直に俺の上からどいた。ソフィは次にエリーラとキャリナも起こそうとしているので、俺は一足早くテントの外に出た。




「えっと…大丈夫?」


「……大丈夫」


外に出て、シャナに会いに行くと、シャナは酷く疲れた表情で座っていた。俺はそんなシャナの隣に座った。



「今まで何してたの?」


「…5回斬ってから魔法でトドメを刺してた」


「2人で?」


「私だけで」


どうやらソフィは俺よりもスパルタだったようだ。ソフィも俺のように結界を光られせて目立つようにしていた。それで大量にやってくる魔物をシャナは1人で全部倒していたそうだ。


「…今晩だけでレベルが10も上がった」


「よかったね?」


「うん…」


結果だけ見たら嬉しいのだろうが、やっていたことがとてもきつそうだからな…。



「少し休む?」


「そうする…」


そう言うと、シャナは俺の肩に頭を預けてきた。

そしてすぐに、すーすーっ…という寝息が聞こえてきた。



「ソフィはどんだけ疲れさせたんだよ…」


こんなすぐに眠るとは思わなかった。あと、普通にテントの中で休めば?という意味で言ったのだが、このまま寝てしまった。テントに運ぼうかとめ思ったが、せっかく寝たのに運んで起こしてしまったら可哀想だ。



「お兄ちゃ」


「しーー」


エリーラとキャリナを起こしたソフィが、俺の元へ来た。俺が口に人差し指を当ててそう言うと、すぐに俺の横で寝ているシャナに気が付いた。



「朝食の準備をします。完成したら呼びますね」


「ありがとう」


ソフィと小声でそう話した。ソフィもシャナを休ませてあげたいのだろう。




「お兄ちゃん」


「分かった」


そして、シャナが寝てから1時間が経った頃に朝食が完成したことをソフィが伝えに来た。ソフィは朝食の準備よりも先にテントの片付けなどをやってくれたおかげで1時間もシャナを休ませることができた。



「シャナ、起きて」


「ん……おはよう」


「おはよう、少しは休めた?」


「ばっちり」


それから5人で朝食のパンとスープを食べた。




「今日はどうする?」


「今日も昨日と同じようにそこまで深くないところで魔物を狩り続ければいいと思います」


「じゃあそうしようか。反対の人はいる?」


反対の人は居なかった。今日も昨日と同じく、比較的深林の浅いところで魔物を狩ることになった。





「あえて音出してみる?」


「……そうしましょうか」


2時間ほど狩ってもまだ10体しか魔物に出会えていない。このままだとさすがに効率が悪い。だからあえて音を出して魔物を誘き寄せることにした。


「雷音」


ジールと作った精霊魔法を使った。雷音は雷の大きな音を出すだけの魔法だ。全くダメージは与えられない。至近距離ででくらえば耳がやられるくらいだ。



ドドドドド!



「いっぱい来てるな」


「そうですね。お兄ちゃん、私、エリーラはあくまで補助です。主に戦闘するのはシャナとキャリナです。2人とも頑張ってください」


「ん」


「は、はい!」


強い魔物は音とかに反応してすぐに来てくれるから楽だ。弱い魔物は音にビビって隠れる場合があるからな。

俺達3人はシャナとキャリナを魔物との一騎打ちにできる状態にするのが役目だ。それの邪魔になりそうな魔物の相手を一時的にして、シャナとキャリナの一騎打ちが終わったら交代するという流れだ。



「行く」


「い…行きます…」


そして、誘き寄せからの魔物狩りが始まった。





「はぁ…はぁ…はぁ…」


「ひゅー…ひゅー…」


「おつかれ」


2人は2時間ほど戦い続けた。2人合わせて60体以上は倒しただろう。2人とも疲れ切っている。特にキャリナは過呼吸になりかけている。



「2人は一旦休憩だな。じゃあ少し移動してまた雷音を使って今度はエリーラがやるか」


「わかったわ」


2人が落ち着くまで待ってから移動をした。

今度はエリーラが1人で戦って、俺がその補助、ソフィがシャナとキャリナの護衛でやった。

その次はソフィが1人で戦って、俺がその補助、エリーラが2人の護衛だった。

2人は時間を合わせても3時間弱で終わった。

俺が連続で補助な理由は俺が魔物を無傷のまま残しておくのが上手だったからだ。さらに、受け流す練習にもなってちょうど良いという理由もある。



「じゃあ次は俺だな」


「お兄ちゃん、補助いりますか?」


「あんたに補助はいらないわよね?」


「え?」


やっと俺の番が来たと喜んでいたが、あれ?何か流れおかしくない?


「もちろん危なくなったらすぐに手を出しますが、お兄ちゃんなら近くの魔物は剣で、遠くの魔物は魔法で倒せますので、補助はいらないと思います」


「はぁ…わかったよ」


ソフィにそこまで言われたら何か頑張らなければいけない気がした。あと、一応補助がない方が経験値も稼げるだろう。

こうして俺だけ補助無しで魔物と戦うことになった。


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