第263話 サバイバル戦スタート!

「最低でも10人は場外に送ってやるぜ!」


「期待してるぞ」


サバイバル戦がもう少しで始まると言う時に、舞台の前でベクアがそう意気込んでいた。俺とソフィが勇者に専念するためにも頑張って欲しい。

ちなみに、結局あの後から聖女との接触はない。今日も特に話しかけに来たりなどはなかった。



「では選手の皆さん!舞台に上がってください」


そのアナウンスと共に俺達は舞台へと上がって行った。



「去年とは様子が全く違うな」


「今回は岩場ですからね」


舞台の中は、説明通りの岩場だった。そこら中に背の丈以上の岩があり、地面も土や草などはなかった。さながら岩の上に乗っているような感じだ。


『ではカウントダウンを開始します!』


そのアナウンスが聞こえてきた。周りの景色に夢中になっている場合ではない。もう始まるのだ。集中しなくてはいけない。



『10!9!8!7!6!5!4!』


去年と一緒でカウントダウン中は大きく動いてはいけない。なんか動くなと言われたら動きたくなってしまい、うずうずする。


『3!2!1!0!サバイバル戦スタート!』


「よっしゃ!行くぜ!」


「あっ!待ちなさいよ!」


始まった瞬間にベクア達が右方向に飛び出して行った。どうやらベクアは俺以上に動きたかったようだ。


「行っくる」


「よろしくな」


「ん」


そしてシャナ達は左方向に歩き出した。そして、他の3人も隠れる場所を探すために真っ直ぐ動き出した。


「お兄ちゃんは待機ですよ」


「…わかってるよ」


俺とソフィはとりあえず1時間は待機だ。理由は、居場所をわかる魔導具で表示される点には自分達がどれかは分からない。だから居場所が分かるようにするために、角であるここから動かないのだ。後は勇者からの奇襲も角のここなら前だけを警戒していればいい。

でも、エリーラやシャナから勇者発見の合図を貰ったらすぐに動き出す。だからこの1時間は警戒しながらジールに魔力を渡し続ける。



『1時間経過!』


そんなアナウンスがかかった。まだ勇者発見の合図は来ていない。


「お兄ちゃん」


「ああ」


俺は魔導具を起動した。すると、正方形マップが白く光って浮き出てきた。その中には赤い点もある。


「残りは25人か」


赤い点は25つあった。元々が40人だったので、かなり減ってはいるが、まだ多くいる。多く減った理由はベクアが頑張っているのだろうか?まあ、残りの点の数は今はどうでもいい。



「4人で纏まっている点が無いな…」


「…そうですね」


4人で纏まっていなかったのだ。4人以上で纏まっているのは7人の点だけだった。きっとこれは戦闘中だろう。そうでも無い限りこんなに多くで固まるのは目立つだけだし違うだろう。


「とりあえずは…」


「まだ待機ですね」


勇者がどこにいるか分からない以上まだ待機するしかない。俺は再びジールに魔力を渡し始めた。





『2時間経過!』



「残りは18人」


そしてまた4人組は無かった。ただ、前回とは違い、6人組は存在した。これももしかしたら戦闘中かもしれない。


「次見つからなかった…」


「そうですね…次に4人組が見当たらなければ、数が多い組から潰していきましょう」


「よし!」


もう数も少ないので今から行っても問題ないかもしれないが、とりあえず今はまだ待機だそうだ。ただ、次はどうなろうと動き出す。もうかなりの量の魔力をジールに渡したが、一応まだ渡しておく。



『3時間経過!』


「残り14人」


もし俺達のメンバーが全員残っているとしたら、残りは勇者だけだ。


「4人組がいないな…」


「そうですね」


今回も4人組がいなかった。あるのは7人組の点が1つ、3人組が1つ、2人組が2つだ。2つの点の一方は俺達だ。もう一方はベクア達か?


「向かってきてますね」


「そうだね」


前から7人組が、右側から3人組、左側からは2人組が俺達のいる場所に真っ直ぐ向かってくる。もしかしたら左右の点は一周したベクア達とシャナ達かもしれない。というかその可能性が高い。なぜなら、一通り探して勇者が居なかったら1度戻ってきて作戦を立て直すと言っていたからだ。

前から来ている点は横の点と比べて少し離れている。勇者はこの7人組の中にいるのか?左右の点がベクアのシャナ達なら集まってから前の7人を倒しに行こう。



「お兄ちゃん、警戒してください」


「分かってる」


だが、横の点は敵である可能性もあるから剣を2本抜いてどちらからも攻撃がきても大丈夫なようにした。


「お兄ちゃんは私からの合図があるまで絶対に警戒したまま動かないでください」


「わかったよ」


「来ているのがシャナ達でも、絶対にそうしてください」


「わ、わかったよ」


ソフィはシャナ達が尾行されていることを警戒しているのかそんなことを言ってきた。点が無い以上そんなこともないと思うが、地中に潜ったら点が消えるかもしれないとでも思っているのだろうか?

ソフィは魔法をいつでも放てる状態にして空中に待機させていた。そして悪魔憑きも行った。俺は雷電トリプルハーフエンチャントに、雷電纏を行った。王達は使えないので、これが精一杯だ。



「はぁ…何だよ、やっぱりベクア達とシャナ達じゃないかよ」


横からやって来ていた3つの点はシャナ達で、2つの点がベクア達だったようだ。左右から歩いてきているのが見えた。

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