第243話 帰宅+ソフィア視点
「…あんたに言いたいことが多過ぎるわ」
「あはは……」
俺は笑って誤魔化すしか無かった。確かに言いたいことは山ほどあるだろう。精霊と契約しているのに、獣と悪魔とも契約するのは前代未聞だ。
「今日やったことは明日もやるつもりなのよね?」
「ああ」
明日やるために今日試したのだ。明日使わないと意味が無い。
「なら他の人達も明日のあんたを見て、色々と聞くと思うから私が聞くのもその時にするわ。同じ事を何度も言うのも面倒でしょ」
「ありがとう?」
そしてその日はエリーラに何も聞かれずに王都に戻ってきた。そしてエリーラとも別れて家に帰った。王都に入ってすぐのところに居ないとなると、多分家に居ると思う。
「お兄ちゃん、おかえり」
「ただいま」
ソフィはリビングでゆっくり休んでいた。俺の予想通り急な用事ではなかったようだ。
「俺を帰らせた理由は何?」
「明日の試合の後に言います」
とりあえずは明日の試合に集中しろと言うことだろうか。ソフィはそれだけ伝えると自分の部屋に向かった。何か考え事をしているようだけど、どうしたのだろうか?明日試合じゃなかったら遠慮なく聞いたけどタイミングが悪い。明日の試合のことで悩んでたら俺が聞くわけにはいかない。
その後は特に何も問題なくベッドに入った。まだ少し早いけど、明日のためにもう眠った。
◆◇◆◇◆◇◆
ソフィア視点
《明日の試合でお兄ちゃんのためにできること》
お兄ちゃんが帰ってきた時にそれをずっと考えていた。最初は浅ましくも自分本位で賭けに勝つことを考えていなかった。でも、そうではないはずだ。私の行動原理は、あくまでお兄ちゃんのためになることだ。その賭けに私が勝ったとしてもお兄ちゃんのためにはならないと思う。本当はなって欲しいけど…。なら明日の試合でお兄ちゃんのために私は何ができる?
「お兄ちゃんに本気を出させること…」
これまでの試合ではお兄ちゃんは本気を出し切れていなかった。今日の試合でも新しい剣を試すまでもなく勝っていた。私の役目はそんなお兄ちゃんの本気を、限界以上の力を引き出すこと。これは明日の試合でしかできない。模擬戦では死ぬ可能性があるからお兄ちゃんは本気を出せない。なら死ぬ事がない明日に本気を出すしかない。それは未だ不安要素が多くある勇者との戦いまでにやっておかなければならないことだ。
「なら精霊使いは封じるのは論外」
お兄ちゃんが本気を出すとなったら絶対に必要となるのが精霊使いだ。そして勇者から精霊を引き剥がす時に必要なのも精霊使いだ。それを勇者と戦う予行練習のためでもある明日に封じてしまっては意味が無い。そうしたら、お兄ちゃんが自分の全力を出せないで終わってしまう。その理論でいくとエンチャント系などの戦闘に必須のスキルも封じるわけにはいかない。
「でも勝ちたい…」
お兄ちゃんのためにできることを全てやった上で勝ちたい。それは賭けと私の負けず嫌いがあるから仕方が無い。別に負けず嫌いはどうでもいいかもしれない。でも、どうしても賭けには勝ちたいと思ってしまう。それはお兄ちゃんを愛している以上は許して欲しい。だから封じてもお兄ちゃんに全力を出させられるけど、私には有利になるスキルでなければならない。
「あれなら大丈夫かな…?」
あれならお兄ちゃんが全力を出すことには影響しないはずだ。そして無くなったら私に有利になるはずだ。正直あのスキルはうざい。あのスキルがなかったらと思う場面も多々あった。
「悪魔化…使うことになりそう」
お兄ちゃんの限界以上の力を引き出すには多少追い込まなければならない。そうなってくると私は悪魔化も必要になってくるだろう。でも、お兄ちゃんが限界以上の力を引き出そうと無理をし始めたら止めなければならない。問題はその理性が悪魔憑きと悪魔化を同時にした時に残っているかどうかだ。でも、そこはどうにかするしかない。
私は自分のやるべきことが定まったので、まだ少し早いが明日のために眠りついた。
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