第237話 園内戦3日目
「おい…ゼロ!これはどういうことだ!」
「うん…俺もそう思うよ」
俺の朝はジールに怒鳴られることから始まった。
「俺はちょっと試合のために精神統一するからユグに聞いて」
「…分かった」
俺はなんて説明したらいいかもわからなかったからユグに丸投げした。とりあえず俺は新しい称号の確認を行った。
【三属の王使い】
・精霊王、悪魔王、獣王と契約した者に贈られる称号
[効果]
精霊王、悪魔王、獣王を扱う難易度down
【王の支配者】
・王を支配する者に贈られる称号
[効果]
全状態異常耐性up
精霊王、悪魔王、獣王の能力up
獲得経験値up
「うーん…」
確かに良い称号ではある。ただ、今日、明日の試合ですぐに活躍する称号という訳ではなかった。ぶっちゃけ1番要らない効果は精霊王、悪魔王、獣王の能力upだ。なぜなら現時点でも半分の力も活かしきれていないのにupされても使いこなせない。
「あ、お兄ちゃんおはようございます」
「おはよう」
何てことを考えながらリビングへ行くと、ソフィが既に座っていた。
「今日はその新しい剣の力じっくりと見させてもらいますね?」
「頑張ってね」
今日は翠闇と翠光を使う気は無い。いくら見てもこの剣の能力は分からないだろう。
「これより2日目の第1試合を開始します!」
ソフィと2人で朝食を食べてから一緒に試合会場である闘技場のようなところへ向かった。そしてこれから俺の試合が始まる。
「おいおい、ゼロスはいつから四刀流になったんだ?」
今の俺の姿は腰の横にグラデンから借りている剣を2本付けて、さらに背中に翠闇と翠光を背負っている。周りから見たらかなり変な格好をしているのだろう。
「安心しろ。俺が今日使うのはこの2本だ」
そう言いながら俺はグラデンから借りている剣を抜いて構えた。
「つまり、新しい剣の力を見たかったら抜かせてみろってことか!いいねぇ!さらにやる気が出てきたぜ!」
そう言ってベクアも拳を構えた。そしてアナウンスがかかった。
「第1試合!ゼロス・アドルフォ対べクア・ルキウェル始め!」
「雷電トリプルハーフエンチャント、雷電纏」
「氷雪鎧、獣化」
ベクアは腕と足の部分的な獣化をした。そして身体には氷雪の鎧を装着している。
『さて、ユグやるか』
『うん!』
俺は課題である精霊化をできるようにしなければならない。そのために、俺はできるようになるまでベクアの攻撃を躱し続けなければならない。
「がぁ!」
ベクアが腕や足のサイズを少し変えながら攻撃してくる。隙を作ることも考えずにただ当たないためだけに躱す。
『やっぱりジールの方が…』
『だめ!』
ユグの我儘で俺が初めて精霊化するのはユグでなければダメということだった。精霊化するだけだったら新しい称号のおかげもあって、ジールでもユグでも難易度はほとんど変わらないらしい。だから今はユグで精霊化しようと頑張っている。ちなみにジールには精霊界から魔力を流してもらっている。躱すのと、精霊化で魔力供給を自力でやる余力が無いからだ。
『ユグ渡そうとしながら魔力を全身に流して』
『う、うん…』
精霊化のやり方を簡単に説明すると、ユグに魔力を渡しながら渡した魔力を全身に流すのだ。正直これを聞いても何を言っているのか分からない。
ちゃんと説明すると、ユグに渡した魔力は一応俺の魔力なので操作が可能だそうだ。そのユグに渡した魔力を全身に回すらしい。俺はユグに魔力渡すのと、ユグに渡した魔力を操ることのどちらか一方ならできる。ただ、同時にそれをやれというのが難しい。
『多重思考で頑張って!』
『多重思考はあんまり関係ないから!』
多重思考は複数のことを同時に考えることができるだけ。思考を増やしたところで体は1つなのだから別々の事をできる訳では無い。
「がぁぁ!」
「あっぶな…」
それに精霊化に集中し過ぎると、ついベクアの攻撃が当たりそうになる。どちらにもある程度集中していなければならない。そのバランスが難しい。
『我を握ってみろ』
「え?」
突然ブロスの声が聞こえてきた。あ、剣の中にいても俺と話せるのね。俺は右手に持っていた剣を地面に突き刺して翠闇のグリップを握った。すると、ベクアは警戒して距離を取った。
『一瞬で覚えろよ』
「え?あがぁっ!?」
『ブロス!だめ!1番はユグだよ!』
『分かっている』
一瞬だけだが、ブロスに魔力を渡しながら、ブロスの魔力が流れた。これは俺がユグでやりたかったことと全く同じだ。びっくりして変な叫び声を上げてしまった。
『一瞬だけ悪魔化を発動させた。まだ悪魔化はしなかったがやり方は体で覚えただろ?』
それができるなら初めからそうしてくれよ…。というか、俺のスキルをブロスが勝手に発動させられるのか?これじゃあどっちが支配者か分からない。
『お前も甘いな』
『これくらいの手助けはいいだろう』
『まあそうだな』
俺を通してダーキとブロスが話している。
「ブロス、助かった」
俺は小声でそう呟くと翠闇から手を離した。そして地面に刺さっている剣を抜いた。
「雷縮」
そして今日初めて俺からベクアへと向かっていった。もう躱し続けるのは終わりだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます