第221話 2人での実力
「では、両者準備は良いですか?」
「大丈夫」
「うん」
「…大丈夫です」
「それでは模擬戦開始!」
ソフィが俺とシャナとクラウディアの準備が整っているかを確認してから模擬戦開始を宣言した。
「精霊ユグエンチャント、回復ダブルエンチャント、雷電ハーフエンチャント!」
久しぶりにユグをエンチャントした。すると、体に軋むような軽い痛みがあった。だから回復エンチャントをダブルで追加した。今度は回復に余裕ができたので雷電エンチャントをハーフで更に追加した。
「はっ!」
シャナが俺に向かって鎌を投げ付けてきた。もちろん鎌には鎖も付いている。鎖が付いていなかったら鎌をどっかに蹴り飛ばして武器を取り上げることができるのに…。ちなみにやはりシャナが前衛でクラウディアが後衛のようだ。
「ライトアロー!」
シャナの鎌を躱すと、今度はクラウディアから魔法が飛んできた。それを剣で斬ろうとした。
「あっ…」
しかし、俺には剣が無かった。少し悩んだ挙句、魔法に手刀をした。魔法は避けようと思えば避けれるのだが、今後も避け続けると考えると面倒だ。だから手刀で斬れるかどうかを試すことにした。
「あっ…斬れた」
結果は剣と同じように斬れた。今後は手刀でもいいみたいだ。とはいえ、剣があれば手刀で魔法を斬る場面は無いと思うけど。
「ふっ!やっ!」
「ライトアロー!」
少し戦ってわかったのは、2人が良く連携を取れているということだ。ちゃんとクラウディアの魔法がシャナの戦闘をサポートしている。
「はあっ!」
「ぐふっ……」
でも連携が取れているだけでは俺には攻撃が当たらない。とりあえずシャナを鎌ごと蹴って俺から離れさせた。そして俺はクラウディアに向かって走り出した。
「あわ…わわわ…」
俺が向かうとクラウディアは焦った様子だった。魔法は上手くなったが、未だ接近戦が苦手なのは変わっていないようだ。クラウディアを気絶させてからシャナに降参させて模擬戦を終えよう。
「……リーインパクト」
「っ!ぐっ……」
クラウディアまで後2歩程の場所で危機高速感知が反応した。咄嗟に躱せないと判断して、腕を顔の前にクロスして防御する体勢になった。すると、セミの時のような衝撃波が襲ってきた。セミよりは低威力だが、俺に距離を取らせて、シャナが戻ってくる時間稼ぎをするには十分な威力はあった。でも、急に危機高速感知が発動したので思わずガードしたが、魔力高速感知で今のは魔法だと分かった。焦らずに斬れば良かった。でも今の魔法は今まで見た事がない気がする。
「…いいのね?」
「あっ…つい…でも、いいよ……」
「わかった」
俺に聞こえないくらいの小声で2人が会話すると、再びシャナが向かってきた。
「ホーリーギフト!」
クラウディアが何やら魔法を使ったようだ。クラウディアの魔力がシャナへと流れている。でも、回復魔法では無い。何の魔法だ?
「はっ!」
シャナの攻撃を避けながら何の魔法か考えても答えが出ない。シャナも別にどこか変わったところは見受けられない。でも、シャナの変化は攻撃を受け止めた時にわかった。
「やっ!」
「えっ!?」
シャナ鎌を受け止めると、さっきまでとは威力は違った。倍まではいかないけどかなり増していた。
「雷電纏」
急いで雷電纏を使った。普通に受け止めただけで腕が痺れてしまった。生身の腕で受け止めるのは無理そうだ。
「分からんっ!」
いくら考えたところでクラウディアの魔法の正体が分からない。作戦を変更して先にシャナを倒すことにした。
「くふっ…」
シャナの隙を付いて腹を殴った。クラウディアの魔法を考慮して気持ち強めに殴っておいた。だから回復魔法をされるまで立てないだろう。
「…捕まえた」
「え…!?」
シャナは痛そうに顔を歪ませているが、しっかりと俺の手を掴んで立っていた。しかも掴んだ腕から鎖が体に巻き付いた。
「クラウディア!」
「聖なれホーリーソード!」
クラウディアが10メートルほどの白い剣を魔法で空中に出した。危機高速感知が反応しているので避けるために巻き付いたシャナごと移動するが、照準を合わせられたのか、いくら移動しても剣が向きを変えるだけで俺の方を向いている。
「ぐっ……」
巻き付いた鎖を引きちぎろうとしたが無理っぽい。確かこの鎖はこの国の宝物庫から貰ったものだ。そう簡単に壊れるわけはないか…。なんて事をしている間にクラウディアの魔法は完成に近付いている。鎖が巻き付いているのでこの魔法を斬ることもできないだろう。
「シャナ…お前も巻き添えになるけどいいのか?」
「もちろん」
「アイスウォール!」
シャナを説得しようかと思ったが、無理そうなのでやめた。そしてゆっくりと剣が俺の方へ倒れてきたので氷魔法で壁を作った。でも、これは単なる時間稼ぎだ。この危機高速感知の反応を考えるに俺のレベル1の氷魔法で防げそうにない。シャナと抱き合うような体制であるこの状況に審判をしているソフィが無表情になってきたので早く抜け出さないと二次被害に繋がりかねない。多重思考を総動員して解決策を考えた。
「精霊ジールエンチャント、雷電エンチャント」
魔法の剣が氷の壁をすり抜けた時にやっと解決策が思い浮かんだ。回復ダブルエンチャントを変更して思いっきりクラウディアへと飛び掛った。本当は走って向かおうとしたが、いつの間にか足にまで鎖が巻きついていたので飛ぶしか無かった。ちなみに雷縮での移動はシャナが巻き付いているので出来なかった。そして飛んだ瞬間にエンチャントは全て切った。体の負担が大きいし、今は魔力供給が出来ていないからすぐに魔力切れになってしまう。
その他にもクラウディアの魔法よりも先に俺が魔法で倒すという作戦も思い付いた。しかし、クラウディアの魔防がどのくらいか分からない状況で一撃でちょうどよく気絶させられるかが分からなかった。それともしちょうどよく気絶させてもこの魔法がそのまま落ちてきた場合に当たってしまう。
「ぐへっ……」
俺は飛んだ威力のままクラウディアにタックルをした。その際にカエルが潰れたような、女の子が出していいような声では無い声が出たが気にしないでおこう。そしてそのまま俺達3人は壁に激突した。そして壁を貫通して俺達は外に転がった。
「……勝者お兄ちゃん…?」
「お、おう…」
俺は鎖に巻き付かれたまま気絶したシャナとクラウディアを引きずって練習場へ戻ってきた。クラウディアだけではなく、シャナも壁に激突した勢いで気絶してしたようだ。そのせいで鎖が変に緩んでクラウディアまで絡まってしまった。だから仕方なく2人を引きずってきたのだ。
「これ解いて……」
「はい」
「はぁ……」
「分かりました!」
「が、頑張る…」
絡まった鎖はソフィとエリーラとウルザとキャリナが20分くらいかけて協力して解いてくれた。クラウディアはすぐに解けたのだが、俺とシャナは複雑に絡み付いていたので解くのに時間がかかった。解き終わると、ソフィが2人に回復魔法をかけた。これですぐに目覚めるだろう。
ちなみにあの巨大な剣はクラウディアにタックルした後もそのまま落ちてきたそうだ。そして地面をすり抜けて消えていったらしい。これは何の魔法だ?
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