第162話 レベル99

「はっ!」


「せいっ!」


「だいぶ良くなった」


最初の模擬戦から2ヶ月と少し経った。今日は最後になるかもしれないエリーラとチームでの模擬戦をしている。今日の相手はティヤさんだ。そして俺とエリーラのチームワークは当初と比べると比較にならないほど上手くなった。でもこれをチームワークと呼んでいいかは分からないが…。


「動きが読みにくい…」


結局俺とエリーラは半月ほど経ってもろくに連携ができなかった。連携を無理やり取ろうとしてお互いぎこちなくなってしまっていた。もうならいっそお互い好きに動こうということにしてみた。もちろんそれでも上手くいかなかった。だが、その時にエリーラが好きに動いて俺が俯瞰の目と高速反射を駆使してエリーラに無理やり合わせると、お互いの攻撃が干渉しなくて済んだのだ。その分俺のやることが増えたのだが……。しかし、ちゃんとした連携という訳では無いので、俺たちの動きを先読みするのはとても難しいらしいというメリットもあった。俺とソフィとシャナの3人での連携もそんな感じなのだろうか?


「でも…もう捕まえた」


「あっ…」


得意分野を見た感じで、俺が前衛でエリーラが後衛で戦っている。そして後衛のエリーラがティヤさんの影に捕まったので、そこからは一方的に俺一人が攻められて模擬戦は終了した。



「少しは俺の動きの先読みできないのか?」


「あんたが好きに動けって言ったんでしょ!それにあんたの突発的な意味不明で気持ち悪い動きを読めるわけないわよ!」


俺とエリーラの連携はもちろんデメリットも多くある。今回の模擬戦でエリーラの精霊魔法を5回くらい斬った。ティヤさんの攻撃を避けた瞬間に後ろからエリーラの精霊魔法が来ていると本当に焦る。ゲームのように味方の攻撃は効かないとかがあったら楽なのに……。




「じゃあそろそろ魔物取ってくる」


「行ってらっしゃいませ」


「ありがとう」


そしてティヤさんが魔物を取りに向かった。なぜわざわざ取りに行くのかというと、この結界内で俺がレベル99になった方が俺を守りやすいからだ。いや、結界内と言うよりもエルフの里の中心地でもあるこの城内でという方が正しいだろう。そのために、昨日からだいたい20匹程度Aランクの虫系魔物を連れてきている。連れてくる方法はジュディーさんが浮かせるか、ティヤさんが影から操るかしている。ちなみに余談だが、俺がレベル99になってすぐにレベルをもう1つ上げて、レベル100にさせて進化するという作戦案もあった。しかし、これは経験値的に実現がとても難しいのと、魔族がその作戦を知った時になりふり構わず邪魔してきそうなので却下となった。







「はい、どうぞ」


そして1時間ほど経つと魔物を持ってティヤさん達がやってきた。大体今は13時くらいだ。この時間の理由は魔族達が来る時に明るくないと、ティヤさんの精霊魔法が使いにくくなるからだ。そのタイミングで魔物の拘束を解いた。なぜ拘束を解くかというと、ただ無抵抗の魔物を倒すと、ステータスが上がらないかもしれないからだ。



「はっ!せいっ!」


俺が虫系の魔物が好む匂いを元から付けていたので、ほとんど全ての魔物が俺に向かってきた。それを俺は1匹残らず討伐した。もちろん俺に向かってこなかったやつもしっかりと討伐した。


「レベル99になったか?」


「いや、なってない」


ちなみにレベル99になったら、俺はすぐに大声でそれを報告する。そしてティヤさんとジュディーさんの2人が素早く残りの魔物を倒す。そしてエミリーさんが拡声の魔法を使ってエルフ達にそれを知らせる。



「じゃあまた明日だな」


「そうだね」


そして明日も同じような1日を過ごした。しかし、魔物を20体ほど討伐してもまだレベルは上がらなかった。だが、その次の日についにその時がやってきた。




『ピコーン!』

『レベルが上がりました』


「レベルが上がった!」


そう俺が言うと、2人は一斉に残りの魔物を討伐した。そしてエミリーさんは魔法で声を拡声して、里全体に声を届けた。そして少しの間静寂が続いた。しかし、その静寂はすぐに終わった。



ガシャンッッ!!!!!



「…結界が破られた」


ガラスが割れたような音が耳を塞ぎたくなるほどの大音量で聞こえてきた。その音を聞いたエミリーさんが苦虫を噛み潰したような顔でそう言った。そして騒動はこんなことで終わるはずはなかった。



ドゴンッッ!!!



そして結界が破られた音の余韻が消えた頃に今度は俺たちがいる訓練所の壁が破壊される音が聞こえてきた。



「あなた、迎えに来たよ」


そして破壊された壁から、イムが後ろに2人の魔族を引連れてやってきた。


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