第97話 サバイバル戦2

「オラッ!!」


「はぁっ!」


「ファイアボ…うわっ!!」


俺と王族最強は縦横無尽にエルフの陣地で暴れ回っている。他の生徒は最初は攻撃をしようとしていたが今では遠くに避難してこそこそと魔法を放とうとするだけだ。そしてそれも俺達に邪魔をされて上手くいかない。


「突ぷ……わぁ!」


そしてエルフの陣地に残っていた1人のエルフにすら全く手が出せないほど周りを巻き込んで暴れている。


「お前!いいな!想像してた以上だ!名前はなんて言う!?」


「ゼロスだ!ゼロス・アドルフォ」


「俺はベクア・ルキウェルだ!」


名前に興味が無いほど俺に興味がなかったようだ。一応俺達は選手宣誓をした代表者の名前くらいは知っている。ちなみに最上位精霊と契約しているエルフの名前はエリーラ・アルメレクで、選手宣誓をしたドワーフの名前はグラデン・デュライトだ。


「俺たち獣人の国で俺の部下にならないか?」


「俺は自分より弱いやつの下になる気は無い」


「言うじゃねーか!」


別に自分より弱かろうが誰かの部下になるのは別に構わない。俺は誰かの部下になる時に戦闘力なんて特に気にはしない。ならなぜこんなことを言ったかというと作戦遂行のためにできるだけ挑発する必要があるからだ。


「負けたら引っ張ってでも連れて行くぞ!」


「勝ってから言え!!」


挑発とはいえあまり言い過ぎるとベクアは本気で俺を連れて行きそうな雰囲気なのでここは流しておく。それにしてもベクアはスロースターターのようで、だんだん攻撃が激しく防御するのが難しくなってきた。ダブルエンチャントをすればまだまだ大丈夫なんだろうがまだまだ時間があるのに魔力切れなんて起こすわけにはいかない。そして魔力切れの心配が無いとしても代表戦のために手札は全部切りたくない。だからそろそろ来てくれと願った。すると俺の要望通り待っていたやつが来たようだ。



「あんた達…私の陣地で何をしているの!」


「オラッ!」


「はぁっ!」


俺は内心ニヤリと笑いながら俺らの陣地の方からやってきた最上位精霊と契約しているエリーラを無視した。まあ確かに怒っているのも無理はない。エルフの陣地の地面はあちこちにクレーターができていて木々も倒れて転がっている。


「私を無視するな!」


そしてエリーラは精霊魔法を放とうとしているのを見て俺とベクアは咄嗟に離れた。


「水刃!!」


「オラッ!」


そしてエリーラの精霊魔法はベクアに向かって放たれた。しかしその魔法をベクアは全て殴り消した。


「はぁっ!」


「がぁっ!!」


そしてその影響でできた隙をついてベクアの脇を斬りつけた。


「儂も交ぜてくれよ!」


「危ねっ!!」


そして今度は俺がベクアに攻撃した隙にドワーフの選手宣誓をしたグラデンがヘッドは直径1m以上ありそうな巨大なハンマーで攻撃を仕掛けてきた。称号の俯瞰の目のおかげでやって来ているのは見えた。しかしベクアを殺る方が優先度が高いと放置していたが、巨大なハンマーを持っている割にスピードが早かったせいで回避が少し遅れて当たるところだった。あれまともに食らったら一撃退場だな…。



「ゼロス…てめぇ…痛てぇじゃねぇか…」


咄嗟に横に飛んで威力を減らしたとはいえ、刃が付いている剣で腹を斬ったのに少し血が流れているだけで平然としている。攻撃する瞬間くらい隠さずダブルエンチャントにすれば良かったかもしれない。


「ソフィ!シャナ!俺らから見て右の陣地だ!至急応援を頼む!」


そして俺は慌てたようにネックレスを握りしめてそう叫んだ。


「俺だ!俺らから真正面だ!さっさと来い!ここで全員潰すぞ」


「あなたも私達の陣地に来なさい」


「面白い奴らがいるからお主らも来い」


そして俺の真似をして他の奴らも応援を呼んだ。この隙に球を取られる可能性は考えてはいるだろう。しかしここにエルフの球がある時点で時間経過を待たずに試合終了はない。なら他の国を全て場外に追いやってからゆっくりと球を集めればいいと考えたのだろう。まあドワーフはただの興味本位で呼んだのかもしれないが…。

そしていち早く到着したのは獣人の2人だった。どうやら自軍は守らず、すぐ近くで他の陣地攻めていたのですぐそばにいたようだ。


「雑魚どもの処理は全部お前らに任せるぞ!抜かったら許さねーぞ!」


「おっす!」


ベクアはそう言うと俺に向かって走って来た。それを皮切りにグラデンとエリーラも動き出した。


「さっきのは久しぶりにちゃんと痛かったぞ?借りは10倍で返してやるぞ!」


「じゃあ返せ無いほど貸し付けてやるよ!」


そうしてエルフの陣地で四つ巴の戦いが始まった。きっと観客はこの状況にすごく盛り上がっているんだろうな……。



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