第98話 サバイバル戦3

「そぉっら!」


「はっ!っ!!?」


真っ先に向かってきたベクアの攻撃を受け流した。しかしすぐにまた危機感知が反応した。しかし俯瞰の目の範囲内には危機になるようなものは無い。


「そぉぉぉい!!」


グラデンの大きな声の方向に目を向けると巨大な岩を上へ投げてそれをハンマーで打とうしているのが目に入った。


「ストーンウォール!」


それを見て急いで魔法で壁を作った。岩が爆発するドカンッ!という音の後に破片が魔法の壁に当たる音が響いてきた。


「乱水刃!」


岩を破壊した後にこちらに向かってきているグラデンの対処をしようとしたところでエリーラが俺たち3人に向けて無作為に水の刃を放ってきた。所詮水なので威力は低めかと思ったが水刃は当たった木。すり抜けるかのように貫通していた。


「ん?」


こんな威力なのに危機感知が全く反応しないので故障でもしたのかと慌てたが俺の近くには全く水刃は来なかったので故障では無いらしい。というかスキルが故障するわけがなかった。


「さっきからなんなのよ!ディーネ!」


「だから無理なんだよ〜〜」


「なんで無理なのよ!!」


「ウィンドカッター!」


そして、何か揉めているエルフと精霊に、今がチャンスとお返しとして風の刃を放った。


「水壁」


しかしそれは突如現れた水の壁に防がれてしまった。魔法がダメなら剣で…と思ったがすぐ後ろからドワーフが来ているのでそちらの対処をしないといけない。いや!それよりもエルフが何やら集中し始めてるぞ!俺じゃなくてまずあいつの対処をしろよ!


「そぉい!」


「はぁ!…ちっ!」


後ろから振られたハンマーを躱してグラデンを斬ろうとしたがベクアが横から蹴りかかって来たので攻撃を中止して後ろに下がって距離を取った。するとベクアはグラデンを蹴ってこちらに飛んできた。


「素直にちゃんとそいつを蹴れよ!」


「俺の相手はお前だ!ゼロス!!」


「サンダースピア!」


絶賛向かって来ているベクアに魔法を放った。ベクアは地に足を着いていない状態で速い雷魔法を防ぐのに苦戦した。そして全てを防ぐことができた。たが、そのせいで隙だらけだ。


「火エンチャント」


「氷鎧」


攻撃の瞬間に雷と火のダブルエンチャントをした。ダブルエンチャントはあまり見せたくなかったが、ここでベクアを場外に出せるならしょうがないと判断した。しかしベクアは腹に氷でできた鎧のようなものを腹に作った。それに阻まれて斬ることはできなかった。


「ゼロス…何をした?一撃で俺の氷鎧にヒビが入ってやがる」


口では文句を言っているが顔は今日一で笑っている。まるですごく面白いおもちゃを見つけた子供のようだ。


「津波!!」


「やべ!」


ベクアに集中し過ぎてエリーラのことを放置してしまった。そして大量の水がここにいる全てを排除しようと流れ出した。


「むむ?」


そしてこんな状況なのにまた危機感知は全く反応していない。


「よし!」


俺は自分の危機感知を信じて、全てを飲み込んで向かっくる津波になんの防御も取らなかった。すると津波は綺麗に俺のところをで隙間ができて俺は全く水がかかることすらなく津波はすり抜けた。


「だからディーネ!!どうなってるのよ!」


「うぅ〜〜〜」


「一体どうなっているんだ?」


俺がすり抜けたことを見てエリーラは精霊に文句を言っているのでエリーラ自身が狙ってやったわけでは無いみたいだ。そして俺とエリーラと台座以外全てが無くなっている。周りの木々すらも全て流されたようだ。


『ゼロくんに攻撃しない理由は簡単だよ?』


『わかるのか?』


『うん!』


理由が分からず悩んでいたが、ユグには理由が分かるようなので教えてもらった。


『それはゼロくんが私と契約しているからだよ!』


『え?』


『精霊って意外と上下関係が厳しいんだよね〜。そして私は精霊の中の王様である精霊王なんだよ?その王様に攻撃なんてできないよね?』


『でも今は敵として戦ってるけどそれでも攻撃しないの?』


『ゼロくんはいきなり王様と模擬戦を始めます!って状況になって、さぁ!攻撃しなさい!って言われて攻撃できる?』


『できないな…』


『そういうこと!』


俺は精霊から全く攻撃されないらしい。精霊魔法を得意とするエルフの天敵のようなものになったようだ。


『ちなみにだから精霊王と契約した者は必ずエルフの国で王様になる決まりなんだよ?』


『へぇ〜そうなんだ』


確かに精霊王と契約しているエルフが国を乗っ取ろうとして攻撃をしたとしても誰も精霊魔法でそのエルフを攻撃できないので最初から王にした方が楽なんだろう。


『だってユグが精霊達にエルフと契約するなって言ったらエルフ達は精霊魔法使えなくなるもんね』


『まじか!』



王にするのが楽とかではなく、王にしなくても王と等しい権力を与えられるのか。だから王にしてもしなくても同じなら王になってもらった方がマシということか。


『だから種族関係なく精霊王と契約していた者はエルフの王様になるんだよね〜』


『え…?ちょっと待って?』


『どうしたの?』


なんか聞き捨てならない言葉がユグから飛び出した気がする…。


『さっきなんて言った?』


『エルフの王様になる?』


『もっと前、1番最初』


『種族関係なく?』


『それ!種族関係ないの!?』


『そうだよ〜?』


やばいやばいやばい!バレたらまずい!何としても俺がユグと契約していることは隠し通さなければ!俺はエルフの王様になる気はさらさらない!


「もういい!私がやる!」


「ん?」


俺がユグと話し終わったタイミングでエリーラ達の討論も終わったようでレイピアを構えて向かってきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る