第90話 移動開始

「応援に行けなくてごめんね」


「大丈夫ですよ」


「いい報告期待しててね!」


「ありがとう。ところで準備は大丈夫?忘れ物ない?」


「大丈夫だよ。行ってきます」


「行ってきます」


「気を付けてね」


今日はもう対校戦開催国は神聖タグリオンに行く日の朝だ。そして家を出る時に次男のジャドソン兄様がお見送りをしてくれた。ジャドソン兄様は何かの研究の途中でどうしても見に来ることはできないみたいだ。そして今日まで対校戦参加メンバー達はよくソフィの若干スパルタな特訓を頑張っていた。移動中は今までより少しは休めるだろう。今のうちに休んでおいてくれ。もちろん俺とソフィとシャナも各自でパワーアップに努めていた。練習場でソフィやシャナと模擬戦をしたりもした。

その時に思ったが避雷針という称号は結構複雑で面白いということだ。少し疑問になっていたことで俺の雷魔法も避雷針に反応するのかという疑問があった。これが反応すると俺は雷魔法を使うことが実質できなくなってしまう。反応するな反応するなと思いながら雷魔法を放ったらちゃんと反応しなかった。しかし反応しても少し面白かったかも?と思った瞬間に俺の放った魔法が急に俺の元へ進路を変えて向かってきた。その時は効かないとわかっていても一瞬焦った。どうやら俺が放った雷魔法は避雷針の効果が発動するかを任意で決められるらしい。しかしソフィの放った雷魔法は強制的に俺の方に向かってくる。そしてジールが放った雷魔法も任意で避雷針の効果を決められた。例が少ないのでまだはっきりとは分からないがきっと俺と俺と契約している精霊の雷魔法なら避雷針を任意で決められて、それ以外は任意で決められないのだろうという結論になった。

そして俺に向かってくる雷は威力が上がれば上がるほど向かってくる速度が上がっていく。また、俺に向かってくる速度は段々と速くなっていく。なので効果範囲である50mギリギリで放つと俺にぶつかる時にはものすごい速度になっていた。ちなみに俺がその速さの雷を食らっても衝撃とかは感じなかった。そしてこの効果は俺の高速反射の練習にピッタリだった。避雷針の効果で俺がいくら避けても雷は俺の方に向かってくる。しかも段々と速度も上がっていく。なので俺の反射神経の限界に挑めて楽しかった。最近の練習場で1人でこれを永遠とやっていた時は周りの目が少し痛かった。



「あれ?騎士団長?」


「おっゼロス達来たな」


今日の集合場所である学園のグラウンドに行くと騎士団長がいた。そしてその他にも騎士のような格好をした人達もいる。騎士と冒険者が護衛するというのは聞いていたが騎士団長までもが護衛するとは聞いていなかった。


「騎士団長も護衛をしてくれるんですか?」


「ああ。お前達の行き帰りの護衛をするんだよ」


仮にも国を代表して行くわけなのでその道中でもし問題が起きたりしたらこの国が軽んじられるらしい。だから騎士団長が直々に護衛をするらしい。国関係って色々と面倒なんだね…。


「国王様直属護衛軍がいるから1ヶ月国を開けるくらい問題ないんだ」


「そうなんだ〜!」


「ただ…対校戦が始まってから終わるまでは有給を使ってることになるのがな……」


「あはは…」


確かに試合中は観戦するだけで護衛はほぼしないということになるのだがそこが有給になるとは少し可哀想である。


「ゼロスちゃん久しぶり」


「あっ!ティラさん」


そして急に後ろから両肩に手が置かれて話しかけられたので振り返るとそこにはティラさん達パーティがいた。


「これから移動の2週間よろしくな」


「よろしくお願いします!」


ウォレスさん達パーティも護衛をしてくれるとなると安心できる。


「では全員揃ったな!」


そして少し談笑していると学園長から声がかかった。


「これより我々は対校戦に向かう!今年は優勝して帰ってくる!応援しててくれ!」


「「「がんばれよー!!」」」


学園長が出発の合図をすると学園校舎付近に集まっていた生徒たちから様々な応援の言葉が投げかけられた。その声を聞きながら俺たちはそれぞれ馬車に乗った。

今回の移動は馬車十数台なのでとても大所帯だ。なぜなら対校戦メンバー以外にも治療役の人や貴族とかだと側仕えなどがいたりする。ちなみに俺とソフィとシャナにはいない。付けようか?と聞かれたが別に冒険者をやっている時にいないのに、今回わざわざ付けてもらう必要もないので遠慮しておいた。こうして俺は初の他国への2週間の移動が始まった。ちなみに安全確保のために夜は必ず街の宿に寄るのでこんなに時間がかかってしまう。しかし、普通に野宿をすればいっても、隣国なので1週間で付いてしまう。俺の住んでた街から王都までとほとんど変わらないじゃん…。


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