第89話 提案
「ゼロは雷が1番の武器のくせに雷に弱いのな」
「そりゃあ…雷魔法使ってる人俺とジール以外で見たことないもん」
作戦会議の日の深夜特訓でジールにボコられている時にそう言われた。
「ソフィアちゃんなら取得できるじゃないのか?」
「ちょっと聞いてみる」
そして俺は瞑想のようなことをしているソフィに話しかけに行った。ソフィならもしかするともう既に取得していると言ってもおかしくない気がする。
「ごめん、ちょっといい?」
「はい、なんでしょうか?」
「雷魔法ってまだ取得してないよね?」
「はい。まだ取得していません」
「なら教えるから取得しない?」
そう言うとソフィは少し下を向いて考え出した。しかしすぐに俺の方を向き直した。
「ゼロ兄様は雷魔法を教えられるのですか?」
「あっ」
俺はどこかの神(笑)のせいで雷魔法を生まれた時から取得していた。だからどうすれば取得できるとかは分からない。
「なら俺が教える」
ジールが俺以外から見えないモードを解除してそう言い出した。
「いいんですか?」
「ああ。それが後でゼロのためにもなるからな」
「ならお願いします」
「おう」
そしてジールはソフィに雷魔法を教え始めた。俺は暇になった事だしソフィの真似して瞑想でもしようかな?
「ならゼロくんには私が稽古つけてあげるよ!」
「ふぇっ!?」
「じゃあ行くよ!」
「ちょ待っ!雷エンチャント!光エンチャント!」
有無を言わさずユグが俺に向かってきた。俺は急いでスピード特化のダブルエンチャントをした。
「やっぱりゼロくんは反射神経いいね!」
「……」
やばい…ヤバすぎる。ジールと比べて攻撃が大振りなので隙ができたりしている。しかしジールと比べて手加減が上手くないので一撃当たっただけで軽く骨が折れそうだ。そして攻撃の時は思い出したようにスピードは遅くなるが、攻撃までの動作は目で追うのがギリギリなくらい早い。もう話す余裕すらない。
「すごい!全然当たんないよ!私も早く魔法を使いたいな〜」
まだユグに魔力を渡せるほど魔力がなくてごめんね。でも今に限っては魔法を使われないのは助かっている。そして俯瞰の目でジールがこっちを見て笑っているのが見えている。笑ってないで早く止めろよ!そしてソフィはユグが見えてないので俺が慌ただしく動いているのを心配そうに見ている。心配そう見るくらいなら止めてくれって…。
「もう…無理……」
「随分頑張ってたな!」
「ゼロくんおつかれ!」
ユグの攻撃を避け続けるという謎の特訓が始まってから1時間ほど過ぎた。もちろんダブルエンチャントを1時間も持続なんて出来ないので10分おきに10分間休憩はしていた。なんか新しい称号でも手に入るかと思ったが手に入らなかった。
「雷魔法を取得できました」
「おめでとう…」
そしてこの1時間だけでソフィは雷魔法を取得した。ソフィ曰く前から雷魔法を取得できるように特訓をしていたようだがそれにしても早い。ジールの教えがいいのかソフィが凄いのか。まあ両方か。
「よしっ!ならこれから俺とソフィアちゃんとでお前に雷魔法を放っていくぞ」
「ちょっ!俺は見ての通り疲れきってるんだけど!」
「ならちょうどいいな。別に動かなくていいから楽だろう」
そう言うとソフィとジールは俺から少し距離を取って魔法を放とうとしている。ソフィも何も言わずに魔法を放とうとするということはジールに何か吹き込まれたな?
「轟け!サンダーボール!」
「黒雷」
「いや!それは死ぬ!」
ソフィのサンダーボールは受けたがジールの黒雷は腰にある剣を振って消した。
「おい、斬ったら意味ないだろ」
「お前のは死ぬわ!」
ついお前呼びしてしまうほど焦った。オークを跡形もなく消し飛ばした魔法は無防備で食らうのはさすがにやばい。
「俺はちゃんと死なないように調整している!それにこれを食らうといい事あるぞ」
「わかったよ!回復エンチャント!氷エンチャント!」
ジールの「俺は」という言葉に信憑性があったのでダブルエンチャントをして黒雷を食らうことにした。
「轟け!サンダーボール!」
「黒雷」
「がっ……」
身体中に針で軽く刺され続けるような感触がある。ただジールが言っていたように死ぬことは絶対になさそうだ。
「まだまだ行くぞ」
「あー!もう!よっしゃ!じゃんじゃんこい!」
もうこうなったら自棄だ!ジールが言ういい事があるまで何度でも食らってやる!
「轟け!サンダーボール!」
「黒雷」
「みゃっ……」
「轟け!サンダーボール!」
「黒雷」
「ぴっ……」
「轟け!サンダーボール!」
「黒雷」
「ぽっ…ん?」
4度目で雷の感触が変わってきた。身体中に当たっている針のようなものが俺の中に溶け込んでいるような感触があった。
『ピコーン!』
『雷吸収Lv.1を取得しました』
『避雷針を獲得しました』
「轟け!サンダーボール!」
「黒雷」
「ちょっと待って!」
アナウンスを聞きいていてストップを言いそびれてしまい、魔法が放たれてしまった。
「あー……?」
しかし今回の5度目は最初から全く痛みがない。むしろ全身をマッサージされているかのように気持ちがいい。
「おっ!どうやら何か取得できたようだな」
「何が取得できたのですか?」
「雷吸収だね」
称号はこんな簡単に獲得することはまず有り得ないので称号は隠しておいた。
「まさか耐性じゃなくて吸収を取得するのか…」
「では吸収効率を調べましょう」
今度はソフィと俺が自分の前にステータスを表示してどのくらい吸収できているのか数えることにした。おっ!雷吸収はユニークスキルのようだ。
「轟け!サンダーボール!」
「あっMPが2増えた」
「私のMPは4減りました」
どうやら今の状態では放たれた雷魔法に使った魔力を半分吸収できるようだ。
「それと雷魔法が勝手にゼロ兄様の方に向かって行ったのですがそれも雷吸収の効果ですか?」
「ちょっと待ってね」
そして俺は急いで称号の避雷針を見ることにした。
【避雷針】
・何度もその身に雷を受け続けた贈られる称号
[効果]半径50mの雷を全て自分に寄せ付ける
「ウン。雷吸収のコウカみたいダネ」
「そうなんですか?」
「そ、そうだよ」
危ない。つい一部が片言になってしまった。というか雷吸収を取得できたから結果として良い称号になった。しかし雷吸収が無かったらまじでデメリットしかない称号だぞ。こんな称号がまだほかにもあるのなら30個しかセットできないのも少し良い気がしてきた。まあソフィに雷吸収の効果だと言ってしまったし、俺にとっては良い称号なのでウルフキラーを外してこの称号をセットした。でも雷魔法は俺とソフィとジール以外で見たことないから使う場面あるかな?
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