第84話 野営

「この辺でいいですよ」


「ほい。なら銀貨1枚」


「はい。どうぞ」


「まいど!」


「では明日の14時にまたここでお願いします」


「はいよ!」


依頼の場所の近くまで乗っけてくれた御者がそう言って帰って行った。明日も頼んでいるが時間が20分過ぎても俺たちが来なかったら帰っていいということになっている。


「じゃあリザードマンを探すか」


「そうですね」


「ん」


今は昼少し過ぎたくらいなのでまだまだ時間はあるので依頼の場所までここからは歩いて向かった。


「見つけた…」


「どこ?」


「あっちの方」


依頼の場所である岩場でまだ目視では見当たらないが、スキルでシャナが見つけたらしいのでそこまで案内してもらった。


「あれか…」


そしてシャナの案内してもらうとそこには濁った緑色をしたトカゲが二足歩行になったような想像通りのリザードマンがいた。ちなみにリザードマンのはC-ランクだ。オークがDランクなのでオークよりは強いだろう。俺たちはまだDランクなのでソロでこの依頼は受けられないがパーティとしては受けられる。


「よしっ!」


いつものフォーメーションでいくためにまずは俺が飛び出してリザードマンに向かっていった。


「キシャー!!」


「はっ!えっ…」


リザードマンはどこで拾ったのか細長い石でできた槍のようなものを振ってきたので、まずは剣で受け止めてから押し返そうとしたらその槍は簡単に折れて勢い余ってリザードマンの腹を斬ってしまった。


「シャッ……」


そしてそのままリザードマンは倒れてしまった。


「…リザードマンくらいなら私たちは一人でやっても問題ないみたいですね」


「ん」


「ありがとう…」


なんかソフィに気遣われてしまった。実際エンチャントも使わずにこれなのでリザードマンくらいなら1人でいいだろう。その後は見つけたら1人ずつ順番に倒して行った。


「今日はこのくらいにしようか」


「はい」


「ん」


今は17時過ぎくらいなので切り上げるにはそろそろだろう。そして野営をするために見晴らしがいい場所まで移動した。


「では見えなくならないうちに野営の準備をしましょう」


「おう!」


そして俺たちは野営の準備を始めた。1番先に魔物が寄り付きにくくなる魔道具を起動した。Dランクの魔石でも一夜は効果がある優れものだ。ただBランク以上にはあまり効果がないので見張りは必要だろう。


「ゼロ兄様もテントを張るのですか?」


「え?うん」


「私たちのテントなら3、4人位は寝られるので私たちと同じテントでいいですよ?」


「いや!俺とソフィは兄妹だから問題ないとしてもシャナはダメでしょ」


普通に考えて俺とソフィでもダメだと思うが百歩譲って俺とソフィはいいとしても王族であるシャナと同じテントで一夜を明かすのはまずいだろう。


「ん?私も問題ない」


「いや!ダメだから!」


そう言って俺は俺用の2人用のテントを作り始めた。なぜ2人用かと言うと何かあった時のために動けるスペースは確保しておいた方がいいとウォレスさん達に言われたからだ。きっとソフィ達のテントが人数よりも大きいのもそれが理由だろう。


「私もシャイナもいいと言っていますよ?」


「ダメったらダメ!」


「わかりました…」


どうやらやっとソフィもわかってくれたようだ。


『ピコーン!』

『へたれを獲得しました』

『称号が上限を超えました。外す称号を選んでください』


「っ!!」


「どうしました?」


「なんでもない!!」


誰がへたれだ!!誰が!もし俺が偽装を持ってなかったら誰かに鑑定された時に「あっ!あの人へたれなんだ〜」って思われるだろうが!今すぐ効果を確認したいがまずは野営の準備をしよう…。


「見張りの順番はどうする?」


干し肉やドライフルーツなどを食べながら平常心を装ってソフィ達にそう切り出した。


「では常時2人は見張りに着くとして9時から3時間おきに誰か変わるというのはどうですか?」


「それでいいと思うよ」


「ん」


1人だったらもし寝落ちした時に魔物が来てしまったら大変なので最低でも2人は見張りに着くことになった。


「なら俺は最初と最後のふたつをやるよ」


「じゃあ私は最初とその次の真ん中」


「では私は残った真ん中と最後をやりますね」


やはり3人だと3時間しか眠ることが出来ない。俺は不眠不休の称号を持っているから大丈夫だがほかの2人が少し大変そうだ。



「では早速おやすみなさい」


そして土魔法で周りに落とし穴のようなものを作ったり、塀を作ったりしていると9時なんてあっという間にやってきたのでソフィが寝るためにテントに向かった。そして少し見張りをやっているとシャナがうつらうつらしてした。


「30分後には起こすから少し眠ってもいいよ」


「ごめん…」


そう言うとシャナは俺の膝に頭を乗せて少し眠った。こうなってしまうと2人体制の意味が無いような気がするが俺なら大丈夫だろう。俺はこのタイミングで急いで称号を確認した。


【へたれ】

・へたれの者に贈られる称号

[効果]危機感知能力上昇、魅了耐性上昇



「ちくしょう!!!」


シャナを起こさないように小声ではあるが自分の気持ちを全力で声に出した。意外と効果がいいせいでこの称号を外すことができなくなってしまった…。泣く泣くこの称号をセットしてゴブリンキラーの称号を外した。


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