第83話 情報

「ソフィはあれで満足?」


「何のことでしょうか?」


「俺をリーダーにするよう入れ知恵をしたのはソフィだよね?」


周りの反応的にも普通は優勝者がリーダーをやるのが当たり前みたいな感じだった。だったら今回も今までみたいに深く考えずにリーダーはソフィにしたはずだ。それなのに今回は違ってくるとなると誰かが諭したと考えられる。


「私はそれとなく武術と魔法の両方を得意の人がリーダーにふさわしいと言っただけですよ?」


「いや、絶対それのせいだよ!」


やはりソフィが何かしていたようだ。しかしずっと俺といたソフィにそんな時間はなかったはずだ。


「でもそんな話いつしたの?」


「試合後の治療が終わった時です」


「なるほど」


つまり俺が寝ている間に話を済ませていたようだ。相変らず手が早い。


「今回のことは別にいいとしても今度からは俺に関する事なら勝手にやらないで俺に相談してほしい」


「はい!わかりました!」


ソフィのせいでいつか気が付いたらものすごい地位に担がれていそうで怖い。そして軽く怒ったつもりなのにソフィは嬉しそうにしている。


「明日から学校始まるまで魔物狩りに行く?」


「行く」


「行きましょう」


来週は学園に行かなければならないが授業はなく、対校戦の開催国まで2週間ほど移動しなければならないのでその準備や対校戦参加メンバーと顔合わせと軽い連携確認などやることが盛りだくさんだ。そのためしばらく冒険者として魔物を狩るなんてできなくなる。


「どうせなら泊まりがけで少し遠くの依頼を受ける?」


「いいですね」


「ん」


今までは休みは2日間たったので何かあって予定が1日でも伸びたりしたら学業に支障が出るのでできなかったが、今回は3日あるのでできるだろう。


「じゃあまた明日」


「さようなら」


「ん」


そしてシャナと別れて家に帰った。また夜中にジールに殴られ……特訓を付けてもらったおかげで今夜も快眠だった。


「じゃあ依頼見るか」


「はい」


「ん」


そしてギルドで集合して一緒に依頼を見ていた。


「ゼロス〜準優勝おめでとう?」


「あ、ありがとうございます…」


後ろからギルド長がいきなり現れてきた。もう慣れてしまったがこれはきっと精霊の力なのだろう。そしてあまりギルド長には会いたくないと思っていたが遭遇してしまった。


「ゼロスはいつから精霊降臨できるようになったのかしら〜?」


「………」


「いつも誤魔化してるけどいつになったら詳しい説明をしてくれるのかな〜?」


「………」


一瞬しかジールをエンチャントしていないのにやはりギルド長にはバレていた。それにジール達からも聞いたがエンチャントするのと精霊降臨というのをするのはほぼ同じのようだ。ただ精霊降臨は何年もしくは何十年とそのために努力しなければできないらしい。そう考えるとエンチャントは裏技みたいなものだ。そして2人の精霊と契約できた良い言い訳が思い付かないのでいつも誤魔化してしまっている。それに察している可能性は高いが俺の精霊のランクも聞いてくる。ちなみに一応ギルド長の精霊は闇の最上位精霊らしい。その精霊が頭を下げて敬語で話したという時点でバレてるんだろうな…。


「ゼロ兄様この依頼はどうでしょう」


「どれどれ!」


「このリザードマン討伐なのですが…」


「よしっ!それにしよう!」


話を逸らせる絶好の機会だったので全力で話に乗った。そしてソフィが選ぶだけあって実際に良さそうな依頼だったのでこれにすることにした。


「あーあ、せっかく対校戦の相手の情報を教えてあげようと思ったのに〜」


「対校戦から帰ってきたらその時は絶対話しますから…」


後ろからギルド長がそう言ってきた。多分そろそろギルド長にはある程度は話さなければならないので話す約束をして情報を貰えるならいいだろう。


「言質取ったわよ?」


そう言ってニヤッと悪そうな笑みを浮かべると約束通り情報を話してくれた。


「噂の王族最強と言われている獣人の第2王子と最上位精霊と契約したエルフの第1王女は余っ程のことがない限り参加は確実よ」


まあそうだろう。この国にまで噂が来るとなれば、きっと開催国ではその話で持ち切りだろう。ここで急に出場しないというのはないだろう。


「そしてソフィちゃんは少し厳しいかもしれないけれど、あなたが最上位精霊と契約したからって調子に乗ってるエルフのガキごときに負けることはまず無いわよ。だから煽って舐めプして格の違いを教えてあげてからボッコボコに叩きのめしなさい」


「あ、ああ…」


この人はエルフに何か恨みでもあるのだろうか?しかしギルド長が言うのだからエルフには勝てるみたいだ。


「問題は王族最強の獣人なのよね…はぁ…」


「え?」


なんかギルド長がこっちを見てため息と共に憐れむような視線を向けてきた。


「あなたとは絶対に相性が悪いのよね…」


「え?」


「アドバイスとしては魔法を放っても無駄だから最初から全力で相手の土俵である接近戦を挑まないと厳しいということくらいかしら?」


「それってアドバイスになってないんじゃ…?」


エルフの情報はやたら詳しい気がしたが獣人の情報は中身が結構薄い。


「ゼロ兄様?早く行きますよ!」


「あ、ああ!」


もう俺たちはパーティとして認知されているし、ギルド長と話しているということで俺の冒険者カードを渡してソフィ達に依頼の受注をしてもらった。


「言っても学生のお遊びなんだから思い詰めないで楽しんできなさい」


「ありがとうございます!」


「私ももしかしたら調子に乗ったエルフがあなたにボコられるのを見に行くからね〜」


「あ、はい…」


「ゼロ兄様!」


「今行く!!ありがとうございました」


「行ってらっしゃい。気を付けてね」


「はい!」


やはりギルド長はエルフに何らかの恨みがあるみたいだ。そのギルド長に情報のお礼を言って、待っているソフィたちと合流してから依頼の場所まで馬車で向かった。


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