第74話 本選4日目
「ゼロ兄様…そろそろ起きた方がいいですよ…」
「あとちょっと…」
「しょうがないですね…あと少しですよ」
「ん…」
昨日はソフィとあのまま家まで帰って…それから明日に備えてその日はソフィとのんびりして…それから寝ようとしたんだけど…決勝戦の楽しみと緊張で眠るのが遅くなったんだよな…。
「もう5分も経ちましたよ?」
「じゃあ…あと5分…」
「わかりました」
ソフィの俺を起こす声が耳元から聞こえる。布団もいつもに比べて何だか暖かい……。
「んっ…!」
「ん…?」
少し体勢を変えると何かに当たった。俺のベッドにはそんな当たるようなものは何も無いはずだ。
「へっ!?」
「あ、おはようございます」
「おはよ…いや!じゃなくて!なんでソフィが俺のベッドの中にいるのさ!?」
ソフィの声が耳元で聞こえるのもベッドがいつもより暖かったのもソフィがベッドの中に入っていたからだ。
「いつから入ってたの!?」
「さあ?いつからでしょう」
ソフィはイタズラが成功したのが嬉しいのか小悪魔のようにニヤッと笑っている。
「もう試合は始まっているんですよ?」
「いや…まだ始まってないよ」
「そうですかね?」
「いや、そうだから」
本当に朝から疲れてしまった。これが本当に作戦なのだとしたら十分に効果があっただろう。
「朝ご飯はできていますから早く来てくださいね」
「わかったよ」
そして今度はいつものニコッとした可愛らしい笑みをしながらそう言ってリビングに向かっていった。
「ゼロ兄様!早く行きますよ!」
「今行く!」
そして朝食を食べて準備をすると2人仲良く闘技場に向かった。今の俺たちを見てもこれから試合をするなんて誰も思わないだろう。
「2人とも頑張って」
「ありがとう」
「ありがとうございます」
闘技場に着くとシャナが俺たちを待っていて応援の言葉をかけてくれた。
「でもソフィアに勝ってほしい」
「なんで?」
「それなら私はゼロスより弱いと限らなくなるから」
要するに俺がソフィに勝ってしまうと強さの順が俺、ソフィ、シャナとなってしまうが、俺がソフィに負けると強さの順がソフィが1番で2番は俺かシャナか分からないということになる。なので俺には負けてほしいようだ。普通はそういうのは思っても言わないのだがあえて躊躇なくはっきり言うのがシャナのいいところでもある。
「じゃあ…またね」
「またね」
そしてシャナは俺たち2人に手を振って観客席に向かった。
「じゃあ行くか」
「そうですね」
そして俺たちは闘技場の控え室に向かった。
「試合終了!勝者!ワッツ・コールキン!!」
「「「わぁ〜〜〜!!!!」」」
そしてソフィと3位決定戦を見ていたが俺と戦った男の方が勝ったようだ。ここまで勝ち進むと武術も魔法も両方ある程度はできているようで短時間で試合は終わらなかった。しかし最終的には接近戦になったので接近戦が得意な方が勝つ結果となった。
「最後に!今年の園内戦決勝を始めます!」
そのアナウンスが聞こえてくると俺とソフィは控え室から闘技場の中心へと向かっていった。
「ゼロ兄様」
「ん?」
「私は隠し事は無しで今持っている全てを出し尽くします。隠し事をするのは別に構いませんが、何も出来ずに無様に負けるなんてことはしないでくださいね?」
「わかったよ」
正直言うと今も雷魔法を使うかどうかを悩んでいた。しかしそんな悩みはソフィのおかげで解消された。俺が悩んでいるとわかってわざわざそう言ってきたとするならばソフィには本当に敵わないな。でも雷魔法を使わなければ使わなかったから負けたと言い訳はできるが、使って負けたのなら何も言い訳はできない。もしかしてソフィは俺を言い訳できない状態にして勝ちたいのか?ならここまで妹に言われて負ける言い訳を作るわけにはいかないな。となると状況によっては精霊魔法も…。よしっ!覚悟を決めよう。
「決勝戦!ゼロス・アドルフォ対ソフィア・アドルフォ始め!」
そして俺とソフィの兄妹対決の決勝戦が始まった。
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