第73話 本選3日目

「ソフィ…起きて」


「んっ…」


「着いたよ」


「んー…」


おんぶして撫でているとソフィが寝てしまった。そして家に着いてもまだ起きなかったので起こそうとしていた。


「今日は…このまま寝ます…」


「いや…風呂とか入った方が良くない?」


「ウォーターウォッシュ…これで問題ないですね?」


「いや…ご飯は?」


「明日食べます」


ソフィは1度言い出したら何を言っても聞かないタイプなのでもう今日はそのまま寝かせることにした。確かに魔法で体を綺麗にしたからいいのか?それにしても寝ぼけているのに魔法が使えるのはすごいな…。ちなみに俺は無理だぞ?そしておんぶのままソフィの部屋に連れて行ってベッドに寝かせた。



『2人ともちょっといい?』


『なんだ?』


『どうしたの?』


そして俺も自分の部屋に戻ってベッドに横になって精霊2人に少し考えていたことを話した。


『俺も今日のソフィやシャナみたいに考えて戦った方がいいかな?』


精霊2人はその気になったら俺の中にいながら俺の視覚を通して俺の見ている光景を見る事が出来る。今回はそれを利用して2人の試合を見てもらった。


『考えなくていいんじゃないか?』


『考えなくていいよ』


『どうして?』


『お前馬鹿だから』


『考えても意味ないよ』


『ひでぇ!』


そうだった…。この2人は適切なアドバイスはくれるが言葉に遠慮が無かったんだ…


『下手に馬鹿なお前が考えると、逆に頭の良い奴はお前の行動を読みやすくなる』


『なるほど…』


『だから馬鹿は無駄に作戦なんて考えなくていいんだよ』


『あ、ありがとう…』


『別にお前も戦ってる最中に無心だって訳じゃないんだろ?』


『まあ、そうだよ』


さすがに戦ってるのに無心になるほど俺は馬鹿ではない。


『なら戦ってる中で最善手を常に選択できるようにすれば相手が何を企てようが問題ない』


『ありがとう』


やはり口は悪いが言っていることは納得できる。確かに俺がソフィ相手に作戦を考えても上手く使われるだけな気がする。


『ちなみにユグは作戦なんか考えたことがあるか?』


『ないよ?』


『え!?無いの!?1度も?』


『1度も』


ジールがユグにした質問に驚いてもう一度聞き直してしまった。


『だってそういう作戦って弱い方がなんとか強い方に勝つために考えるものでしょ?ならユグ考える必要ないよね?』


『おっふ…』


『って訳だ。お前もこのレベルを目指せよ』


『無理だろうけど頑張ってみるよ…』


到底そんなレベルまでいけるとは思えないが一応そのレベルを目指してみよう。

このように2人と話して、風呂に入って、ご飯を食べて、明日に備えて寝ると次の日なんてあっという間に来た。




「それでは!3日目の第1試合を始めます!」


「「「わぁぁーーーーーーー!!!」」」


一昨日と昨日とは比べ物にならないくらいに盛り上がっている。やはり休みの日だからか?そして闘技場に入る前にちらっと聞こえたが、昨日あんな試合をしたソフィを見に来ている人がほとんどみたいだ。そして昨日の試合を決勝で見たかったなんて声も聞こえてきた。


「第1試合!ゼロス・アドルフォ対ワッツ・コールキン始め!」


「縮地」


「なっ!」


ソフィとシャナだけ注目されてこれからの試合は消化試合のように感じられるのはなんかムカつくので縮地を使って試合が始まった瞬間に相手の首に剣を突き付けた。


「ま、参った」


「し、試合終了!勝者!ゼロス・アドルフォ!」


昨日とは少し違う意味で観客が状況を理解出来ていない。試合が始まって5秒経たずに終わったのはこれが初めてだろう。それも今回は相手も剣を持っているので近接戦同士でだ。対戦相手には少し悪いがベスト4なので対校戦には出れるからいいだろう。そしてアドルフォと聞いて昨日のソフィと兄妹と気付いた人もちらほらいるようでそんなことを話しているのが聞こえてきた。どんだけ大声で話しているんだよ。



「次に3日目第2試合を始めます!」


「ソフィ頑張ってね」


「あれ?応援するのですか?」


「やっぱりソフィと戦いたい」


「そうですか。なら頑張りますね」


朝、俺が起きるとリビングでケロッと朝ご飯を食べていたソフィにそう話すとソフィは闘技場に上がっていった。


「第2試合!サロナ・ヴィーナス対ソフィア・アドルフォ始め!」


「ファイアスピア」

「ウィンドスピア」

「ストーンスピア」


「ウィンド…え!?あっ…」


威力を弱めたソフィの3つの魔法を受けて場外に出されてしまった。相手も魔法型のようだったがいきなりソフィの3つのスピアの魔法を見て頭が真っ白になったのだろう。自分の魔法の詠唱も途中で止まってしまっている。


「試合終了!勝者!ソフィア・アドルフォ!」


また観客は状況を理解できずに固まっている。きっと今日来た観客は面白くはなかっただろう。学生は無料だが、一般の人達は高くは無いがお金を払っている。だが明日はわざわざお金を払ってまで闘技場に試合を見に来てよかったって思わせるよ。


「では今日は帰りますか」


「そうだね」


そして闘技場から出てきたソフィと一緒に2人で早くも家に帰った。

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