第69話 本選前

「ねぇソフィ…」


「なんでしょうか?」


「園内戦の本選に出たら学園休めないよね?」


「そうですよ?」


「はぁ…」


対校戦のメンバーに選ばれたら学園を休めるのだからいいのだが上手い具合にソフィに騙された。本選を見る見ないは個人の自由である。なので本選の間だけ生徒は休みである。しかしほぼ全ての生徒は本選を見に来るだろう。


「対校戦のメンバーって具体的にどう決まるの?」


「ベスト4までは確定でその他6人は先生たちの会議で決まるそうですよ」


「ちなみに対校戦って何するの?」


「まずメンバー10人全員での4校同時サバイバルと代表者5人による総当たり戦ですね。詳しいルールは毎年違いますがこのような形式は毎年変わりませんよ」


「そうなんだ〜」


「少しは調べましょうね?」


「はーい」


「それでは対戦表を見に行きますか?」


「そうだね」


明日から本選が始まる。そのため今日の朝から学園前に対戦表が大きく張り出される。ちなみに試合は風、土、光、闇の日の四日間で王都にある闘技場で行われる。風の日に第1試合、土の日に第2試合、光の日に第3試合、闇の日に3位決定戦と決勝がある。風、土の日は平日のため一般の客は余りいないが光、闇の日は休日のため多くの人が来る。そして3位決定戦と決勝がある闇の日は特に大盛り上がりらしい。


「あっ!来たぞ!」

「みんなどけ!」


対戦表の前は人が大勢いたが本選出場者が現れるとすぐに場所を空けてくれる。学園新聞というものがあるので出場者は分かるらしい。なので早速ソフィと対戦表を見た。


「ソフィと当たるのは決勝だね」


「そうですね」


「違う。決勝は私」


「うおっ!シャナ!」


後ろから急にシャナが現れたのでびっくりした。そして対戦表を見ると勝ち進むと土の日にソフィとシャナが当たることになっている。ちなみにジャドソン兄様は出場していない。戦うよりも研究している方が自分には向いてると参加すらしていない。そしてクラウディアさんも出場していない。本人に理由を聞いてもはぐらかされてしまった。


「私がゼロ兄様と戦います」


「違う。私」


戦うのは明後日なのに今から火花を散らしている2人を宥めて今日は帰った。今日は本選出場者は学園を休んでも良いとなっている。たった一日だが今日は俺は別行動したいとソフィに言っていたので今日は1人だ。素直に聞かなかったので入学試験の何でも言う事を聞くというのを持ち出して言うことを聞かせた。どうしても試したいことがあった。



「ジール、準備はいいか?」


「もちろんだぜ!」


オークが多くいた森に一人でやってきた。しかし今はオークは大量発生していない。ゴブリンやオークは女を捕まえて仲間を増やすことが出来るので大量発生の原因がそれではないかと考えられた。しかし近頃行方不明になった女性はいなかったらしい。ただ、人が1人だけ急に消える謎現象はあったみたいだ。しかし、それの被害者は全て男性だったそうだ。そして大量にいたオーク達は急にぱったりと姿を消して普段通りの数しかいなくなった。そのため原因は未だにわかっていない。その森で少数になったオークを見つけ出して、俺の中からジールを出して魔力の大半をジールに渡した。


「ブモッ!」


「黒雷」


ドゴンッッ!!


ジールが上げた手を下ろしてそう言うと黒い雷が巨大な雷鳴と共にオークの頭上から降り注いだ。


「やっぱり威力が強すぎる…」


やっと探して見つけたオークが跡形もなく消えてしまった。


「これより弱い魔法ってないのか?」


「あるっちゃあるがこれとあんまり威力は変わらないぞ」


「ちなみにあと何発今のを打てる?」


「あと2回は打てるな」


そして何よりMP効率が良すぎる。俺ならあんなん打ったら一発で魔力切れだ。


「じゃあもう一回俺の中に戻って」


「ほーい」


そして次のことを試すためにジールを1度中に戻した。するとジールに預けていた魔力も戻ってきた。


「ふぅ…」


そして落ち着くために深呼吸をした。


「精霊ジールエンチャント」


『おまっ!』


「がっ!」


そして10秒持たずにすぐに解除した。


「はぁ……はぁ…」


『お前はバカか!』


『ピコーン!』

『精霊をその身に宿す者を獲得しました』


返してもらったMPが全て無くなった。でも予想通り称号が手に入った。


『無理しても12秒が限界かな?』


『お前な……』


「回復エンチャント」


全身が筋肉痛になったかのように痛いので回復魔法をエンチャントした。


『明日から大事な試合があるんじゃないのか?』


『だからその前に試したかったんだよ』


目立たないのなら…と思ったがジールをエンチャントするととても目立つだろう。なぜなら俺から雷が迸っていたしな〜。切り札にしたかったが難しいかな?


『そこまで負けたくないのか?』


『まぁーね…』


そして問題なく帰れるくらいに回復してから家に帰った。ソフィはものすごく心配していた。離れた時間としたら4時間もなかったくらいなのに心配し過ぎである。夜には今日の影響がほぼ無いくらいには完治したので明日からの本選には万全の状態で挑めそうだ。



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